amazarashi、新作「アノミー」を読み解くクロスレビュー
TBSドラマ『ヘブンズ・フラワー』の主題歌に抜擢されたamazarashiの「アノミー」が、3月16日に遂にリリースとなる。amazarashiは、その刺激的で根源的な歌詞と独自のサウンド、ヴォーカルで大きな話題になっており、類するバンドが見当たらないほどの個性を放つアーティストだ。
この新作であり問題作「アノミー」の世界を広くリスナーの皆さんに紹介するために、4人のライターによるレビューをお届けする。この唯一無二のamazarashi「アノミー」をライター陣はどう読み解いたのか。amazarashiを知る一助になれば幸いである。
◆ ◆ ◆
「ワンルーム叙事詩」がリリースされてから、わずか4ヶ月のうちに、amazarashiの新作が発表されると聞いて、リリースの早さに驚いた。「ワンルーム叙事詩」が、あまりにも濃密で、作者である秋田ひろむの骨身を削ったような作品だったからだ。彼の紡ぐ言葉には、聴き手に対する媚びは一切ない。ただひたすら、日記に文字を綴るように、自分と向き合う。「こんなことを書けば共感してもらえるだろうか?」なんて温い思いは1mmも入っていなくて、「私はこう思っている!」という、自分の思いをこれでもかとぶつけてくるような作品ばかりだ。
「アノミー」と名付けられた新作も、やはりそのスタイルは一切変わらない。前作は「ワンルーム」というだけあって、一人の部屋で自分の内面と向き合ったり、産まれた意味を考えたりしているような、そんな印象がある。しかし、今回は、自分とその周りを描いた作品が多い。
タイトルの「アノミー」は、聞き慣れない言葉だが、簡単に言えば、モラルの低下で乱れた世の中ということだろうか。今作はそのタイトル曲が一曲目。社会に対してのテーゼもアンチテーゼもすべてぶちまけ、聴いた人に「どうなの?」と問いかける。毎日のニュースを見ていて、「なんでこんな事件がおきるんだろう?」と疑問に思うことが多々ある。例えば携帯サイトに受験問題を投稿してしまった人、女子学生を誘拐しようとした教師……etc.いったい何故こんなことになったのか。
曲を聴いていると、そんな社会の風景の中で、自分はどう生きているのかとふと考えてしまう。この1曲だけで心をガツンと拳で叩かれたような衝撃。「さくら」「理想の花」のように優しく胸に響く曲。でもやはり、そこはかとない切なさもあり。「ピアノ泥棒」がまた秀逸だ。元ピアノ弾きだった泥棒が、深夜に一人でコンサートをする……そんなショートムービーを見ているかのような曲だ。ポエトリーリーデーィングの要素が強い「おもろうてやがて悲しき東口」。そして、やはり、そんなモラルが低下して生きにくい世の中になっても、自分は生きていかなければいけないんだなと、勇気をもらう「この街で生きている」。どんな状況にあっても、悩みも悪もすべて呑み込んで、人は力強く生きていけるものだと、教えられているような作品である。
(大橋美貴子)
◆ ◆ ◆
amazarashiの新ミニアルバム『アノミー』。一足先に聴かせてもらった…ところ、前作、前々作同様、いやそれ以上に、またまた胸が激震した。
今回、特に私が揺さぶられたのは、6曲目「この街で生きている」だ。amazarashiにはめずらしくストレートなメッセージソングとも言えるこの曲。美しく澄んだメロディに乗せて、秋田ひろむの体温を感じさせるあたたかな声がこう歌う。“迷ったり 嫌になったり 先の見えない闇も 切り裂いた君に 一つでも 叶わない 願いなんてあるものか”“戦ってる相手は 疑う心だ つまり自分だ”
これを聴いた時、ふいに私の目からは大量の涙がこぼれ落ち、止まらなくなった。そして何度も繰り返し聴く中で思った。“やっぱり、あきらめるのはやめよう”と。
世の中には“ポジティブな応援ソング”が無数に存在する。が、元気な時ならともかく、元気のない時にそれらを耳にすると、嘘臭く聞こえ、もしくは自分以外のすべての人が立派に思え、いずれにしてもますます元気をなくすことが多い。けれど、amazarashiのこの曲は違った。伝えようとしてるメッセージは世の応援ソングと大きく違うわけではないのに、何が違うのか。それはこの曲の芯にあるものが、単なるポジティブではなく、ネガをくるりと反転させたポジであり、闇の深さを知り葛藤した上での想いだからだ。だから信じられたし、リアルな言葉として骨折寸前の心に響き、励まされた。音楽が持つ力の凄さを改めて全身で感じた1曲。
感動したあまり、つい1曲に文字数を裂いてしまったが、もちろん他の収録曲たちも素晴らしい。日々の虚無の中で愛の意味を問い、最後に放つ“救ってよ”という言葉が印象的な「アノミー」。世間一般の桜ソングとはキッパリ一線を画しながら、桜と過去の記憶を絡ませ、強烈なせつなさを残す「さくら」。どこかオー・ヘンリーを彷彿させる短編の中で人生の機微を浮かび上がらせる「ピアノ泥棒」ほか、どれもamazarashiにしか表現し得ない全6曲。
ちなみにタイトルチューンの「アノミー」はTBSドラマ『ヘブンズ・フラワー』の主題歌に決定。お茶の間にamazarashiの曲が流れたら、ドラマを観てた人はどんな衝撃を受けるだろう。それを思うとなんだかうれしくなる。どこにでもどんどん流れてほしい。いい曲は広く聴かれるべきだ。
ところで、今作でミニアルバム3枚、インディーズ時代の音源や未発表曲も含めれば、単純に曲数だけで言うならライヴももう十分できるはず。未だ謎が多い彼らだけに、ライヴでもっと彼らのことを知りたいと思うアノミーは高まるばかり(“アノミー”の使い方、これで合ってますか? ひろむさん)。
早くamazarashiのライヴが観たい アノミー アノミー
この素晴らしい曲たちを生でも体感したい アノミー アノミー
(赤木まみ)
amazarashi「アノミー」
2011.03.16 release
初回仕様+詩集封入
AICL2240 ¥1,529(tax in)
1.アノミー
2.さくら
3.理想の花
4.ピアノ泥棒
5.おもろうてやがて悲しき東口
6.この街で生きている
◆amazarashi オフィシャルサイト
◆amazarashiオフィシャルmyspace
◆amazarashi Twitter
◆次ページへ続く
この新作であり問題作「アノミー」の世界を広くリスナーの皆さんに紹介するために、4人のライターによるレビューをお届けする。この唯一無二のamazarashi「アノミー」をライター陣はどう読み解いたのか。amazarashiを知る一助になれば幸いである。
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「ワンルーム叙事詩」がリリースされてから、わずか4ヶ月のうちに、amazarashiの新作が発表されると聞いて、リリースの早さに驚いた。「ワンルーム叙事詩」が、あまりにも濃密で、作者である秋田ひろむの骨身を削ったような作品だったからだ。彼の紡ぐ言葉には、聴き手に対する媚びは一切ない。ただひたすら、日記に文字を綴るように、自分と向き合う。「こんなことを書けば共感してもらえるだろうか?」なんて温い思いは1mmも入っていなくて、「私はこう思っている!」という、自分の思いをこれでもかとぶつけてくるような作品ばかりだ。
「アノミー」と名付けられた新作も、やはりそのスタイルは一切変わらない。前作は「ワンルーム」というだけあって、一人の部屋で自分の内面と向き合ったり、産まれた意味を考えたりしているような、そんな印象がある。しかし、今回は、自分とその周りを描いた作品が多い。
タイトルの「アノミー」は、聞き慣れない言葉だが、簡単に言えば、モラルの低下で乱れた世の中ということだろうか。今作はそのタイトル曲が一曲目。社会に対してのテーゼもアンチテーゼもすべてぶちまけ、聴いた人に「どうなの?」と問いかける。毎日のニュースを見ていて、「なんでこんな事件がおきるんだろう?」と疑問に思うことが多々ある。例えば携帯サイトに受験問題を投稿してしまった人、女子学生を誘拐しようとした教師……etc.いったい何故こんなことになったのか。
曲を聴いていると、そんな社会の風景の中で、自分はどう生きているのかとふと考えてしまう。この1曲だけで心をガツンと拳で叩かれたような衝撃。「さくら」「理想の花」のように優しく胸に響く曲。でもやはり、そこはかとない切なさもあり。「ピアノ泥棒」がまた秀逸だ。元ピアノ弾きだった泥棒が、深夜に一人でコンサートをする……そんなショートムービーを見ているかのような曲だ。ポエトリーリーデーィングの要素が強い「おもろうてやがて悲しき東口」。そして、やはり、そんなモラルが低下して生きにくい世の中になっても、自分は生きていかなければいけないんだなと、勇気をもらう「この街で生きている」。どんな状況にあっても、悩みも悪もすべて呑み込んで、人は力強く生きていけるものだと、教えられているような作品である。
(大橋美貴子)
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amazarashiの新ミニアルバム『アノミー』。一足先に聴かせてもらった…ところ、前作、前々作同様、いやそれ以上に、またまた胸が激震した。
今回、特に私が揺さぶられたのは、6曲目「この街で生きている」だ。amazarashiにはめずらしくストレートなメッセージソングとも言えるこの曲。美しく澄んだメロディに乗せて、秋田ひろむの体温を感じさせるあたたかな声がこう歌う。“迷ったり 嫌になったり 先の見えない闇も 切り裂いた君に 一つでも 叶わない 願いなんてあるものか”“戦ってる相手は 疑う心だ つまり自分だ”
これを聴いた時、ふいに私の目からは大量の涙がこぼれ落ち、止まらなくなった。そして何度も繰り返し聴く中で思った。“やっぱり、あきらめるのはやめよう”と。
世の中には“ポジティブな応援ソング”が無数に存在する。が、元気な時ならともかく、元気のない時にそれらを耳にすると、嘘臭く聞こえ、もしくは自分以外のすべての人が立派に思え、いずれにしてもますます元気をなくすことが多い。けれど、amazarashiのこの曲は違った。伝えようとしてるメッセージは世の応援ソングと大きく違うわけではないのに、何が違うのか。それはこの曲の芯にあるものが、単なるポジティブではなく、ネガをくるりと反転させたポジであり、闇の深さを知り葛藤した上での想いだからだ。だから信じられたし、リアルな言葉として骨折寸前の心に響き、励まされた。音楽が持つ力の凄さを改めて全身で感じた1曲。
感動したあまり、つい1曲に文字数を裂いてしまったが、もちろん他の収録曲たちも素晴らしい。日々の虚無の中で愛の意味を問い、最後に放つ“救ってよ”という言葉が印象的な「アノミー」。世間一般の桜ソングとはキッパリ一線を画しながら、桜と過去の記憶を絡ませ、強烈なせつなさを残す「さくら」。どこかオー・ヘンリーを彷彿させる短編の中で人生の機微を浮かび上がらせる「ピアノ泥棒」ほか、どれもamazarashiにしか表現し得ない全6曲。
ちなみにタイトルチューンの「アノミー」はTBSドラマ『ヘブンズ・フラワー』の主題歌に決定。お茶の間にamazarashiの曲が流れたら、ドラマを観てた人はどんな衝撃を受けるだろう。それを思うとなんだかうれしくなる。どこにでもどんどん流れてほしい。いい曲は広く聴かれるべきだ。
ところで、今作でミニアルバム3枚、インディーズ時代の音源や未発表曲も含めれば、単純に曲数だけで言うならライヴももう十分できるはず。未だ謎が多い彼らだけに、ライヴでもっと彼らのことを知りたいと思うアノミーは高まるばかり(“アノミー”の使い方、これで合ってますか? ひろむさん)。
早くamazarashiのライヴが観たい アノミー アノミー
この素晴らしい曲たちを生でも体感したい アノミー アノミー
(赤木まみ)
amazarashi「アノミー」
2011.03.16 release
初回仕様+詩集封入
AICL2240 ¥1,529(tax in)
1.アノミー
2.さくら
3.理想の花
4.ピアノ泥棒
5.おもろうてやがて悲しき東口
6.この街で生きている
◆amazarashi オフィシャルサイト
◆amazarashiオフィシャルmyspace
◆amazarashi Twitter
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