【インタビュー】HAPPY、20歳の多面的1stアルバム完成「未完成感はずっと持っていたい」

ポスト

■自分が果たす役割みたいなことは、あまり考えたことがないですね
■でも、色で言うと“黄色”みたいな感じ(笑)

▲Syu(B&Syn)
──あえて、個人的に思い入れの深い曲を挙げるとするなら?

Chew:個人的には、「Lift This Weight」ですね。

──いわゆる、アナログエレクトロ的な曲ですね。

Chew:たしかにそうですね(笑)。曲自体がいいし、アレンジも上手くいったなと。いつ聴いてもグッとくる感じがあります。

Ric:俺は「Time Will Go On」ですね。表現したい世界観がわかりやすく出ている気がして。ちょっとファンタジックな雰囲気があると思うんですよ。そういう心地よさがありますね。

Syu:僕の中のイチオシは「Pity Xmas」。打ち込みなのに人間味があって優しいという、独特の雰囲気が。要するに、さっき言われたアナログエレクトロ感を上手く活かせてる。

Bob:僕は「Run Run Run」です。カントリーのテイストを活かした曲だから、最初はレコーディングでバンジョーとかマンドリンも入れようかという話になったんです。でも、あえてなしにすることで、HAPPYなりのカントリー感が出せたし、ライトな感覚で音楽を聴いている人にも楽しんでもらえる曲になったと思います。

Alec:強いて1曲だけ挙げるとしたら「Color」ですね。アルバムの中では一番静かな曲というか、唯一のバラードで。制作の最後に録った曲だからレコーディングで得たものを活かすことができて、音もいい感じに仕上がってるんですよ。あと、この曲は最初に虫の声が入っているじゃないですか。あれ、Ricがケータイで録った音です、それも僕らの地元で(笑)。

Syu:実家の前で録りました。

──あんなに盛大に鳴いているんですか?

Alec:ははは(笑)。そう、僕らの地元はたぶん想像以上にド田舎です(笑)。

Bob:虫の音を録ってきたというから聞いてみたんですけど、カエルやんと思いました(笑)。

──サンプリング音源を使うのではなく、自分達で録るというのは良いですね。続いてプレイに関する話にいきましょう。それぞれHAPPYのプレイヤーとして心がけていることは?

Bob:僕はドラムであってドラムじゃない、みたいなところを大事にしています。18才の頃にギターからドラムに転向したんですけど、ドラムを始めてからは対バンのドラマーとか、いろんなドラマーの映像を見るようになったんですよ。そうすると、プレイがメッチャ正確で上手い人とか本能的に上手い人がいて。そのうえで自分は枠に収まりたくないなと思ったんです。ドラマーらしくないドラマーになりたい……うまく言えないけど、自分の中でまだ探しているところです。

──Bobさんのドラムは人間味のあるリズムやロールするビート感が心地いいですし、それがHAPPYのカラーにフィットしています。

Bob:打ち込みみたいに味気ないドラムは好きじゃないので、そう言ってもらえると嬉しいです。

──『HELLO』収録曲でドラマーとして印象深い曲は?

Bob:「Cycle of Life」はサビでテンポチェンジするじゃないですか。最初はクリックに合わせて録ったけど、なんか違うなという話になって。結局、クリックは聴かずにドラムとベースとAlecのギターを“せーの!”で一発録りしました。それにこの曲は、空き缶を握り潰す音だったり、Chewのスライドバーを落とした音だったりをエコールームで録ったりして、そういう音を散りばめるという実験的なことをしているんですよ。

──遊び心を活かしたんですね。「Pity Xmas」の打ち込みと生の中間のようなドラムはどうやって形にしたのでしょう?

Bob:途中まではシンセで作ったリズムとシンベが鳴っていて、そこに生のドラムをアクセント的に叩いたりしつつ、最後に生のドラムになるという構成。それに、「Cycle of Life」のレコーディングでは、エコールームでキックやスネア、シンバルという風にシンバル類を全部を分けてバラバラに録ったんですけど、そうすると他の音と一切被らずにシンバルが綺麗に鳴るんですね。それをさらに押し進めて「Pity Xmas」はバラ録りしました。

▲Bob(Dr&Vo)
──ベースプレイヤーとして心がけていることは?

Syu:自分しか弾けないベースを弾きたいという気持ちがありますね。

Alec:Syuは、ルート弾きがメッチャ嫌いなんですよ(笑)。

──わかります。ルート弾きはほとんどなくて、リフやフレーズを弾いたり、ルート弾きでも休符を入れたりしていますね。

Syu:僕らの場合は、お互いに「こういうベースを弾いてみたらどう?」とか「こういうギターがええんちゃう?」みたいに、提案し合って曲をアレンジしていくことが多くて。もちろん基本は自分で考えるんですけど、そこにみんなのアイデアを重ねていくので、フレーズ作りで煮詰まることはないですね。個人的には、さっき話が出た「Cycle of Life」のグルーヴとか、「Time Will Go On」の低音のウネリが気に入っています。

Chew:ギターは、どうやろう? このバンドで自分が果たす役割みたいなことは、あまり考えたことがないですね。でも、色で言うと“黄色”みたいな感じです(笑)。

一同:ハハハ!! なんやそれ(笑)?

Alec:紫という感じもあるけどな。HAPPYのギターに関しては、基本的に僕がベーシック担当でリズムやコード感を出して、Chewがリードを弾く形だから、Chewの役割は色づけですよね。で、Chewはファズを使うことが多いから、そういうところに紫を感じるんです。

Chew:そうなんや(笑)。たしかにギター2本の役割分担がはっきりしているので、僕はコードを弾くことがほとんどなくて。「Run Run Run」みたいに、ずっとオブリを弾いている曲とかもありますね。僕も今回のアルバムのギターで一番印象が強いのは、「Cycle of Life」。イントロでボトルネックを弾いたりしているんですけど、勢いを出すために1回ずつ音を切りたくてチューナーのオン/オフ機能を活かしてメッチャ何回も踏みました(笑)。

──波形をいじったりせずに、生でそういうことをするのは良いですね。それにHAPPYの曲はギターソロが多いことも特徴になっています。

Chew:ギターソロは楽曲に溶け込んでいたり、楽曲の世界観を深めるようなものを弾くことを心がけています。だから、ソロにしてもリフにしてもギターを弾きながら考えることがない。頭の中で鳴ったものをギターに置き換えるようにしているんですけど、それがこのバンドには一番合うんじゃないかなと思っています。「Time Will Go On」の間奏とか結構好きですね。

──ケルト音楽っぽいフレーズですね。

Chew:そのメロディーが浮かんできて、すごくいい感じで曲にフィットした。間奏の最初のシンセとかも自分で弾いているんですけど、それも気に入っています。

Alec:「Lift This Weight」のギターソロは甲子園の砂のイメージだよな?

Chew:そう! ピッチャーが足を上げた瞬間の砂埃(笑)。

Alec:Chewはそういうつもりじゃなかったと思うけど、僕らは甲子園という感じやなと言っているんです(笑)。

Chew:ははは、知らなかった(笑)。そういうイメージは全くなかったけど、言ってることはわからんでもない。

Ric:砂っぽいで(笑)。キーボードは正直なところ、プレイ面でのこだわりはあまりないですね。でも、音にはこだわってて、最近のクラブミュージックみたいなハイファイな音はあまり好みじゃないんですよ。音作りという意味では、僕はライブのときもシンセの音をVOXのアンプから出してて。レコーディングでもアンプで鳴らすことが結構多いですね。それになんの楽器か分からないような音も出したい。『HELLO』にもそういう音がたくさん入っているんですけど、レコーディングのときは、その場で閃いた音色も含めて何テイクか録って、その中からベストなものを選びました。シンセとしては僕も「Cycle of Life」が一番印象に残ってるかな。

一同:みんな同じやな(笑)。

◆インタビュー(3)へ
◆インタビュー(1)へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報