ロドリーゴ・イ・ガブリエーラ、世界を歓喜させる格闘のガット弦
この気持ちよさは何だろう。音楽が呼吸するとでもいうのか、まさに「音楽が息づく」瞬間が、連続性を持って目の前に繰り広げられる。
この動画は、9月2日発売となったロドリーゴ・イ・ガブリエーラの最新作『11:11』(邦題:『格闘弦』)の1曲目を飾る「ハヌマン」のパフォーマンス映像だ。音という芸術が時間軸に沿って生まれ、動き、そして姿を消す。4分ちょっとのドラマに、釘付けになることだろう。
◆「HANUMAN(スタジオライヴ)」映像
アルバム『格闘弦』は、ジミヘン、サンタナ、ピンク・フロイドなどの11人の偉大なアーティストへ捧げられた11曲の珠玉の作品集だ。かつてダブリンで無一文になった男女がここまで高みに登って来たという、空怖ろしいまでの迫力で迫るインスト作品だ。『激情ギターラ!』の正しき進化の迫力を保持しながら、ロック・ファンがニヤッとしてしまう限りなくキャッチーな泣きのメロディを兼ね備えた本作、もはや、ロドリーゴ・イ・ガブリエーラに死角はない。
◆ロドリーゴ・イ・ガブリエーラ、世界を歓喜させる格闘のガット弦 ~写真編~
15年以上一緒にギターを弾き続けているロドリーゴ・サンチェスとガブリエーラ・クインテーロ。10代の頃地元メキシコシティでメタル演奏者としてためらいの第一歩を踏み出し、ミレニアムの変わり目にはダブリンのグラフトン通りで無邪気なストリート・プレイヤーを経て、2009年の今、世界をまたにかけるツアー・マシーンとして普遍的な評価を受けている彼らの関係は、お互いへの理解が直感の範疇を超え、禅の域にまで達している音楽同盟である。陰のリズムに対して陽のメロディといったところか。
前回のスタジオ・アルバムのリリースから3年が経った。『rodrigo y gabriela』(邦題『激情ギターラ!』)とシンプルに名付けられたその作品は、2006年2月にまずアイルランドでリリースされ、同国のチャートで1位を獲得した。幸先のよいスタートを切ったこのアルバムは、以来全世界で60万枚を売り上げている。口コミでじわじわとサクセス・ストーリーを築き上げた同作は、ロドガブの世界進出への名刺となったのである。最初はイギリス、続いてオーストラリア、南アフリカ、アメリカ、欧州、日本がこの作品のたぐいまれな魅力にひれ伏した結果、このデュオは同作をサポートするために2年半以上もツアーに出ずっぱりの状態となった。
アイルランドを本拠地としながらも、故郷近くの温暖な気候の魅力が捨てがたい彼らは、2006年、太平洋岸の町イックスタパに中米の拠点を置いた。2008年の後半は、このメキシコ本部にレコーディング・スタジオを建設するのに費やしている。『格闘弦』がレコーディングされたのもそこである。『激情ギターラ!』が、感情を刺激し留まるところを知らないダイナミックなエネルギーを捉えることに成功した作品だとすれば(この作品の大部分はスタジオで“ライヴ”録音されており、オーバーダブが施された箇所はごくわずかである)、新作は彼らがそのサウンドの中核をより洗練させ、複雑で多彩なものへと発展させていった作品である。
ロドリーゴの見事なリード・ギターとガブリエーラのユニークなリズム・プレイが織りなす素晴らしいインタープレイは今もこのサウンドの中心に存在するが、ベースとなる音の風景には、今回はパーカッションや時折登場するピアノ、そしてウードやシタールなど彼らの保有する世界中の弦楽器などが絶妙に補われている。それから…大きな声ではいえないが…エレクトリック・ギターが初めてあちこちに登場しているのである。
ロドリーゴ・イ・ガブリエーラが自らプロデュースを手がけた(タイトル曲はジョン・レッキーとの共同プロデュース)本作のリミックスを担当したのはコリン・リチャードソン。スリップノットやトリヴィアムなどのミキシング・コンソールを担当した、ロック界では有名な存在である。ギターを歌わせると同時に刺すような音にもできることからロドガブから白羽の矢を立てられた彼の卓上の業師ぶりにより、『格闘弦』の音が織りなす風景は、目と耳の前で今にも踊りだしそうに感じられる。
『格闘弦』の中核には、ロドガブにこれまでインスピレーションを与えてきた、古今の偉大なミュージシャン達に対する称賛の気持ちがある。11曲のひとつひとつが、豪華で多彩な才能の顔ぶれに対する音楽的な「グラシアス」(スペイン語で“ありがとう”)のメッセージなのである。中には率直なものもある。「ヴードゥ・チャイル」を引用した「バスター・ヴードゥ」は、ジミ・ヘンドリックスに対する明らかな感謝の表明だが、他の曲はもっと控えめである。テスタメントのメタル・ゴッド、アレックス・スコルニックが参加した「アトマン」では、ダイムバッグ・ダレルを称える感動的なアラベスク(ピアノ小曲)に、完全なシュレッド・ギターの激しいソロがちりばめられている。
パコ・デ・ルシアへのオマージュ「マスター・マキ」では、ロドガブがLAを拠点とするアコースティック・フュージョンのベテラン、ストランズ&ファラと共にユニークなカルテットを結成。彼らが受けてきた影響は非常に多様で多次元にわたっている。メキシコのデュオがイスラエルのウードのスリーピースにリスペクトを表し、クレイドル・オブ・フィフスをミックスした男がミキシングを手がける曲など、他のどこで聴くことができよう?
ロドリーゴ・イ・ガブリエーラの基盤そのものには、音楽表現を探求し、ファッションやトレンドに囚われず新しいサウンドを受け容れようとする意欲や、いかなる特定のジャンルへの分類に対する率直な拒絶がある。彼らにとって音楽は花いっぱいの庭であり、彼らは歌いながら飛び回るハチドリのように、花から花へと飛び移り続けるのだ。彼らが究極の音の蜜を絶え間なく追求していく中で、現時点で最高の蜜を共に味わわせてくれる、そんな作品が『格闘弦』である。
『格闘弦』
1.ハヌマン※カルロス・サンタナ・インスパイア曲
2.バスター・ヴードゥ※ジミ・ヘンドリックス インスパイア曲
3.トリヴェーニ※ル・トリオ・ジュブラン(イスラエルのスリー・ピースグループ)にインスパイアされた曲
4.ロゴス※アル・ディ・メオラ・インスパイア曲
5.サント・ドミンゴ※ジャズ・ピアニスト/作曲家ミッシェル・カミーロ・インスパイア曲
6.マスター・マキ※パコ・デ・ルシア・インスパイア曲
7.サヴィトゥリ※ジョン・マクラフリン、そしてザキール・フセインの70年代にブレークしたシャクティというインド音楽にインスパイアされた曲
8.オラ・セロ※アストル・ピアソラ(アルゼンチン・タンゴ、バンドネオンーヴァイオリン奏者)インスパイア曲
9.チャク・ムール※ホルヘ・レジェス(2009年2月に無くなったメキシコの作曲家)インスパイア曲
10.アトマン※ダイムバッグ・ダレル(元パンテラ、元ダメージプラン)インスパイア曲
11.イレヴン・イレヴン※ピンク・フロイド・インスパイア曲
この動画は、9月2日発売となったロドリーゴ・イ・ガブリエーラの最新作『11:11』(邦題:『格闘弦』)の1曲目を飾る「ハヌマン」のパフォーマンス映像だ。音という芸術が時間軸に沿って生まれ、動き、そして姿を消す。4分ちょっとのドラマに、釘付けになることだろう。
◆「HANUMAN(スタジオライヴ)」映像
アルバム『格闘弦』は、ジミヘン、サンタナ、ピンク・フロイドなどの11人の偉大なアーティストへ捧げられた11曲の珠玉の作品集だ。かつてダブリンで無一文になった男女がここまで高みに登って来たという、空怖ろしいまでの迫力で迫るインスト作品だ。『激情ギターラ!』の正しき進化の迫力を保持しながら、ロック・ファンがニヤッとしてしまう限りなくキャッチーな泣きのメロディを兼ね備えた本作、もはや、ロドリーゴ・イ・ガブリエーラに死角はない。
◆ロドリーゴ・イ・ガブリエーラ、世界を歓喜させる格闘のガット弦 ~写真編~
15年以上一緒にギターを弾き続けているロドリーゴ・サンチェスとガブリエーラ・クインテーロ。10代の頃地元メキシコシティでメタル演奏者としてためらいの第一歩を踏み出し、ミレニアムの変わり目にはダブリンのグラフトン通りで無邪気なストリート・プレイヤーを経て、2009年の今、世界をまたにかけるツアー・マシーンとして普遍的な評価を受けている彼らの関係は、お互いへの理解が直感の範疇を超え、禅の域にまで達している音楽同盟である。陰のリズムに対して陽のメロディといったところか。
前回のスタジオ・アルバムのリリースから3年が経った。『rodrigo y gabriela』(邦題『激情ギターラ!』)とシンプルに名付けられたその作品は、2006年2月にまずアイルランドでリリースされ、同国のチャートで1位を獲得した。幸先のよいスタートを切ったこのアルバムは、以来全世界で60万枚を売り上げている。口コミでじわじわとサクセス・ストーリーを築き上げた同作は、ロドガブの世界進出への名刺となったのである。最初はイギリス、続いてオーストラリア、南アフリカ、アメリカ、欧州、日本がこの作品のたぐいまれな魅力にひれ伏した結果、このデュオは同作をサポートするために2年半以上もツアーに出ずっぱりの状態となった。
アイルランドを本拠地としながらも、故郷近くの温暖な気候の魅力が捨てがたい彼らは、2006年、太平洋岸の町イックスタパに中米の拠点を置いた。2008年の後半は、このメキシコ本部にレコーディング・スタジオを建設するのに費やしている。『格闘弦』がレコーディングされたのもそこである。『激情ギターラ!』が、感情を刺激し留まるところを知らないダイナミックなエネルギーを捉えることに成功した作品だとすれば(この作品の大部分はスタジオで“ライヴ”録音されており、オーバーダブが施された箇所はごくわずかである)、新作は彼らがそのサウンドの中核をより洗練させ、複雑で多彩なものへと発展させていった作品である。
ロドリーゴの見事なリード・ギターとガブリエーラのユニークなリズム・プレイが織りなす素晴らしいインタープレイは今もこのサウンドの中心に存在するが、ベースとなる音の風景には、今回はパーカッションや時折登場するピアノ、そしてウードやシタールなど彼らの保有する世界中の弦楽器などが絶妙に補われている。それから…大きな声ではいえないが…エレクトリック・ギターが初めてあちこちに登場しているのである。
ロドリーゴ・イ・ガブリエーラが自らプロデュースを手がけた(タイトル曲はジョン・レッキーとの共同プロデュース)本作のリミックスを担当したのはコリン・リチャードソン。スリップノットやトリヴィアムなどのミキシング・コンソールを担当した、ロック界では有名な存在である。ギターを歌わせると同時に刺すような音にもできることからロドガブから白羽の矢を立てられた彼の卓上の業師ぶりにより、『格闘弦』の音が織りなす風景は、目と耳の前で今にも踊りだしそうに感じられる。
『格闘弦』の中核には、ロドガブにこれまでインスピレーションを与えてきた、古今の偉大なミュージシャン達に対する称賛の気持ちがある。11曲のひとつひとつが、豪華で多彩な才能の顔ぶれに対する音楽的な「グラシアス」(スペイン語で“ありがとう”)のメッセージなのである。中には率直なものもある。「ヴードゥ・チャイル」を引用した「バスター・ヴードゥ」は、ジミ・ヘンドリックスに対する明らかな感謝の表明だが、他の曲はもっと控えめである。テスタメントのメタル・ゴッド、アレックス・スコルニックが参加した「アトマン」では、ダイムバッグ・ダレルを称える感動的なアラベスク(ピアノ小曲)に、完全なシュレッド・ギターの激しいソロがちりばめられている。
パコ・デ・ルシアへのオマージュ「マスター・マキ」では、ロドガブがLAを拠点とするアコースティック・フュージョンのベテラン、ストランズ&ファラと共にユニークなカルテットを結成。彼らが受けてきた影響は非常に多様で多次元にわたっている。メキシコのデュオがイスラエルのウードのスリーピースにリスペクトを表し、クレイドル・オブ・フィフスをミックスした男がミキシングを手がける曲など、他のどこで聴くことができよう?
ロドリーゴ・イ・ガブリエーラの基盤そのものには、音楽表現を探求し、ファッションやトレンドに囚われず新しいサウンドを受け容れようとする意欲や、いかなる特定のジャンルへの分類に対する率直な拒絶がある。彼らにとって音楽は花いっぱいの庭であり、彼らは歌いながら飛び回るハチドリのように、花から花へと飛び移り続けるのだ。彼らが究極の音の蜜を絶え間なく追求していく中で、現時点で最高の蜜を共に味わわせてくれる、そんな作品が『格闘弦』である。
『格闘弦』
1.ハヌマン※カルロス・サンタナ・インスパイア曲
2.バスター・ヴードゥ※ジミ・ヘンドリックス インスパイア曲
3.トリヴェーニ※ル・トリオ・ジュブラン(イスラエルのスリー・ピースグループ)にインスパイアされた曲
4.ロゴス※アル・ディ・メオラ・インスパイア曲
5.サント・ドミンゴ※ジャズ・ピアニスト/作曲家ミッシェル・カミーロ・インスパイア曲
6.マスター・マキ※パコ・デ・ルシア・インスパイア曲
7.サヴィトゥリ※ジョン・マクラフリン、そしてザキール・フセインの70年代にブレークしたシャクティというインド音楽にインスパイアされた曲
8.オラ・セロ※アストル・ピアソラ(アルゼンチン・タンゴ、バンドネオンーヴァイオリン奏者)インスパイア曲
9.チャク・ムール※ホルヘ・レジェス(2009年2月に無くなったメキシコの作曲家)インスパイア曲
10.アトマン※ダイムバッグ・ダレル(元パンテラ、元ダメージプラン)インスパイア曲
11.イレヴン・イレヴン※ピンク・フロイド・インスパイア曲
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