差別・ドラッグなど現代の問題を描くドキュメンタリー『MEINE FREIHEIT, DEINE FREIHEIT』
2月14日(木)ベルリン・ポツダマープラッツで催されている映画祭<BERLINALE 2013>にて、一年前から見たかった映画、『Meine Freiheit, Deine Freiheit』を見た。タイトルを日本語直訳すると、『私の自由、あなたの自由』といったところか。監督はベルリンのドキュメンタリー映像作家、ディアナ・ネッケ(Diana Nacke)。1月10日に第63回ドイツ映画賞のドキュメンタリー作品で受賞している話題作。この日は、その受賞記念の意味も含めた上映会で、ネッケ監督のほか、主演女優のゼレマ(Selema Wad'deres)や、音楽を担当したマーシャ・クレラ(Masha Qrella)など映画に関わった主要なメンバーの舞台挨拶も行われた。
タイトルの「自由」という言葉から抽象的あるいは曖昧模糊とした希望を描く映画を連想するかもしれないが(というか僕自身そのように想像していたのだが)、この映画で描かれる「自由」はもっとダイレクトで具体的な意味を持っている。「自由」とは、ベルリン刑務所に拘留されている2人の外国人女性に仮の“釈放期間”として与えられた「自由」だ。ネッケはカメラとともに、その「自由」な時間のなかで彼女たちが何を考え、何を行い、何と闘い、何を望んでいるか、彼女たちの深層心理を気持ちよくえぐり出すような丹念なインタビューを重ねて描いていく。
2人の若い外国人女性はそれぞれ複雑な個人史を持っている。トルコ人の女性キュープラ(Kubra)は様々な暴力事件を起こし4年以上、刑務所で暮らし。ドイツにあるほとんどの刑務所に拘留経験あり脱獄経験もある。刑務所は同じ匂いばかりだから、自分だけの匂いを持ちたいと語る彼女。ゼレマはエチオピアの内戦で両親を失ってドイツに来た。必然的にカメラはベルリンおよび現代の大きな問題を映し出す。ひとつは(国際化社会のなかでの)外国人差別、人種差別問題。もうひとつはドラッグ問題。社会的に抑圧された立場で生きざるをえない者達に、かりそめの脱出口を与えるドラッグ。それへの依存から、売春や窃盗などますます込み入ったネガティブな迷宮に入り込んでもがいている彼女たち。
「差別からの自由」「ドラッグからの自由」などなど、様々な「自由」について観客は考えさせられる。そして、彼女たちが彼女たちにとって本当に心地よいであろう「自由」を見つけた(のかもしれない)、とても印象的なシーンで、マーシャ・クレラの2012年発表アルバム『Analogies』に収録されている「Take Me Out」および「Crooked Dreams」が流れて感動を誘う。マーシャ・クレラの「Take Me Out」はそもそも、この映画のために書かれた曲である。
決して感傷的にならないクリアな目線でネッケのカメラは2人の女性を描く。彼女たちの長いインタビューが続くのではあるが、「その女性が今、そこにいる」空間の色彩や雰囲気をネッケのカメラは捉えることに成功しているため、見ていて飽きることがない。イタリア・ネオリアリズモの巨匠、ロベルト・ロッセリーニの『無防備都市』や『ドイツ零年』が持つ感触に近い否定でもなく肯定でもない、冷徹でありかつ暖かい理知的な視線を、このネッケ作品は持っている。
DVDが1月に発売されているので、是非見てほしい。英語字幕もあるのでドイツ語が聞き取れなくても大丈夫です!
文:Masataka Koduka
タイトルの「自由」という言葉から抽象的あるいは曖昧模糊とした希望を描く映画を連想するかもしれないが(というか僕自身そのように想像していたのだが)、この映画で描かれる「自由」はもっとダイレクトで具体的な意味を持っている。「自由」とは、ベルリン刑務所に拘留されている2人の外国人女性に仮の“釈放期間”として与えられた「自由」だ。ネッケはカメラとともに、その「自由」な時間のなかで彼女たちが何を考え、何を行い、何と闘い、何を望んでいるか、彼女たちの深層心理を気持ちよくえぐり出すような丹念なインタビューを重ねて描いていく。
2人の若い外国人女性はそれぞれ複雑な個人史を持っている。トルコ人の女性キュープラ(Kubra)は様々な暴力事件を起こし4年以上、刑務所で暮らし。ドイツにあるほとんどの刑務所に拘留経験あり脱獄経験もある。刑務所は同じ匂いばかりだから、自分だけの匂いを持ちたいと語る彼女。ゼレマはエチオピアの内戦で両親を失ってドイツに来た。必然的にカメラはベルリンおよび現代の大きな問題を映し出す。ひとつは(国際化社会のなかでの)外国人差別、人種差別問題。もうひとつはドラッグ問題。社会的に抑圧された立場で生きざるをえない者達に、かりそめの脱出口を与えるドラッグ。それへの依存から、売春や窃盗などますます込み入ったネガティブな迷宮に入り込んでもがいている彼女たち。
「差別からの自由」「ドラッグからの自由」などなど、様々な「自由」について観客は考えさせられる。そして、彼女たちが彼女たちにとって本当に心地よいであろう「自由」を見つけた(のかもしれない)、とても印象的なシーンで、マーシャ・クレラの2012年発表アルバム『Analogies』に収録されている「Take Me Out」および「Crooked Dreams」が流れて感動を誘う。マーシャ・クレラの「Take Me Out」はそもそも、この映画のために書かれた曲である。
決して感傷的にならないクリアな目線でネッケのカメラは2人の女性を描く。彼女たちの長いインタビューが続くのではあるが、「その女性が今、そこにいる」空間の色彩や雰囲気をネッケのカメラは捉えることに成功しているため、見ていて飽きることがない。イタリア・ネオリアリズモの巨匠、ロベルト・ロッセリーニの『無防備都市』や『ドイツ零年』が持つ感触に近い否定でもなく肯定でもない、冷徹でありかつ暖かい理知的な視線を、このネッケ作品は持っている。
DVDが1月に発売されているので、是非見てほしい。英語字幕もあるのでドイツ語が聞き取れなくても大丈夫です!
文:Masataka Koduka
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