【ライブレポート】ジャーニー、単にヒットパレードに終わることのない濃密なライヴ
2013年3月11日、ジャーニーにとって4年ぶりとなるジャパン・ツアーが東京・日本武道館で幕を開けた。結成から丸40年を迎えるこのバンドは、1979年以来、幾度もこの国を訪れてきたが、日本武道館での公演が実現したのは実に30年ぶりのこと。一般的に彼らの黄金期と見做されている『エスケイプ』(1981年)から『フロンティアーズ』(1983年)にかけての時期以来ということになる。そして彼らは、当時と同じように超満員の観衆を前に熱演を繰り広げた。
◆ジャーニー画像
実際、30年前と変わらずそこにいるのは、ニール・ショーン(G)とロス・ヴァロリー(B)、ジョナサン・ケイン(key、G)のみではある。が、往年の看板シンガーであるスティーヴ・ペリー脱退後、スティーヴ・オウジェリーやジェフ・スコット・ソートといった後任リレーを引き継ぐように、現フロントマンのアーネル・ピネダ(Vo)が迎えられた時点から、すでに5年以上を経ているし、スティーヴ・スミスの後任としてディーン・カストロノヴォ(Dr)が加入した当時からは15年もの年月が経過している。もちろん偉大な前任者たちの功績を忘れるわけにはいかないが、間違いなくこの5人こそが現在のジャーニーなのだ。
当日のライヴそのものの具体的内容については、この場ではあまり詳しく書かずにおきたい。この原稿が皆さんの目に届く頃には3月12日の大阪公演もすでに終了しているわけだが、これからの各公演に先入観のない状態で臨みたいという読者たちには、この原稿の下方に掲載されている当日のセットリストにもご注意いただきたいところだ。が、そこで予備知識を得たとしても、これから接するライヴの興奮が削がれるようなことはないだろう。とにかく誰もが聴きたいはずの楽曲を漏らさず網羅しながら、しかも単純なヒットパレードに終わることのない、非常に濃密なライヴだった。それが少しずつ形を変えながら、各地で重ねられていくことになるはずだ。
すべてのファンが何よりも注目しているのは、現フロントマンであるアーネル・ピネダの存在についてだろう。「スティーヴ・ペリー以外にジャーニーの歌い手はあり得ない」という意見はいまだにファンの間でも根強いはずだし、完全にアジア人のルックスで背も低いアーネルの姿をステージ上に見つけた瞬間、ちょっとした違和感をおぼえる人たちもいるかもしれない。が、それは、彼が最初の第一声を発した瞬間に完全に解消されるはずだと言っておきたい。しかも彼は、ペリーに通ずる伸びやかな歌声を備えているだけではなく、躍動感満点のパフォーマンスや陽気なキャラクターも含めて、彼ならではのオリジナリティをもしっかりと持ち合わせている。
もうひとつ“歌声”に絡めて触れておきたいのは、メンバー全員がマイクに向かうバンドの強力さについてだ。美しいハーモニーがもたらす空間の広がりの素晴らしさについては言うまでもないし、曲によってはジョナサンやディーンがリード・ヴォーカルをとる場面もこの夜には観られた。ことに激しいビートを繰り出しながらパワフルかつ安定した歌唱を披露するディーンの姿には目を見張るべきものがあった。
そして最後に付け加えておきたいのは、サポート・アクトについて。今回のツアーでは、ジョナサン・ケインの娘にあたるマディソン・ケイン、ニール・ショーンの息子であるマイルズ・ショーンがオープニングを務めている。巨人たちの遺伝子を受け継ぐ新世代の可能性にも注目すべきところだろう。蛇足ながら付け加えておくと、2人(厳密にはサポート・ギタリストを加えた3人編成)はこの夜の1曲目にチープ・トリックの「甘い罠」を披露。武道館公演ということで、同バンドの出世作でもある『at 武道館』にちなんだ選曲をしたのだろう。欧米人の多くが武道館という名称からチープ・トリックを連想するのは昔も今も変わらないところがあるが、彼らと同じくらいジャーニーにとっても武道館は所縁深い場所であり、この夜の公演成功はメンバーたち自身にとっても感慨深いものだったに違いない。もちろん初めてそのステージに立つことになったアーネルとディーンにとっても。
さて、このツアーはこれからも続き、3月17日に金沢で千秋楽を迎えることになる。そしてその前日にあたる3月16日、ついに公開を迎えることになるのが、『ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン』と題された映画だ。この映画の内容についてはすでにBARKSでも紹介されているが、かつて一家離散や路上生活すらも強いられてきたアーネルが、夢を掴み、自身にとってのフェイバリット・バンドの一員として世界を駆け回るようになるまでの過程を追ったドキュメンタリーである。が、単なる記録映画ではないし、音楽の世界におけるサバイバルゲームの厳しさ、さらには家族や人間同士の繋がりの大切さ、“自分を信じて、諦めないこと”の重要さを伝えてくれる感動作である。僕自身としては、アメリカにおける“クラシック・ロックのあり方”というものが、この作品を通じてより明確に理解できたところもあった。こちらも是非、併せてお楽しみいただきたい。
そして最後にひとつだけ予告を。筆者は武道館公演の前日にあたる3月10日、この映画のプロモーションのために設けられたわずかな取材枠のひとつをいただき、アーネルとディーンとのインタビューに成功した。こちらも近日中にお届けする予定なので、楽しみにしていて欲しい。
文:増田勇一
撮影:Yuki Kuroyanagi
<JOURNEY@日本武道館 2013.03.11>
1.SEPARATE WAYS
2.ANY WAY YOU WANT IT
3.ASK THE LONELY
4.WHO'S CRYIN NOW
5.ONLY THE YOUNG
6.STONE IN LOVE
7.KEEP ON RUNNIN'
8.EDGE OF THE BLADE
9.FAITHFULLY
10.LIGHTS
11.STAY AWHILE
12.OPEN ARMS
13.JUST THE SAME WAY
14.ESCAPE
15.DEAD OR ALIVE
16.WHEEL IN THE SKY
17.DON'T STOP BELIEVIN'
-encore-
18.BE GOOD TO YOURSELF
<JOURNEY今後の公演日程>
3月14日(木)広島文化学園HBGホール
3月15日(金)名古屋市公会堂
3月17日(日)金沢歌劇座
問:ウドー音楽事務所 03-3402-5999
http://udo.jp/Artists/Journey/index.html
映画『ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン』緊急公開決定
3月16日(土)新宿ピカデリー他、全国順次ロードショー
http://journey-movie.jp/
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