【インタビュー】セプティックフレッシュ、激化したヘヴィネス“暗黒夢の究極のデス・メタル・サウンドトラック”
“暗黒夢の究極のデス・メタル・サウンドトラック”…セプティックフレッシュは発売されたばかりのニュー・アルバム『タイタン~巨神の咆哮』を、こう表現する。
◆セプティックフレッシュ画像
ギリシャで結成、重厚なシンフォニック・デス・メタルで世界を席巻してきた彼らだが、新作は最大級の衝撃をもたらすものだ。さらに激化したヘヴィネスと壮大なオーケストレーションで武装した新作を引っ提げて、ギタリスト、クリストス・アントニウが語る。
──2014年2月の初来日公演の感想を教えて下さい。
クリストス・アントニウ:どんな反応があるか想像もつかなかったけど、最高の盛り上がりだった。バンドの演奏も良かったし、インパクトを残すことが出来たんじゃないかな。まだ『タイタン~巨神の咆哮』はリリースされていなかったから、プレイしなかったんだ。ぜひもう一度日本に行って、このアルバムからの曲もステージで演奏したいね。
──『タイタン~巨神の咆哮』はあなた達にとって、どんなアルバムですか?
クリストス・アントニウ:『タイタン』はあらゆる意味で一歩前進したアルバムだ。ギターはよりヘヴィになり、曲調はよりダークで、オーケストレーションはさらに壮大になった。当初は不安もあったんだ。前作『ザ・グレイト・マス』は俺たちにとって最高レベルの作品であって、それ以上のアルバムを作ることは難しいんじゃないか?ってね。だけど『タイタン』は単なる『ザ・グレイト・マス』パート2ではなく、新しい可能性へのチャレンジだった。サックスや子供の合唱隊をフィーチュアしたのは今回が初めてだし、「コンフェッションズ・オブ・ア・シリアル・キラー」ではテルミンを使っている。それぞれが大きな効果を出していて、バンドを新しい次元へと導いているよ。
──アルバムの音作りで心がけたことはありますか?
クリストス・アントニウ:セプティックフレッシュの強みはダークでヘヴィなサウンドにあると思う。『タイタン』ではそれをさらに徹底したかったんだ。トータル性を重視したから、メロディアスな曲調のアイディアがあっても、意図的に外すようにした。前作の「ピラミッド・ゴッド」はとても気に入っているけど、アルバムの流れにおいては、ちょっと浮き上がっていた気がしたんだ。『コミュニオン』には「ナルシサス」と「ペルセポリス」みたいな、真逆な曲が収録されていた。どちらの曲も好きだけど、アルバムの統一感が欠けてしまった気がする。『タイタン』では「バーン」の後半や「コンフェッションズ・オブ・ア・シリアル・キラー」にメロディアスなパートがあるけど、暗くてメランコリックなメロディで、決して明るくはない。このアルバムでは映画音楽からインスピレーションを受けることが多かった。「バーン」のメロディは『レクイエム・フォー・ア・ドリーム』から触発されたものだし、「タイタン」は『ダークナイト・ライジング』のハンス・ジマーの音楽からヒントを得たものなんだ。
──セプティックフレッシュはエクストリーム・メタルとオーケストラを融合させたサウンドで知られていますが、新作ではどんなアプローチをとりましたか?
クリストス・アントニウ:プラハ・フィルハーモニック・オーケストラと共演するのは、セプティックフレッシュとしてはこれが3回目なんだ。俺の別バンドのケイオスター、その他のプロジェクトでも何度か共演しているし、とても良い関係を築いてきた。初めて彼らと共演したのは『コミュニオン』の時だったけど、今では彼ら抜きではセプティックフレッシュの音楽が成り立たないほどだよ。アルバムごとに彼らとのコミュニケーションはより深いものになっているし、あえてアプローチを変えずとも、素晴らしいサウンドを得ることができた。うまく行っているときには、チームはいじるべきではないんだ。セプティックフレッシュにとって、オーケストラは不可欠な存在だ。これからも彼らとの共演は続くだろう。
──アルバムのエンジニアとミックスを手がけたローガン・メイダーとの作業はどのようなものでしたか?
クリストス・アントニウ:ローガンと一緒に作業をしたのは、これが初めてだった。セプティックフレッシュの作品をミックスするのは、通常のメタル・バンドよりも複雑で困難な作業だ。ローガンはマシーン・ヘッドやカヴァレラ・コンスピラシー、GOJITAなどのアルバムを手がけた実績があるけど、俺たちはまた異なったタイプのバンドだから、不安でもあった。しかもツアーがブッキングされていたから、ミックスの現場に立ち会うことが出来なかったんだ。もちろんデータのやり取りはしていたけどね。彼も俺たちみたいなバンドと一緒にやるのは初めてだったから、ナーヴァスになったみたいだった。でも、それが功を奏したんだ。彼は細心の注意を払って、3ヶ月かけてミックス作業をしてくれた。それで最高のサウンドを得ることが出来たんだ。
──ライヴではオーケストラのパートはサンプリングを使っていましたが、いずれ本物のオーケストラとステージ共演することはあるでしょうか?
クリストス・アントニウ:ああ、それが俺たちの夢なんだ。実際、オーケストラとライブで共演する話は、何度か浮かんでは消えてきたんだ。なかなか実現しない最大の理由は、もちろん金銭的なものだよ。大人数のオーケストラを雇うには、膨大な金額が必要となる。俺たちみたいなメタル・バンドではそれは難しいし、今のギリシャの経済状態だと、さらに可能性は低くなってしまう。セプティックフレッシュの哲学として、中途半端なことは出来ないし、数人のストリング・セクションを雇うみたいな妥協は出来ないんだ。フランスかドイツのフェスティバルで実現したら最高なんだけど、今すぐではなく、将来的な話だね。ただ、いずれ夢は叶うと信じているよ。
取材・文 山崎 智之
メンバー
セス・シロ・アントン(ヴォーカル/ベース)
クリストス・アントニウ(ギター)
ソティリス・アヌンナキ(クリーン・ヴォーカル/ギター)
フォティス・ベナルド(ドラムス)
『タイタン~巨神の咆哮』セプティックフレッシュ
\2,300+税
1.ウォー・イン・ヘヴン
2.バーン
3.オーダー・オブ・ドラクル
4.プロトタイプ
5.ドグマ
6.プロメテウス
7.タイタン
8.コンフェッションズ・オブ・ア・シリアル・キラー
9.グラウンド・ゼロ
10.ザ・ファースト・イモータル
11.ザ・ファースト・イモータル[オーケストラ・ヴァージョン]*
12.ザ・ヴァンパイア・フロム・ネザレス[ライヴ:2011年10月29日 フランス/トゥールーズ]*
13.ファイヴ-ポインテッド・スター [ライヴ:2011年10月29日 フランス/トゥールーズ]*
*日本盤限定ボーナストラック
◆セプティックフレッシュ『タイタン~巨神の咆哮』オフィシャルサイト