【連載】Vinyl Forest Vol.17 ── Simone Fedi 「Bitter Devotion」
今回ご紹介する作品は、Belgiumの老舗Nu Disco系レーベル・Eskimoから久しぶりのシングルリリースとなるSimone Fedi 「Bitter Devotion」をチョイス。
昨今のNu Discoの黎明期からシーンを牽引してきた、Chickin Lipsのメンバー・Steve Koteyが運営するレーベル・Lip Service。ここから3枚のシングルリリースを果たしたトリオ・ユニット・Out Of Cityの中心メンバーとして活躍しているイタリア人プロデューサーSimon Fediが、ついにソロプロジェクトを始動させた。その作品は、すでに多くの海外著名DJがプレイサポートをしている話題盤となっている。
A1に収録されている「Original」は、キュートな歌い回しが耳にこびりつく女性ヴォーカルとイナタいシンセ音色、そして控えめなカッティングギターと壮大なストリングスで構成された楽曲が実に心地よく、Eskimoレーベルお得意のスペイシーな世界観とメランコリックな旋律でリスナーを多幸感に導いてくれる快作。このA1だけでも購買意欲がそそられてしまった。
そしてremixer陣も強力なラインナップだ。Rub n'TagのThomas Bulldogのソロプロジェクト・Welcome Strangerと、UK老舗レーベルSomaの看板アーティスト・Ewan Pearsonが抜擢。A2の「Welcome Stranger」は、原曲をさらにダビーな処理を施し、Progressive House好きなリスナーも思わず反応してしまう展開。いい意味で見事に裏切ってくれた。最近のNu Disco系アーティストは名前を見ただけで、どのようなremixをしてくるかの判断がまったくできない面白さがあるので、アーティスト名でパスするのは絶対禁物だ。
さらにB面の「Ewan Pearson」は、原曲に忠実で、ほんのりビートの輪郭をハッキリさせた程度の仕上がり。これはA1と好みがわかれるとは思う。Cosmic/Balearic寄りなら「Original」、Deep House寄りならコチラをチョイス。Vocal remixとInstrumentalが収録されているのが嬉しい。気分で使いわけてみても良いだろう。
text by Dee-S
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──【連載】「Vinyl Forest」とは
筆者の私達は音楽好きなのは言うまでもないのだが、それでも年齢を重ねるにつれ不感症になりつつある。原因はハッキリしていて、テクノロジーの進化によって低価格、高品質な制作環境が容易に手に入る昨今にもかかわらず、楽曲のクオリティが退化の一途を辿っているからだ。低コストで在庫を抱えずに済むからレーベルは多くのリリースができる反面、現場ではとても使えないトラックも非常に多い。
そこで、データ音楽販売が主流となった昨今のダンスミュージック界隈の懐事情を鑑みて、
「私たちは、レーベル側が在庫リスクを背負い、インディながらも頑なにVinylをリリースするという行為そのものが、レーベルが充分な楽曲クオリティを保証しているのではないのか?」
という持論(フィルタリング)で巡り会えた珠玉の刺激物と、今では考えられない予算を投じてリリースされた名盤をご紹介していく。
text by Dee-S&Blue Eclair
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