【イベントレポート】ピータ・バラカン×五十嵐正、『シュガーマン 奇跡に愛された男』を語る

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InterFMで毎週日曜日15:00~放送中のBARAKAN BEATが贈る『シュガーマン 奇跡に愛された男』特別試写会が角川映画試写室で開催され、上映後にピーター・バラカンと音楽ジャーナリスト五十嵐正によるトークショーが行われた。

◆】ピータ・バラカン×五十嵐正画像

既に作品は鑑賞済ではあったものの観客と一緒に映画を見ていたふたりは、「久しぶりに見て、また感動してしまった。本当に面白い作品」とバラカンが言うと、五十嵐も「また感動した」と同調、本作品への賛辞からトークショーはスタートとなった。

1970年代に2枚のアルバムを全米で発売するものの、全く売れず大失敗に終わったロドリゲスの音楽だが、全米では全く売れなかった理由について、ふたりの見解がそれぞれ語られた

バラカン:プロモーションをしなかったからかな。

五十嵐:音楽的な面であの時代(1970年代)に合っていたと思います?

バラカン:あまりあってない。全く合ってなくはないのだけれども、映画を見て何回も何回もその曲を聴くじゃない。そうすると馴染んでくるけれど、多分あのへんの曲を当時1970年ぐらいにラジオで聞いたとしても、もっとインパクトの強い音楽が沢山あったから売れなかったのはそんなに不思議じゃない。

五十嵐:サセックスが2枚で契約を切ったのはビル・ウィザースが同じように、ロドリゲスはメキシコ系ですけど、ビル・ウィザースは黒人系でギターをもってフォーキーな感じで売れたから、同じようにアコースティックギターをもったシンガーソングライターはふたりもいらないという判断もあったんじゃないかと。

バラカン:…かもしれないね。

ロドリゲスを巡る物語以外に本作で注目されるべき点として、これまで知らなかった南アフリカのアパルトヘイト事情がある。

五十嵐:これまで南アフリカのアパルトヘイトというと、抑圧された黒人の話ばっかりだったのですけれども、実は抑圧する側だと思っていた白人の人達も検閲を受け、統制下で言いたいこともいえない。

バラカン:テレビすら無かったっていうのは少しショッキングでしたね。

五十嵐:それを教えてくれる映画でもありますよね。

バラカン:それは凄く参考になった。実際に放送禁止になって(ロドリゲスの)レコードがスクラッチされたのは、ドラッグ?政治的な発言?どっちだったのだろうね。

五十嵐:両方ではないですか?ドラックへの言及があると口実にしやすいじゃないですか。

バラカン:日本でも忌野清志郎の原発の歌が東芝EMIから発売されなかったし、ラジオでは未だにほとんどかかってないだろうね。

五十嵐:日本でもそうですよ。規制するときに本当はメッセージが気に入らないんだけど、この言葉がふさわしくないという理由で禁止することはよくありますよね。

最後に監督マリク・ベンジュルールに取材をした五十嵐から本作品の制作秘話について語られた。

五十嵐:低予算の映画だったので、監督さんは本当にお金が無かった。結構な部分をiphoneのアプリで撮っているんですよ。iPhoneの1ドル99セントのアプリとかで。また4年の制作期間のうち、最後の2年間は服も買えなかったそうです。ある日、鏡をみて服がほつれているのを見てもう辞めようと思ったそうです。8割から9割は作品ができていたけれど、普通にお金稼ぐ商売やってとりあえず一回辞めようって思ったとか。その直後にプロデューサーに出逢って、そのプロデューサーがとにかくサンダンスに出そう、完成させるお金は出してやるからってことでサンダンスに行って大評判になってアカデミー賞まで…という経緯なんですね。

バラカン:万々歳ですね!

『シュガーマン奇跡に愛された男』
3月16日より角川シネマ有楽町ほかにてロードショー
配給:角川映画
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