BUMP OF CHICKEN、友情の本質を描いたニュー・シングル「友達の唄」特集

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BUMP OF CHICKEN

ニュー・シングル「友達の唄」 2011.2.23リリース

INTERVIEW

──昨年末リリースした『COSMONAUT』というアルバムは、BUMP OF CHICKENの音楽の在り方としても新たな感触に満ちた作品だったと思います。リリースから少し時間が経過した今、4人はあのアルバムにどのような思いを抱いていますか。

直井由文(以下、直井):今もまだ伝えたいという思いが消えないですね。発売してから、たくさんの感想をラジオや雑誌に寄せられるハガキなどで聞かせていただいて。ホントにみんなそれぞれの気持ちをもって聴いてくれているんだなって実感しました。これは、僕ら4人が共通してもっている思いなんですけど、僕らはホントに音楽を心から愛していて、藤くんが作った曲も心から愛してレコーディングしているけれども、結局はこの4人だけで満足できるものをひたすら追求しているだけとも言えるんですよね。そこにしかもう僕らの真実はないと思っていて。ということは、外に対してはすごく恐怖心もあって。自分たち4人がいいと思っている音楽は、世間とちゃんとつながれるのだろうか?という。でも、そういう思いをリスナーが覆してくれるんですよね。

──恐怖心をリスナーの思いが越えてくれる。

直井:うん。毎回すごい熱量で感想をくれて。藤くんに最初にデモを聴かせてもらうときは僕もひとりのリスナーですから。“そうそう、俺もそういうこと考えてた!”とか、自分とはまったく違う感想なんだけど“こんなこと考えてる人がいるんだ!”っていう発見があって。そうやって小学生からご年配の方までが熱い感想をくれるので。だんだん“『COSMONAUT』ありがとう”という気持ちになってくるんですよね。だから、またプロモーションしたくなるんです(笑)。それはただ売れたいとかそういう気持ちではなくて、『COSMONAUT』をきっかけに純粋にまだ知らない誰かと出会いたいという感覚なんですよね。

──藤原さんはどうですか。

藤原基央(以下、藤原):自分にとってすごく大きな存在になったのが『COSMONAUT』のジャケットで。あのジャケットと思わぬところで出会ったりするわけですね。どこかのお店とか。

──ビルボードとかね。

藤原:そうそう。ビルボードもすごくビックリした。

増川弘明(以下、増川):渋谷のセンター街のデッカいやつとかね。

藤原:そう。あれは発売日のときにビックリして。単なるヘルメットの写真なんですけど(笑)、あのジャケットが意志をもっている感じがするというか。俺に向かって“こっちはこんな感じでやってるよ”って言ってくれているような感覚があって。完全に意志をもって、今度は向こうからこっちに何かを発信してくれているような。『COSMONAUT』というアルバムがそういうひとつの個性をもって生きてるような感じがしますね。

──升さんは?

升秀夫(以下、升):やっぱりリリースから少し時間が経過してまとまった感想を聞けるのがうれしいですね。『COSMONAUT』というアルバムが、その人にとってどういう存在になっているかを言葉として感じられるから。僕自身もこれから新しい発見があるような気がしていて。それがすごく楽しみです。

──増川さん。

増川:お正月に実家に帰ったときに直で友達の反応を聞けたのはすごくうれしかったです。正月くらいじゃないとあまり実家にも帰らないし、地元の友達の感想を直接聞く機会もなかなかないので。こっちも恥ずかしかったりするんですけど(笑)。

──どういう反応でした?

増川:向こうも照れて(口を尖らせて)“聴いたよ、すげえよかったよ”みたいな(笑)。

一同:(笑)。

──で、その『COSMONAUT』からわずか2ヶ月でニュー・シングル「友達の唄」が完成しました。この曲がまた本当に素晴らしい。どこまでも音楽的なBUMPならではのバラード曲で。

一同:ありがとうございます!

──『映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ天使たち~』の主題歌に決定しましたが、これはどういう心境で書いたんですか?

藤原:完全にのび太のことを考えていましたね。まず、きっかけとしては去年の頭くらいに『鉄人兵団』の主題歌のオファーをいただいて。僕らとしても「ドラえもん」が大好きで、なかでも映画として公開される大長編に対する思い入れがすごくあるんです。大長編には甲乙つけがたい魅力的な作品がたくさんありますけど、そのなかでもオリジナルの『鉄人兵団』は僕らのなかで3指に入る作品だったんですね。いざ、曲を書くとなったときは、オリジナルの『鉄人兵団』のコミック版の、自分がいちばん思い入れのあるシーンを思い浮かべましたね。

──それはどのシーンですか?

藤原:終盤の、のび太とリルルというメイン・キャラクターの友情を巡るシーンなんですけど。半壊状態にある街の地下鉄の階段で思い悩むリルルがしゃがみ込んでいるんです。それをのび太が見つけるんです。で、リルルは振り返って笑うんです。子どものころからそのシーンが特に印象に残っていて。『鉄人兵団』はもちろん映画版も観たんですけど、どちらかというとマンガ原作の記憶のほうが強くて。子どものころ家にコミック版があって何度も読み返していたから。

──読み返す度にそのシーンが心に刻まれていった。

藤原:うん。“このときのリルルってどんな気持ちなのかな?”って。のび太もまた、いろんな複雑な思いを抱えてリルルを捜しにきてくれたんですよね。そのリルルとのび太の情景を思い浮かべながら、ギターを弾いて、歌詞を書いていたんですけど──最初はどちらかというと、リルルに寄った気持ちがあったんですけど、そうじゃなくてこれは俺自身の気持ちなんだなってどんどんなっていったんです。思い返すと、読者である自分が何かに悩んでるときも、うだつが上がらないときも、のび太はいつも友達のままで見守ってくれていたような・・・。そうやって、のび太がいつも自分と一緒にいてくれたという感覚があるんですよね。のび太とリルルの印象的なシーンを入り口にして、自分から見たのび太、さらにのび太を通して、「ドラえもん」という作品を感じながら曲を書いていって。そのシーンはもしかしたら、自分だけじゃなくて、「ドラえもん」という作品と受け手の象徴的な一コマなのかもしれないなって思うようにもなってきて。『鉄人兵団』という窓枠を通して、自分の思いがどんどん外にも広がっていったんですよね。『鉄人兵団』のコミック版を読んでいたころの僕も、今の僕も全部そこにいて。さらに、ここまで一緒にバンドをやってきたメンバーに対しても思いが向かっていったし。

──すごく個人的かつ普遍的な友情を描く歌になっていった。

藤原:うん。小学校のころの友達、スタッフ、リリースの度に取材してくれる人たち、その記事を読んでくれる読者、CDを聴いてくれるリスナー、ライヴに来てくれるお客さんにもどんどん思いが向かっていって。それで、こういうスケールの曲になっていったんです。

──3人にとってのこの曲はどういう感触がありますか?

直井:藤くんにデモを聴かせてもらったときにイントロからグッときて、Aメロから涙が止まらなくて。まずドラえもんやのび太の顔が浮かんできて。そこからメンバー4人の想い出とか、幼なじみと薮のなかを駆けていた記憶とか(笑)。いろんなことが頭を過りましたね。あとは、藤子・F・不二雄先生にもう「有り難うございます」と言えないこととか……。

──この曲を先生にも聴いてもらいたかったですよね。

直井:ね。『ドラえもん』は僕らにとって空気のような存在でもありますから。それを吸い込んでる藤くんが作った曲だから、自然といろんなことを感じて涙が出てしまったんだと思います。“どうしようもなく涙が出る”って藤くんに言ったんです。そしたら藤くんはホッとした顔で“ホントによかった”って言ってくれて。今でもこの曲を聴くとヤバいですね(笑)。

升:例えば子どもだったら、この「友達の唄」をBUMP OF CHICKENの曲と認識しないで聴くわけじゃないですか。あくまで“ドラえもん”の曲として聴いてくれる。

──一生の記憶になる可能性が大いにある。

升:現に僕らにとっての「ドラえもん」はそういう作品だし。そういうふうに曲を届けられる機会をいただけてすごくうれしい気持ちです。あと大長編「ドラえもん」の最後って、ハッピーエンドなんだけど悲しいんですよね。必ずそこに別れがあって。

──そこは共通していますよね。

升:うん。『鉄人兵団』の物語に触れて、子どもでも大人でも心が揺さぶられるときにこの曲が流れることを想像したら、今から既に感動してます。

増川:この曲は上手く言葉にできない感動があるんですよね。直井くんと同じように、いろんなことを想起させられるし。「ドラえもん」に関して言えば、「映画ドラえもん」の世界観は得体の知れない怖さも描かれていて。最終的にはそれを越えていく感動があるんですけど。この曲もそういう深いところを揺さぶるようなものになったと思います。

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