【連載】Vinyl Forest Vol.21 ── Smith & Mudd「Sauna Love」
昨今のBalearic/Kraut Rock再考のきっかけを作り上げたと言っても過言ではないであろう、Paul Murphy主宰のClaremont 56から、またしても気になるタイトルがアナウンスされた。
このClaremont 56レーベルについては本連載『Vinyl Forest』をご覧になられている読者ならすでにご存知の方も多いかと思うカルト・レーベルではあるのだが、CANの元メンバーであるHolger Czukayを再度シーンへ送り出した仕掛け人でもあり、さらには無名でも高クオリティのバンドを発掘し、時代の波に逆らわない楽曲を提供する素晴らしいレーベルのひとつである。
今回、ご紹介するこちらは、久しぶりの本人名義でのリリース。タイトル曲「Sauna Love」は優しく身体全体を包み込んでくれる柔らかい80年代Fusionを現代解釈したような仕上がりで、カフェや休日のドライブに最適なBGMだ。すでに出尽くした感もあるこの手の楽曲にあえて挑戦し、新しさと時代に左右されない品質をリスナーに提供するというのはたやすいことではないはず。それをキッチリとこなしてしまう彼らの才能には、嫉妬すら覚えてしまう。
そしてB面に収録されている「The Surveyor」は、2010年8月に日本盤限定Promo盤でたった250枚しかプレスされなかったもの。この作品がファン待望の正規収録される。ワイルドで骨太なギターが特徴的なDisco Soundで、筆者の私もいまだにDJ Bagに入れている楽曲。以前の限定盤を買い逃して悔しい思いをしたファンは今回こそ逃してはならない。
Claremont 56の作品は楽曲のクオリティは言うまでもないが、アナログプレスの音質が素晴らしい。予算が限られているであろうインディ・レーベルではあるが、確かな品質にこだわり抜いたCralemont 56は今後も目が離せない重要なレーベルであることは間違いないだろう。
text by Dee-S
【Party info】
本連載"Vinyl Forest"のDee-sがプロデュース、Blue Eclairが出演
<中央線的快楽音楽 探訪 原宿的仮想空間>
5月3日(木)@原宿Fiction
開場:22時
出演:o-sam-u,Dj JOSE,Tommy,blue_eclair他
◆<中央線的快楽音楽 探訪 原宿的仮想空間>
◆【連載】Vinyl Forest チャンネル
◆drumatrixx mag
──【連載】「Vinyl Forest」とは
筆者の私達は音楽好きなのは言うまでもないのだが、それでも年齢を重ねるにつれ不感症になりつつある。原因はハッキリしていて、テクノロジーの進化によって低価格、高品質な制作環境が容易に手に入る昨今にもかかわらず、楽曲のクオリティが退化の一途を辿っているからだ。低コストで在庫を抱えずに済むからレーベルは多くのリリースができる反面、現場ではとても使えないトラックも非常に多い。
そこで、データ音楽販売が主流となった昨今のダンスミュージック界隈の懐事情を鑑みて、
「私たちは、レーベル側が在庫リスクを背負い、インディながらも頑なにVinylをリリースするという行為そのものが、レーベルが充分な楽曲クオリティを保証しているのではないのか?」
という持論(フィルタリング)で巡り会えた珠玉の刺激物と、今では考えられない予算を投じてリリースされた名盤をご紹介していく。
text by Dee-S&Blue Eclair
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