【連載】アストゥーリアス大山曜の[我らプログレッシバー!]Vol.2「ここからプログレが始まった!」

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今回から本格的なプログレ談義ですが、私も口ほどにない浅いマニアなもので(プログレマニアのディープさは半端じゃないです)お手柔らかにお願いします(^^)。

よく“プログレ入門者は何から聴けばいいのか?”という議論になりますが、普段は熱く討論を交わすマニア達も、ほとんど争うことなく1枚のアルバムを挙げます。歴史的影響度、作品の完成度、ジャケットやタイトルを含めたトータルイメージ…全てにおいてプログレを象徴する名作が『クリムゾン・キングの宮殿』です。

そもそもロックミュージックなるものはアメリカの黒人音楽R&Bがルーツで、1950~1960年代白人音楽と融合、ロックンロールを変幻自在に進化させたザ・ビートルズの登場もあって、1960年代後半には様々なロックのジャンルが生まれることになります。ブルースロック、フォークロック、サイケデリックロック、カントリーロック、ブラスロック、ハードロック…etc.。それぞれサウンドは違いますが、共通する特徴として挙げられるのは、エレキギターを主体とする大音響のバンドサウンドであることと、多かれ少なかれ世の中の体制に反抗するアウトローのイメージがあることだと思います。叫ぶ、ギターをかき鳴らす、ノイズを出す、あげくは楽器を壊す(!)といった破壊的衝動に走る人達がいる一方、1966年以降のザ・ビートルズがライブ活動をやめスタジオ録音に専念することになるなど、レコードを聴くに耐える作品として完成させようとする流れも現れました。それまで単なる歌の伴奏に過ぎなかったポップミュージックが、クラシックやジャズからの影響も取り入れ、インストゥルメンタルパート重視の方向を打ち出したのもこの頃です。そういった“構築型ロック”のさまざまな実験が実を結び、1969年このアルバムが世に出ました。

冒頭のノイズ効果音に導かれて始まる1曲目「21世紀の精神異常者」。ノイジーなハードロックがジャズロックへ展開。ブラスユニゾン、ギターインプロ、タイトル通りの破壊的世界が展開される。2曲目「風に語りて」プログレの一面である“静”の部分を象徴する曲。フルートのアンサンブルがクラシカルかつ牧歌的雰囲気をかもし出す。3曲目「エピタフ」悲劇的バラード。サンプリングキーボードの元祖メロトロン(ここではストリングスの音色)がドラマチックに盛り上げるまさにプログレ的歌曲。4曲目「ム-ンチャイルド」幻想・哀愁・陰鬱さをたたえた歌が後半、4人のインプロビゼーションに展開。ヒットチャート1位のアルバムに、こういった難解なパートが入ることがまたプログレ的。ラストのタイトル曲「クリムゾン・キングの宮殿」。美と狂気を表現しながらドラマチックに盛り上がるハイライト曲。ここでもメロトロンが大活躍。

今更ながらどの曲も実にメロディアスで完成度の高い名曲ばかり。しかし実験的精神満載、しっかり世界観を描ききった構成力、もちろん達者かつ個性的な演奏力、どれも文句のつけようがありません。「プログレでまず1枚!」ということで胸を張ってお薦めする1枚です。

ただ、これだけ音楽が氾濫している現代の耳で聴いた場合、どのような感想を持たれるのか疑問のあるところ…。若い人がどんな感想を持たれるのかとても興味深いです。ただこの作品が時代を変えるようなパワーを持っていたということを、考えながら聴いていただければと思います。

さてキング・クリムゾンはこの名作によって一気に大メジャーとなりましたが、続く何作かはこれほどのインパクトを与えられず、“一発屋”っぽくなりそうでした。しかし真の天才は違います。リーダー、ロバート・フリップの新たな音楽は4年後、より強力なものとなって復活します。それはまた次の機会にご紹介するとして、次回は別なバンドを紹介していこうと思っています。どうぞお楽しみに!

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