【インタビュー】Alice Nine「「shooting star」のような、聴き触りはいいけど中身はフワフワじゃねぇぞっていうのを今は堂々と出せる」
Alice Nine、3ヵ月連続シングルリリース。この3作品はどれもデビューから9年間、紆余曲折してきた中で辿り着いた“今のAlice Nine”が存分に注がれたものだった。第1弾の「Daybreak」と第2弾の「SHADOWPLAY」、そして怒涛の連続リリースの締めくくりとなる今作「shooting star」ではとどめを刺すかのように、新鮮さを見事に見せてくれた。そんな彼らが「“Alice Nineがやるロックバラード”に落ち着くのはいちばん避けたかった」と語る、5月29日に発売された「shooting star」について、インタビューをお届けする。また、BARKSではメジャーデビュー9周年を迎えたAlice Nineを9つのキーワードで紐解く、3カ月連続企画を実施。ラストとなる今月は「CRISIS」「HEAVEN&HELL」「WORLD」の3つのテーマをもとにメンバーに聞いたので、こちらもご覧いただきたい。
■「大事なのはどうすれば自分たちがワクワクしながら
■新鮮な気持ちで作れるかというところですね」(ヒロト)
──「shooting star」驚きました。R&B系のオシャレなバラードで。
将(Vo):「Daybreak」のひとつ前のシングルに「虹の雪」(2011年12月21日発売)というバラードシングルがありまして。今回、またバンドとしてバラードシングルを出すというところで、「虹の雪」はロックバンドが出すバラードの王道だったと思うので、今度はどういうふうに料理して前とは違うバラードを出すかというのが最大の難関でした。
沙我(B):だから、今回はロックバンドの曲にしなきゃという意識はなくて。「虹の雪」がツインギターが引っぱるロックバラードだったからこそ、それとは違うもので自分たち的にも“新鮮さ”を意識して作りました。
──それでこんなにロックバンドがやらなさそうなアレンジの方向に振り切っちゃった、と。
ヒロト(G):いや、でもこれが“ロックじゃない”とはまったく思ってないです。作り手側からするとサウンドだけ聴けばUKロックに分類できるだろうし。“別にギターが歪んでる=ロック”ではない。今回はあえてロックを排除しようとかは制作段階では考えてませんでした。大事なのはどうすれば自分たちがワクワクしながら新鮮な気持ちで作れるかというところですね。
将:最初はこれももっとバラードらしいバラードだったんです。でもそれを“そんなの全然ぶっ壊してカッコいいことやればいいじゃん”ってアレンジにしていったんです。
沙我:僕が最初作ったデモはもっとJ-POP寄りだったんですよ。それを「Daybreak」を一緒にやった平出さんというプロデューサーとどんどん崩していって。普通プロデューサーが手を入れると聴きやすくなるじゃないですか? それがいろんなアイデア入れて組み立てていったらどんどん前衛的になっていって。
──その工程は不安じゃなかったですか?
沙我:不安を感じて守りに入ると結局いつも通りになるだけですからね。
ヒロト:それがいちばん怖かった。“いわゆるAlice Nineがやるロックバラード”に落ち着くのがいちばん僕らが避けたかったところだから。
沙我 精神的にロックじゃないでしょ? そこで守りに入ってしまったら。そういう意味ではロックなんです、この曲は。
将:マインド的には3枚連続シングルのなかでいちばんロックだと俺は思う。
ヒロト:制作過程はそうだね。
将:僕が作った「SHADOWPLAY」はファンの方が喜ぶものを作ろうというコンセプトだからマインド的にはいちばんポップス。あんなヘヴィな音でも。「shooting star」は入り口はすごく入りやすくてもマインドはすごいロック。理屈じゃなくて“これカッコよくない?”ってどんどん制作が進んでいくのが自分たちもやっていて気持ちよかったですね。
虎(G):理屈を並べられるよりもプロデューサーに“これいいでしょ?”って言われて単純に俺らも同じくいいと思えたらそれでいいんですよ。結構あるんですよ。ここは“このコードじゃないといけない”みたいなのが。でもそんなの別にカッコよければどうでもいいしって。そういう感じて進めてくれるプロデューサーなんですよ。
──平出さんがそういうタイプだからか、平出さんと組んで作った「Daybreak」、「shooting star」には、これまでのAlice Nineにはなかったシャレた感じがすごく出ていて。
虎:すみません、やっと出せました(笑)。
■「俺らのファンが“AliceNine聴いてる”と言っても恥ずかしくない
■バンドになりたいって話をしたような記憶があります」(将)
──ううっ……(大苦笑)。でもね、以前からAlice Nineはこんなにルックスいいんだから、もっとそれに釣り合うようなオシャレな曲やればいいのにと個人的には思っていたんですよね。
沙我:それ、後輩にも言われました。曲がいなたいって(苦笑)。
将:僕ら最初にアイドル的な感じのイメージが先行しすぎちゃったので、様式美というか古典的な方にいっちゃったんですよね。
沙我:でも俺ら、いなたいことだけやるだけのバンドじゃないんだけど…ってところで、単純に今の俺らの気分がやっと現代に近づいたんじゃないですかね。
ヒロト:その間は、それぞれ好きな音楽をどマジメに掘り下げ過ぎてシブいところにまでいってしまってたところもあったし。あと、さっき将くんが言ってたアイドル視されてたことに対してのアンチテーゼもあった。
──アイドル視されていようが、ライブでロックバンドであることを証明すればいいとは考えなかったんですか?
全員:そんなに器用じゃない……。
将:「RAINBOW」(2008年8月6日発売)というシングルを出したときに、スタジオで“このままだとちょっと恥ずかしい”って話をしてたんですよ。メンバーだけで。友達に“今、何聴いてるの?”っていわれたときにアイドルを聴いてると言うのが恥ずかしくなる時期ってあるじゃないですか? それもあって、俺らのファンが「AliceNine聴いてる」と言っても恥ずかしくない、「イケてる音楽聴いてるじゃん」って言われるようなバンドになりたいって話をしたような記憶があります。
Nao(Dr):……俺らマジメだな(微笑)。ピュアだな。
虎:ウチらはロックバンドだからいい音楽を作っていこうって、それだけしか考えてなかったからね。別に自分らのルックスを利用してとか、イヤらしいことは誰も考えてなかった。戦略なんか考えなくても自分らが好きな音楽をやっていれば売れるだろうって。それが自分たちの自信でもあったし。
将:そういう音楽へのマジメさ、不器用さが俺らっぽいんじゃないのかな。だから、そういうところを経て、今はすごくフラットになってるからこそ「shooting star」のような、聴き触りはいいけど中身はフワフワじゃねぇぞっていうのを今は堂々と出せる。
Nao:ロールキャベツ男子だな。外は草食、でも食べると肉食っていう。
沙我:Alice Nineはロールキャベツ男子かぁ。
Nao:新しいので“アスパラベーコン男子”っていうのもあるんだけどね。これは肉食に見せて草食系という男子のこと。
ヒロト:この3枚シングル連続リリースインタビューって、なんでか毎回食べ物のオチが出てくるよね(笑)。
──Alice Nineって見た目の印象と中身のギャップがありますよね。
将:僕らがバンド始めたころ、自分はヴィジュアル系の内々にこもったあの雰囲気が好きじゃなかったので、Alice Nineはできるだけ外に開けたヴィジュアルイメージを大事にしてやってきたんですね。ヴィジュアル系を外に広めるのが自分らの使命だとも思ってるので。でも、見え方はそうでもバンドの内側を見るとやたら音楽にマジメでストイックだという。
──それがAlice Nineをロールキャベツ男子にしちゃったんだ!
将:すみません(ぺこり)
虎:まさかの“すみません”終わり(一同笑)。
沙我:その内面の部分は俺らから染み出る人間性の部分だから。
将:じゃあこれからヒロトさんはずっと眉間にしわを寄せてもらって、オラオラな感じでいきますかね(笑)。
──いやいやそういう問題じゃないから(笑)。
沙我:俺ら、人間性がにじみ出る30後半~40代でドカーンとブレイクするバンドなのかなって気がしてきたぞ(笑)。
ヒロト:でもこの「shooting star」を作っていないと、こうはなってないから。いまバンドはとてもいい状況です。
虎:9年やっているとわかるんだけど“いい1枚”っていうのは俺らだけじゃなくて、周りの環境も含めすべてが揃わないとできないものだから、今の環境に感謝だね。って、俺、今いいこと言ったね(笑)。
将:最後のひと言はいらなかったね(笑)。
◆インタビュー続きへ
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