原盤、契約、印税…、音楽業界に必要な著作権

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最新・音楽著作権本の決定版「すぐに役立つ音楽著作権講座」が12月21日に刊行された。音楽著作権というだけで、難しそう・めんどくさそう・どうでもいいや…と、ないがしろにされがちなところだが、音楽業界が成り立っているのは、ひとえにこの法律のおかげ。

少なくとも音楽業界に興味があったり、ましてミュージシャンになりたい、あるいはミュージシャンを応援したいと思うのであれば、この書籍はぜひとも目を通してもらいたいバイブルのような一冊だ。書籍「すぐに役立つ音楽著作権講座」とはどんな本なのか。そもそも音楽著作権とは? 音楽業界で30数年にわたり契約関係の業務に携わってきた著者の秀間修一氏に話を聞いた。

──本書「すぐに役立つ音楽著作権講座」を執筆しようと思ったのはいつ頃のことでしょうか?

秀間:もう5~6年前になりますけど、そういう本を書こうかなっていうことはあって、簡単な企画書まで作ったことはありましたね。

──何かきっかけがあったのでしょうか?

秀間:長年、音楽業界でやってきたので、身に付けた知識をまとめて業界に残したいというのがひとつと、けっこう音楽業界の人って、音楽著作権についてわかっているようでわかっていない人が多いんですよ。権利の中身とか、契約の中身とか。その本質的な部分を身に付けてもらいたい、というのがありましたね。

──使える知識、正しい知識として。

秀間:そうそう。本書の「あとがき」にも書きましたけど、そうすると応用が利くわけですよ。

──執筆にあたって、特に心がけたことはなんでしょうか?

秀間:僕の性格上、ふざけた表現はできない(笑)。とにかく真面目に、張ったりをかまさず、僕の思っていることをそのまま書いた、と。だから面白くないかもしれない(笑)。

──著者から見て、一番の読みどころはどんなところでしょうか?

秀間:原盤に関する契約の部分ですかね。原盤会社が原盤を作ってレコード会社に提供するときの契約、印税の計算、損益分岐点の計算とか、そういう部分ですね。純粋に音楽著作権や著作権法の解説みたいな本は今までもいっぱいあったし、音楽著作権ビジネスのことを書いている本もあるわけですけど、どちらかというと、それらは楽曲の著作権の管理が主体だった。でも、この本は、それも入れているけど、プラス、原盤の部分ですね。

──本書で秀間さんが一番伝えたい部分というのはなんでしょうか?

秀間:自分がせっかく苦労して作ったコンテンツ…実演だったり楽曲だったり、の権利を最大限に活かして欲しいということですね。そのためには知識が必要なので、この本を読めば、それが最大限に活かせるということです。日本のアーティストというのはその辺を重要視していませんよね。曲が売れればいい、みたいな。その価値、財産価値を最大化するにはどんなやり方があるのか、みたいなところはアーティスト自身も無頓着だし、なんとなく死後50年だとか、公表後50年だとか言っているだけで、周りのスタッフもよくは勉強していない。ところが、外国では相当勉強していて、最初から一番いい方法を研究しているような気が、僕はしているんです。

──では、秀間さんにとって、音楽著作権とは?

秀間:音楽業界にはなくてはならない権利なわけですよね。著作権法がなくなったら、レコード会社も出版社もプロダクションも成り立たない、とにかく一番重要な法律なわけです。だからこそ、みんなもっと勉強して欲しいということです。シンコーミュージックに入社して配属されたのが、たまたま著作権管理課というところだったんです。それまでは著作権には興味なかったんですけど、著作権法とはどういうものなのかを少しずつ勉強したら、面白いし、いかに重要な権利かということがわかったんです。

──最後に、こういう人にはぜひ読んで欲しい、というのがあればお願いします。

秀間:まずは、今、アマチュアで「あわよくばプロになろう!」と思っている人たちに読んで欲しいですね。それには二つの意味があります。他人の音楽を使うときに著作権という権利をクリアしながらやって欲しいということと、自分たちが曲を作ったりレコーディングした場合、そこで自分たちの権利が発生しますが、それが使われるとどれだけのお金になるのかということ、その両面が書いてあるので、それを勉強して欲しい。それと、音楽業界で働いている人にも読んで欲しいです。表面上の知識だけじゃなくて、その裏付けになっている法律や規定を勉強することによって、応用力とより正確な知識を身に付けて欲しいです。音楽業界以外でも、著作権とか、印税とか、そういうものに興味のある人もけっこういると思うんですね。そういう人にも読んで欲しいです。

知っているのと知らないのでは大違い。まして音楽の世界で大成したいと思うのであれば、なおのこと。音楽著作権に対する正しい知識は、きっと未来に輝く希望の光をさらに眩しく輝かせるはずだ。

取材・文:笹川孝司
著者撮影:小嶋秀雄

「すぐに役立つ音楽著作権講座」
秀間修一著
シンコーミュージック・エンタテイメント刊
A5判/320ページ1,890円(税込)
発売中

秀間修一(ひでま しゅういち)
株式会社リアルライツ代表取締役
社団法人音楽出版社協会 常務理事
東京コンテンツプロデューサーズ・ラボ 主任講師
1952年栃木県生まれ
1975年明治大学経営学部経営学科卒業、株式会社新興楽譜出版社(現:株式会社シンコーミュージック・エンタテイメント)入社
1996年同社取締役に就任
2007年同社取締役を退任し、音楽ビジネスコンサルティング業の株式会社リアルライツを設立
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