【連載】Vinyl Forest Vol.23 ── Seahawks「Violet Skies: Invisible Sunrise remixes Part 2」

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今回ご紹介したい作品は、Seahawksの「Violet Skies: Invisible Sunrise remixes Part 2」。2010年のデビュー作「Tender Abyss」以降、一貫したBalearic/Chill Out作品を立て続けにリリースし、その地位を確固たるものにしたJon TyeとPete Fowlerのユニット・Seahawksによる、2011年にリリースしたアルバム『Invisible Sunrise』からのシングルカットremix第2弾だ。

独特のサイケデリックな音使いと煙たい質感が特徴的な彼らの作品、まずA1に収録されている「Love On A Mountain Top」のremixを担当したのは、日本が誇るレフトフィールド・ディスコユニットCos/Mes。原曲の雰囲気は残しつつも彼らの持ち味であるダークサイドなトビ音をふんだんに散りばめ、さらにダンサブルな仕上がりにしているところがなんとも心憎い演出だ。

B1の「Fire In The Sky」のremixを担当したのは、北欧ノルウェー出身Rune Lindbæk & Oyvind Blikstad。元々、これ以上いじる必要もないくらいの完成度で、深く沈みこむムーディーな原曲。これをどのように料理しているのか、はやる気持ちを抑えながら視聴してみると、若干トランシーなパッドシンセとライトタッチなドラムプログラミングを施し、自然と身体がフワフワ浮いていくような感覚を楽しむことが出来る作品へと昇華させている。Balearic/Chill OutにTrance要素は相性抜群。眺めの良いビーチサイド、カフェで積極的に使いたくなる作品だ。

そしてB2「Hot Space」のremixは、Lovefingers主宰のレーベルESPInstitute第一弾シングルを飾ったJonny Nashが担当。原曲の優しく包み込むようなシーケンスに、ほんの少々の味付け程度のremixだが、若干のサイケ要素を足し、Dubbyな要素を少し抑えて夢心地な雰囲気はしっかり残す、といった具合。聴いていくうちに、ゆっくりと目の前が真っ白に、そして気が付けば快適な眠りへと誘うトラックで、日ごろの疲れを癒す極上のChill Out。ぜひベッドルームで楽しんで頂きたい。

このようにシチュエーション別に使い分けられるシングルというのも、コンセプトとしては凄く面白い。クラブ、カフェ、ビーチサイド、ベッドルームとフル活用できるって、もはやクラブ/ダンスミュージックという枠組みすら馬鹿馬鹿しく思えてくる。

末永くお付き合いしたくなる音楽というのは、目まぐるしいスピードで消費されていく音楽とは別の時間軸でいつまでも「いいものはいい」であって欲しいと筆者は強く願う。

text by Dee-S

◆【連載】Vinyl Forest チャンネル
◆drumatrixx mag

──【連載】「Vinyl Forest」とは

筆者の私達は音楽好きなのは言うまでもないのだが、それでも年齢を重ねるにつれ不感症になりつつある。原因はハッキリしていて、テクノロジーの進化によって低価格、高品質な制作環境が容易に手に入る昨今にもかかわらず、楽曲のクオリティが退化の一途を辿っているからだ。低コストで在庫を抱えずに済むからレーベルは多くのリリースができる反面、現場ではとても使えないトラックも非常に多い。

そこで、データ音楽販売が主流となった昨今のダンスミュージック界隈の懐事情を鑑みて、

「私たちは、レーベル側が在庫リスクを背負い、インディながらも頑なにVinylをリリースするという行為そのものが、レーベルが充分な楽曲クオリティを保証しているのではないのか?」

という持論(フィルタリング)で巡り会えた珠玉の刺激物と、今では考えられない予算を投じてリリースされた名盤をご紹介していく。

text by Dee-S&Blue Eclair
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