【連載】Vinyl Forest Vol.12 ── Soft Rocks「Disco Powerplay : Album Highlights (Plus One More)」

ポスト

今回ご紹介するのは、UKはブライトン出身のアーティスト、Soft RocksによるRe-Edit作品だ。この盤は、彼らの記念すべき1stアルバム『Disco Powerplay』からのシングルカットという事で、私、Dee-Sもプレオーダーの段階で視聴1曲あたり10秒聴かずして購入を決めた。それほどの素晴らしさだ。

Disco / Re-Edit作品を定期的に購入している方なら彼らを知っているとは思うが、初耳の音楽ファンの皆様にご紹介しておくと、Soft Rocksは世界でも指折りのVinylコレクターでもあり、ディーラーでもある。言わば筋金入りの“Digger”というわけで、彼らが手がけるRe-Edit作品は、どれもマニアックなセレクトではあるが、彼らなりの一本筋が通ったセンスが垣間見れる。

まずA1に収録されている「Danz Boy Danz」は、実に様々な要素が凝縮された入魂の1曲と言えるだろう。“オルタネイティブ・ロック・ダンス”という表記方法が正しいのか疑問だが、ストレートなBlues / Folk / Rockに民族系パーカッションを取り入れる事で絶妙なスパイスが効いている作品。一体どの辺からネタを拝借しているのか、筆者の私はまったくわからなかったくらいのカルトっぷりだ。Balearic / Cosmic Discoフリークは、迷わずゲットしておくべくだろう。

続いてA2の「Free Ride RRR」は、スパニッシュギターとパーカッションが織り成す情熱的な作品で、クラブのメインフロアではおそらく使う機会はないと思う。しかし私は断言する、「視覚と味覚を助長させるオトナの音楽」だと。雰囲気の良いラウンジで美味い酒、料理を嗜みながら会話を楽しみたい。

一方、B面の「Ah zhaa!!」は前出の2曲とはまったく異なるテイストで、ダサい一歩手前のギリギリなラインで攻めている。この楽曲をクラブでプレイするにはかなりの技量と勇気が必要になりそうだが、私はむしろ積極的に攻めていきたい(笑)。かなりインチキ臭いヴォーカル・サンプルにピュンピュン飛び交う80's Feelingなシンセ、デンデケベースにズレズレなパーカッション、ドラムの乱れ打ち…文面で見ると何だかひとつも良いとこなしだが、この無茶苦茶とも言えるアクの強い音の集合体が、時として奇跡のグルーヴを生み出すから音楽は面白い。

筆者もDiggerという終わりなき道を選択してわかった事だが、Diggerはどんなジャンルでも独自のフィルタリングがあり、そのフィルタリングの結果が言わば個性となる。ゆえに、本物のDiggerと称されるDJやアーティストは、あらゆるソースを試行錯誤しながら自分のテイストに取り入れようと音楽を貪り続ける。

その連続作業で独自の選曲眼が養われ、個性が形成されていき、己を大きくするのだと。


text by Dee-S

◆【連載】Vinyl Forest チャンネル
◆drumatrixx mag

──【連載】「Vinyl Forest」とは

筆者の私達は音楽好きなのは言うまでもないのだが、それでも年齢を重ねるにつれ不感症になりつつある。原因はハッキリしていて、テクノロジーの進化によって低価格、高品質な制作環境が容易に手に入る昨今にもかかわらず、楽曲のクオリティが退化の一途を辿っているからだ。低コストで在庫を抱えずに済むからレーベルは多くのリリースができる反面、現場ではとても使えないトラックも非常に多い。

そこで、データ音楽販売が主流となった昨今のダンスミュージック界隈の懐事情を鑑みて、

「私たちは、レーベル側が在庫リスクを背負い、インディながらも頑なにVinylをリリースするという行為そのものが、レーベルが充分な楽曲クオリティを保証しているのではないのか?」

という持論(フィルタリング)で巡り会えた珠玉の刺激物と、今では考えられない予算を投じてリリースされた名盤をご紹介していく。

text by Dee-S&Blue Eclair
この記事をポスト

この記事の関連情報