【連載】Vinyl Forest年末企画 ── 2011年ベストバイ

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■ Blue Eclair Selected Vinyls
さて、私、Blue EclairのBest Buyの3枚ですが、私のiTunesの再生回数(筆者はほぼすべてのレコードをデジタルアーカイブしている)や購入月からすべてをおさらいしてみました。不思議と再生回数などのメタデータから一番聴いていたレコード音源と、自身の中での思い入れの度合いは必ずしも一致しておらず、そんな“my棚卸し”から選び出した3枚はこれ。

・N.O.I.A.「True Love (Sexual Version)」

2011年、私の中ではItalo DiscoやNew Waveの再評価がひとつのブームになっていましたが、やはりこの盤がきっかけだったと感じます。まずは、80年代中期の音源独特のベースとのシンセの音色。この盤は私がレジデントを務めているParty<Back In My Roots>のレジデントのひとりであるDJ TZWが一時期かけていた盤。ちょうど2010年の年末あたりに、TZW氏がプレイしたこの盤の音を聴いて、私の何かが矢で貫かれたように感じました。すぐさまTZW氏の盤を確認し、手に入れようとしましたが、やはり国内では取り扱いがなく、海外のオークションから入手しました。キーワードはこの年代の機材、アナログシンセから奏でられるバイブスだろうと感じています。今年、最初の3秒でノックアウトされてしまった数少ない盤です。

・Parada88「You're Gonna Miss Me」

アンテナを張っている方であればご存知だと思いますが、2011年5月の終わり頃、ここ数年で飛ぶ鳥を落とす勢いになったウルグアイのレーベルInternational Feelからとんでもない限定盤がリリースされました。すでにDee-S氏が『Vinyl Forest』でもレビューしている盤ですが、全世界で30枚のみという極少量のリリース。ダンスミュージックのレコードにおいても、ここまで枚数が少ないのは近年希であると言っても過言ではないと思いますが、私は運良く入手できました。1枚目に挙げた盤の流れを少し受けていると思われるディスコ、ニューウェイブサウンドをミックスした絶妙なトラックに仕上がっていて、Italo Discoによくあるイナタイ感じとNew Waveのブリブリ感が良くブレンドされていると思います。後半からのブレイク明けの疾走感と空間的な広がりは、フロアで聴けば誰もが両手を挙げて踊りたくなる展開。所有している方であれば、これをピークタイムに投下する盤と考えているのでは? こちらの盤は限定云々を抜きにしても、純粋にトラックが素晴らしいと思わせてくれます。

・Fudge Fingas「Mass X」

最後にこちらの盤は個人的にも思い入れのあるレーベルのひとつであるイギリス、エディンバラのFirecrackerからリリースされた盤。今回のアーティストは、今年になってフルアルバムをリリースして認知度が高まったFudge Fingas。Firecrackerお得意のDeep Houseで、深いシンセサウンドが特徴なトラックになっています。また、2011年に注目されたアーティストのひとり、ウクライナのVakulaのリミックスが収録されていることも注目。VakulaはFirecrackerの「EP5」をリリースした後に、自身のレーベル、Shevchenko(シェフチェンコ)を立ち上げており、Shevchenkoではすでに3枚リリース済。リミックス等の楽曲提供も含めると、かなりのリリース量となっています。

今回も楽曲だけではなく、目でも楽しませてくれるこのFirecrackerは、レーベル初のカラー違いジャケットをリリースしています。以前はリ・プレスした際にカラー違いの盤がリリースされていたことはありましたが、リリース直後よりカラー違いの盤がリリースされたのは初めて。通常盤はシルバーのシルクスクリーンジャケットで、数枚だけゴールドのシルクスクリーンジャケットの特別盤が混じっています。今回、私はアーティストの善意でゴールドとシルバーの両方でプリントされた特別盤を頂くことができ、そういったことも含めて非常に思い入れのある盤となりました。

text by Dee-S&Blue Eclair
◆【連載】Vinyl Forest チャンネル
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◆Blue Eclairs Room

──【連載】「Vinyl Forest」とは

筆者の私達は音楽好きなのは言うまでもないのだが、それでも年齢を重ねるにつれ不感症になりつつある。原因はハッキリしていて、テクノロジーの進化によって低価格、高品質な制作環境が容易に手に入る昨今にもかかわらず、楽曲のクオリティが退化の一途を辿っているからだ。低コストで在庫を抱えずに済むからレーベルは多くのリリースができる反面、現場ではとても使えないトラックも非常に多い。

そこで、データ音楽販売が主流となった昨今のダンスミュージック界隈の懐事情を鑑みて、

「私たちは、レーベル側が在庫リスクを背負い、インディながらも頑なにVinylをリリースするという行為そのものが、レーベルが充分な楽曲クオリティを保証しているのではないのか?」

という持論(フィルタリング)で巡り会えた珠玉の刺激物と、今では考えられない予算を投じてリリースされた名盤をご紹介していく。

text by Dee-S&Blue Eclair
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