【ライブレポート】マーシャ・クレラとmiaou、cokiyuがくれた素晴らしい一夜
数多くのライブを見てきたほうだと思うが、本当に素晴らしい夜だった。11月24日、東京渋谷O-nestにおけるベルリンのアーティスト、マーシャ・クレラの来日ツアー最終日。
◆マーシャ・クレラ画像
楽器や声が奏でる一音一音を心底大切にし、自分ができることを着実に真摯に表現しようとするアーティストたち(マーシャ・クレラ、miaou、cokiyu)の、国境を超えたミュージシャンシップと友情、それが、冬の厳しい寒さがひしひしと忍び寄る東京渋谷の夜に、心温まるステージを創りだした。筆者は普段いいライブで沢山お酒を飲んでしまい、それでも翌日はいくぶんか嫌な気分だったりするのだが、そんな気分が全くないただただ気持ちのよい寝覚めもくれる本当に素晴らしい一夜だった。
筆者は正直なところ、miaouについてリリース作品を聴くかぎりで、繊細で儚いガラス細工のような音楽を緻密に創っているバンド、という印象を受けていた。だが、ステージ上のmiaouは全く異なる印象を与えた。まず(あまりに単純な物言いだが)、音がデカイのがいい!そして比較的大音量なのに、無駄な音が全くない。高い高い天頂に向けて、キラキラ輝く鋼のように打ち上げられる長谷川真弓の骨太なエレクトリック・ベースを筆頭として、全メンバーの一音一音が、七色の光を放つプッチンプッチンの朝の雫のような潔さであふれている。
万華鏡のようにクルクルと様々な色彩と光を放つmiaouの楽曲では、確実なリズム・セクションがグルーヴィーかつ堅牢に築きあげる土台の上に、鋭く貫くようなリード・ギターと、ヴィブラフォンの煌めきが舞っている。そしていつでも耳の奥に残りそうな、歌心とメロディーがある。これが兎にも角にも気持ちがいい。その贅肉をすべてこそぎ落とされたような実験性とノイズ性は、そこからいくぶんか神秘的ともいえる領域に着地する。例えるのが失礼かもしれないが、全盛期のピンク・フロイドやいいオルタナティブ・ロックバンドの美しさ、ニューヨークの実験的なジャズ、そしてマーシャ・クレラがContrivaにおいて培ってきた音楽に近しい恍惚感が、miaouの音楽には確実にある。ロック・ファンなら絶対にmiaouのライブを体験したほうがいいと思った。
海外、国内の先進的なアーティストのアルバムをリリースしている新進レーベルflauからリリースされているcokiyuの音楽は、フワフワとしたゆるやかな時間をくれる幸せで繊細な私的エレクトロニカ音楽。どうでもいい話かもしれないが、筆者はエンジニアとしての仕事もしており、エンジニア仲間にエレクトロニカ音楽やmorr musicレーベル系のファンが多い。というか、その友人たちからmiaouやcokiyuの名前などを教わってきた“にわか”ファンである。コーディング、プログラミング、エンジニアリングでは、要件定義やコミュニケーションにおいて繊細であることが大事だと思う。他人の気持ちを汲み上げて、他人が欲しがっているものをちゃんと作るために、ギターの弦を奏でるかのようにプログラミングの一行を書く。エンジニア業界とエレクトロニカっていうのはなんとなく近い位置にあるんじゃないかと思っている。そんな繊細さを優しく包んでくれるような音楽に観客は酔った。
さて、マーシャ・クレラ初来日ツアーの最終ステージがスタート! マーシャ・クレラ・バンドは実に実験精神に富んでいる、と彼女のライブを見るたびに思う。レバートリーで同じ演奏を絶対にしない、というかある意味、ものすごい旺盛な遊び心で笑いながら原曲のイメージを壊しにかかってきて、その中でいきなり新しい音空間のキラメキを探しだして創りだして観客に提示する。真の意味でロッカーだ。
2012年リリースの『Analogies』の楽曲を中心に、ファースト・アルバムからの永遠のラブソング「14 Reasons」、キーボーディスト、セバスチャン・ネーエンのハーモニカで幾分アメリカナイズされた「I want you to Know」、そして殺気立つような「I don't Like Her」。セカンドアルバムからの、優しさに満ちたベルリン讃歌「Welcome to the City」、演奏することがレアな「Destination Vertical」が古くからのファンを喜ばせる。Contrivaの2000年作品「Next Time」がロバート・クレッチマーの卓越したドラミングで新たな輝きに満ちてポップにワイルドに蘇る!そして、今回のツアーを主催したmiaouの長谷川真弓とマーシャ・クレラの友情は、「Blue Bottle」に長谷川がベースで参加することで、その場に居合わせた者すべてを幸せな気持ちにさせてくれた。
私たちの音楽に対する意志や美的感覚は、海峡を超えてでも必ず志を同じくする者とつながって、何かしら美しいグルーヴを創りだしていくのだ。その者が日本にいようと、ベルリンにいようと、ミュージシャンであろうと、ファンであろうと、エンジニア業界にいようと、どこにいようとしてもだ。そんな勇気をくれた心底気持ちのいいライブだった。miaou, cokiyu, マーシャ・クレラの今後の活動にぜひとも注目されたい!
Photo:Ryo Mitamura
文:Masataka Koduka
◆miaou オフィシャルサイト
◆cokiyuオフィシャルサイト
◆Masha Qrellaオフィシャルサイト
◆マーシャ・クレラ画像
筆者は正直なところ、miaouについてリリース作品を聴くかぎりで、繊細で儚いガラス細工のような音楽を緻密に創っているバンド、という印象を受けていた。だが、ステージ上のmiaouは全く異なる印象を与えた。まず(あまりに単純な物言いだが)、音がデカイのがいい!そして比較的大音量なのに、無駄な音が全くない。高い高い天頂に向けて、キラキラ輝く鋼のように打ち上げられる長谷川真弓の骨太なエレクトリック・ベースを筆頭として、全メンバーの一音一音が、七色の光を放つプッチンプッチンの朝の雫のような潔さであふれている。
万華鏡のようにクルクルと様々な色彩と光を放つmiaouの楽曲では、確実なリズム・セクションがグルーヴィーかつ堅牢に築きあげる土台の上に、鋭く貫くようなリード・ギターと、ヴィブラフォンの煌めきが舞っている。そしていつでも耳の奥に残りそうな、歌心とメロディーがある。これが兎にも角にも気持ちがいい。その贅肉をすべてこそぎ落とされたような実験性とノイズ性は、そこからいくぶんか神秘的ともいえる領域に着地する。例えるのが失礼かもしれないが、全盛期のピンク・フロイドやいいオルタナティブ・ロックバンドの美しさ、ニューヨークの実験的なジャズ、そしてマーシャ・クレラがContrivaにおいて培ってきた音楽に近しい恍惚感が、miaouの音楽には確実にある。ロック・ファンなら絶対にmiaouのライブを体験したほうがいいと思った。
海外、国内の先進的なアーティストのアルバムをリリースしている新進レーベルflauからリリースされているcokiyuの音楽は、フワフワとしたゆるやかな時間をくれる幸せで繊細な私的エレクトロニカ音楽。どうでもいい話かもしれないが、筆者はエンジニアとしての仕事もしており、エンジニア仲間にエレクトロニカ音楽やmorr musicレーベル系のファンが多い。というか、その友人たちからmiaouやcokiyuの名前などを教わってきた“にわか”ファンである。コーディング、プログラミング、エンジニアリングでは、要件定義やコミュニケーションにおいて繊細であることが大事だと思う。他人の気持ちを汲み上げて、他人が欲しがっているものをちゃんと作るために、ギターの弦を奏でるかのようにプログラミングの一行を書く。エンジニア業界とエレクトロニカっていうのはなんとなく近い位置にあるんじゃないかと思っている。そんな繊細さを優しく包んでくれるような音楽に観客は酔った。
さて、マーシャ・クレラ初来日ツアーの最終ステージがスタート! マーシャ・クレラ・バンドは実に実験精神に富んでいる、と彼女のライブを見るたびに思う。レバートリーで同じ演奏を絶対にしない、というかある意味、ものすごい旺盛な遊び心で笑いながら原曲のイメージを壊しにかかってきて、その中でいきなり新しい音空間のキラメキを探しだして創りだして観客に提示する。真の意味でロッカーだ。
2012年リリースの『Analogies』の楽曲を中心に、ファースト・アルバムからの永遠のラブソング「14 Reasons」、キーボーディスト、セバスチャン・ネーエンのハーモニカで幾分アメリカナイズされた「I want you to Know」、そして殺気立つような「I don't Like Her」。セカンドアルバムからの、優しさに満ちたベルリン讃歌「Welcome to the City」、演奏することがレアな「Destination Vertical」が古くからのファンを喜ばせる。Contrivaの2000年作品「Next Time」がロバート・クレッチマーの卓越したドラミングで新たな輝きに満ちてポップにワイルドに蘇る!そして、今回のツアーを主催したmiaouの長谷川真弓とマーシャ・クレラの友情は、「Blue Bottle」に長谷川がベースで参加することで、その場に居合わせた者すべてを幸せな気持ちにさせてくれた。
私たちの音楽に対する意志や美的感覚は、海峡を超えてでも必ず志を同じくする者とつながって、何かしら美しいグルーヴを創りだしていくのだ。その者が日本にいようと、ベルリンにいようと、ミュージシャンであろうと、ファンであろうと、エンジニア業界にいようと、どこにいようとしてもだ。そんな勇気をくれた心底気持ちのいいライブだった。miaou, cokiyu, マーシャ・クレラの今後の活動にぜひとも注目されたい!
Photo:Ryo Mitamura
文:Masataka Koduka
◆miaou オフィシャルサイト
◆cokiyuオフィシャルサイト
◆Masha Qrellaオフィシャルサイト
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