【ライヴレポート】<LOUD PARK 13>総まとめ第2日目、トラブルも力でねじ伏せた王者イングヴェイ、強烈なパワーとスピードのTRIVIUM他
10月19日と20日にさいたまスーパーアリーナで開催されたハードロックの祭典<LOUD PARK 13>が、大盛況のうちに幕を閉じた。
◆<LOUD PARK 13>~拡大画像~
広いアリーナに、「ULTIMATE」と「BIG ROCK」の2ステージを並べ、交互にパフォーマンスが行なわれるという形式で開催された今年の<LOUD PARK>。両ステージではオープニングアクトから終演まで熱演が繰り広げられ、ハードロックファン、メタルファンを熱く燃え上がらせた。そんな<LOUD PARK 13>の2日目、10月20日のパフォーマンスから、印象に残ったステージを紹介する。
この日は、冒頭から観客を驚かせるパフォーマンスが展開された。オープニングアクトを務めたマーティ・フリードマン率いるMETAL CLONE X、その途中で演歌の大御所、八代亜紀がサプライズゲストとして登場したのだ。マーティお得意のメタルアレンジ演歌に乗せ、情感たっぷりに「雨の慕情」を歌う八代亜紀には、朝早くから集まったメタルファンから歓声が上がった。
SIAM SHADEのギタリストDAITAがアメリカで結成したBREAKING ARROWSは、大陸的な大きなノリ、骨太なサウンドで観客を魅了した。DAITAの超絶テクニックを期待したファンも多かったようだが、それはやや控えめ。その代わり、へヴィなリフが印象的な楽曲のよさ、そしてバンドとしての安定感が感じられるパフォーマンスだった。この<LOUD PARK>で、また新たなファンを獲得したに違いない。
史上最年少での<LOUD PARK>出演となったのがBABY METAL。タイトで迫力ある演奏に乗って元気いっぱいのダンスと歌を披露し、会場は大いに盛り上がった。アリーナには多くの観客が詰めかけて熱い声援を送り、大きなサークルピットも生まれていた。
<LOUD PARK>は3回目、そのほか<サマソニ>や単独公演で何度も来日しているTRIVIUMはさすがに人気が高く、アリーナは大混雑となった。重く鋭いビートの「Throes of Perdition」が始まるとコリィ・ビューリューがデス声を響かせ、マシュー・キイチ・ヒーフィーもパワフルなヴォーカルの合間にデス声で応戦。キイチは、何本も設置されたマイクで位置を変えながら歌い、コリィは頭を高速回転させる。パワーとスピードで押しまくるパフォーマンスに、客席のボルテージも上がり続けた。「将軍」、「切り捨て御免」と日本語タイトルのナンバーが続けてプレイされると、アリーナではモッシュやダイブ、そして超巨大なサークルピットも生まれた。日本生まれのキイチらしく“ゲンキデスカ”、“アリガトゴザイマス”、“スゴイ!”と日本語も連発。そのたびに大歓声が沸いた。
パワーとスピードを魅力とするメタルバンドが多数を占める中、異彩を放っていたのがSPIRITUAL BEGGARSだ。ラフな衣装に長髪、バンダナというヒッピー風のいでたちもそうだが、切り裂くようなノイジーなオルガンの音からスタートした演奏もまたオールドファッション。適度に歪んだマイケル・アモットのギターは、テクニックに走らずリフもソロもわかりやすいし、少し歪み気味のベースは低域が豊かであたたかい。ドラムも必要以上に鋭く加工されておらず、タイコの鳴りが感じられる。その上に乗るのが、エモーショナルに歌いながらしゃがれたハイトーンを織り交ぜるアポロ・パパサナシオのヴォーカルだ。ブルージーでサイケでファンキー、60年代~70年代のハードロック黎明期を思わせるサウンドは、オヤジ世代はもちろん、若い世代のハートもつかんだようで、スタート直後は空きが目立っていたアリーナも中盤以降は満員となり、かなりの盛り上がりを見せていた。
STRATOVARIUSは、「Under Flaming Skies」「Speed of Light」と冒頭から高速ナンバーを立て続けにプレイし、超満員状態のアリーナはもちろん、スタンド席も巻き込んで会場全体を一気に沸騰させた。ティモ・コティペルトのハイトーンはよく伸びていてコンディションがよさそうだし、マティアス・クピアイネンのギターもキレキレで、一音一音が明瞭な高速フレーズを連発する。マティアスとベースのラウリ・ポラーが並んで弾く姿にも華があってカッコいい。セットリストの半分近くは新作『NEMESIS』からのナンバーだったが、中盤では「Eagleheart」がプレイされて大歓声が沸いたし、最後には8分近い熱演となった「Hunting High and Low」で大合唱が起きた。さすがというべき、貫録を感じさせるパフォーマンスだった。
ロニー・ジェイムス・ディオのトリビュートバンドとして、ヴィヴィアン・キャンベルなどのDIO初期メンバーが結成したのがLAST IN LINEだ。「Stand Up and Shout」に始まり、「King of Rock and Roll」や「Evil Eyes」「Holy Diver」など、初期DIOの名曲ばかりを並べたセットリストに客席は大興奮。来日できなかったジミー・ベインの代わりに、この日はレイモンド・ホーラーがベースを務めたが、バンドサウンドはガッチリとまとまってパワフル。恐ろしく重くパワフルなヴィニー・アピスのドラム、それにビブラートやハーモニクスを駆使したテクニカルなヴィヴィアンのギターは、まさにあの頃のDIOのままだ。闘病中というのが信じられないほど元気で、力強くプレイしたヴィヴィアンの姿はとても印象的だった。大合唱が起こった「We Rock」を最後にメンバーはステージを後にしたが、アンコールを促す拍手、そしてヴィヴィアンへの声援が長い間続いていた。
2日間に渡る<LOUD PARK 13>を締めくくったのがイングヴェイ・マルムスティーンだ。急遽大トリになったイングヴェイだが、ヘッドライナーにふさわしい圧巻のパフォーマンスを見せた。
この日のイングヴェイのステージは、トラブル続きだった。満員の観衆が王者の登場を待ち続ける中、開演予定時刻を過ぎてもセッティングは続いていた。ギターアンプからのノイズが止まらなかったからだ。しかしそれが完全に解消されないうちに、イングヴェイは姿を現した。そして燃えるようなオレンジ色の照明の中、あのワクワクするようなイントロから、名曲「Rising Force」が始まった。
ステージの半分以上を占めるほどのマーシャルアンプの壁の前で、イングヴェイは序盤からとにかく弾きまくった。ノイズは相変わらず出続けていて、イングヴェイも合間にペダルボードを操作するなど気にしているようだが、演奏のテンションは恐ろしく高い。高速フレーズの切れ味は鋭いし、ビブラートはヒステリックに空気を切り裂く。ギターをブンブン回し、頭上に掲げ、激しく動き回りながらもほとんど途切れることなく弾きまくる。速いギタリストなら他にもいるが、音の表情が豊かでエモーショナルに訴えかけてくるところは、さすがイングヴェイだ。
いっこうに鳴りやまないノイズに加え、途中ではキーボードの音やヴォーカルマイクの音が出なくなるなどトラブルが続出。イングヴェイがブチ切れて帰ってしまうのではないか。観客の多くがそう心配しながら見つめていたが、インストナンバーを多く混ぜながらステージが続いていく。中盤にはアルカトラス時代のヒットナンバー「ヒロシマ・モナムール」で客席をさらに沸かせると、「Into Valhalla」や「Baroque And Roll」「Trilogy Suite OP:5」などをショートバージョンで次から次へとたたみかけるようにプレイ。そして本編最後の「Heaven Tonight」では、ギターを高々と投げ上げて退場。ここまで、スローなブルースでもアコースティックギターでも、とにかく弾きまくったイングヴェイだった。
そしてアンコールの「I'll See The Light, Tonight」では、ギター破壊のパフォーマンス。何度もギターを放り投げ、ネックを持ってステージに叩きつけ、壊れたギターを客席に投げ入れ、この日のステージが終了した。トラブルも力でねじ伏せるような、王者らしい圧巻のパフォーマンスで<LOUD PARK 13>を見事に締めくくった。
取材・文●田澤仁
2013年10月20日(日)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
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