【ライブレポート】Own your colours!:マーシャ・クレラ&Felisie(長谷川真弓)in ベルリン
▲長谷川真弓 |
▲マーシャ・クレラ |
◆長谷川真弓、マーシャ・クレラ画像
6月11日(火)、現在のベルリンのカルチャーシーンを象徴する地区、プレンツラウアー・ベルクのイベントホール、アオスランド(Ausland)でツアーは幕開け。会場にはドイツ人に混じって、多くの日本人のファンの顔も見られた。
ソロ・ユニット"Felisie"として登場した長谷川真弓は、ギター、キーボード、サンプラー等を駆使して、オリジナル楽曲を3曲披露。シンプルな音空間にもかかわらず、彼女がmiaouで表現している力強いビートと、美しいメロディーが見事に表れている。miaouの音楽を聴いている方であれば理解できると思うが、彼女の音楽には、彼女が感じた美しいものを、肩肘張らず、背伸びせずに、“彼女の色で”シンプルに表現しようとする真摯な姿勢があって、それがとてもキュートだ。
2013年3月から約3ヶ月ぶりのステージとなるマーシャ・クレラ・バンドは、レパートリー編成を大幅に変えて演奏を行う。2012年にリリースされたアルバム『Analogies』からのブルージーでジャジーなナンバー、「Take Your Time」ではキーボード奏者、セバスチャン・ネーエン(Sebastian Nehen)がサックス演奏を披露。そして、2012年11月のマーシャ・クレラの日本ツアーで実現した、マーシャ・クレラ・バンド+長谷川真弓(B)の編成による力強い「Bluebottle」の再演!また、2013年1月、フランクフルト(アムマイン)で大好評を博した舞台『ファウスト』(参照:https://www.barks.jp/news/?id=1000086477)でメフィスト役を演じた名優、アレクサンダー・シーア(Alexander Scheer)が舞台に飛び入りしてパフォーマンスを行うなどのサプライズもある、素晴らしいステージであった。
個人的な体験談で恐縮であるが、筆者が2012年12月、ベルリンに移住する飛行機のなかでウォークマンで聴いていた曲は、miaouの2011年のアルバム『the day will come before long』に収録されたナンバー「own your colours」だった。飛行機が成田空港をまさに離陸しようとする瞬間、「own your colours」の、力強いビートと浜崎龍樹のシャープなエレクトリック・ギターが加わって盛り上がりを見せる部分と、飛行機の窓から見る遠ざかる日本の大地が絶妙にマッチして、図らずも大粒の涙が流れた。「own your colours」が、自分が選んで、これから始まる自分の新しい運命に対して、「それでいいんだよ、44歳で海外で新しい人生を始めても、いいんだよ。他人からヘンな奴と思われても、君は君の“色”を持ってて、全然いいんだよ」と静かに力強く後押ししてくれているかのような、深い感動を覚え、涙が止まらなかった。歌詞も無いのに、強烈なメッセージがそのインスト曲から伝わった。歌詞がないからこそ、よりダイレクトに。
“儚げで、メランコリックな音楽”と形容されることが多いかもしれない、miaou、長谷川真弓、マーシャ・クレラ、コントリーヴァ(Contriva)の音楽には、このように、何か大事な決断を後押ししてくれる、独特の説得力と力強さがあって、そこがとても素敵だと思う。自分の色を持とう。
写真:Nozomi Matsumoto, Berlin
文:Masataka Koduka, Berlin
◆Masha Qrellaオフィシャルサイト
◆miaouオフィシャルサイト
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