ベルリンの音楽が打ち放つ、「現ロックが失いつつある、何かしら美しいもの」

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2012年5月に4枚目となる新作アルバム『Analogies』をMorr Musicからリリースし、11月に初の来日ツアーを行うマーシャ・クレラ(Masha Qrella)が新バンドを結成!そのバンド名はBandaranaikといい、同じくベルリン出身のバンドKomeitの女性ヴォーカル兼キーボーディスト、ユリア・クリーマン(Julia Kliemann)との女性デュオだ。10月3~5日にかけてお披露目ライブをドイツ国内で行い、5日のベルリン.HBCにおけるライブを見てきた。

◆マーシャ・クレラ画像

この新ユニット結成の話を聞いたとき、私はKomeitの「サタデーナイト」というナンバーを真っ先に思い出した。これはブライアン・フェリーの「ドント・ストップ・ザ・ダンス」を、マーシャ・クレラが秀逸なカバー曲に仕立てあげた2006年発表のシングルのB面に収録されている。非常に音数の少ないサウンド空間に、はかなげで美しいマーシャの声が浮かぶ、とても心地いい音楽になっているので、擦り切れるまで何回聴いても飽きない可愛らしい名録音だ。この曲の作曲者が今回の共演中間のユリアである。このため新バンド、Bandaranaikには否が応にも期待せざるをえなかった。

小雨降る肌寒い秋のベルリンの夜、Bandaranaikのステージは23時ごろはじまった。ベルリンでは週末の夜は鉄道が24時間営業なため、このような時間からライブが始まるのは普通のことのようだ。リズム・マシンによる打ち込みを音背景に、ユリア・クリーマンがキーボードとヴォーカル、マーシャ・クレラがギター、あるいはベース・ギター、ヴォーカルを担当するというシンプルな編成。ユリアの低音ヴォイスとマーシャの高音ヴォイスのコントラストが実に美しく、すべての楽器の音色、フレーズも極めてシンプルで活き活きとしていて力強い。マーシャ・クレラが参加したコントリーヴァの音楽や、初期のマーシャ・クレラのソロ作品が好きな人ならば、Bandaranaikの音楽を絶対気に入ると思う。そこでは、音空間の“隙間”が非常に大切にされている。このベルリン女性デュオが紡ぎ上げるシンプルな音の“つづれおり”のなかで、とても心地良い時間を過ごした。

まさに今のベルリンの音楽には、もう英米・日本のロックが失いつつある、何かしら美しいもの、大切なものが残っている。マーシャ・クレラ周辺のベルリンの音楽、Morr Musicの音楽などを聴くとき、私はいつもそれを感じる。これらの音楽には、過去アート・ロック、グラム・ロック、プログレッシヴ・ロック、オルタナティブ・ロックなどが持っていた、「何か新しい音楽性を打ち出そう」という姿勢を反映するかのような創造性がある。

11月のマーシャ・クレラの来日コンサートで、そのきわどいばかりで自然体な創造性を体験しよう。

文:小塚昌隆

<マーシャ・クレラ来日コンサート>
●11月17日(土)
@東京VACANT
open 16:00 / start 16:30
adv 3,000yen / door 3,500yen
チケット予約:booking@n0idea.com (VACANT) / event@flau.jp (flau)
●11月18日(日)
@OSAKA @雲州堂
open 12:30 / start 13:00 / close 15:00
adv 2,500yen / door 2,800yen
●11月20日(火)
@KYOTO @UrBANGUILD
open 18:30 / start 19:30
adv 2,500yen / door 3,000yen
前売りチケット:ART ROCK NO.1 (075-212-0113)
●11月22日(木)
@KANAZAWA @21世紀美術館・シアター21
open 18:30 / start 19:00
ticket 2,000yen
チケット予約:windowofacloudyday@gmail.com (080-4259-5823)
●11月23日(金)
@NAGOYA @聖マルコ教会
open / start 15:00
adv 2,500yen / door 3,000yen
チケット予約:clubsolanin@gmail.com
●11月24日(土)
@TOKYO @O-nest
open 18:00 / start 18:30
adv 3,500yen / door 4,000yen
前売りチケット:PIA (P-CODE: 178-255) / LAWSON (L-CODE: 77921)
[問]TETO RECORDS 全公演チケット予約:info at tetorecords dot com


◆<Masha Qrella Japan Tour 2012.>オフィシャルサイト
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