LIVE MUSIC ism<KICK OFF EVENT DAY#1> 鹿野 淳レポ

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もっともっと素晴らしいアーティストやバンドがいる。もっともっと気軽に心を寄せられる音楽がここにある。もっともっとロックやポップと無邪気に遊べる場所がある――そんなことを目指して始まるマンスリー・ライヴイベント<IVE MUSIC ism>。

6月6日の土曜日よりSHIBUYA BOXXにて毎月開催されるそのイベントを祝したキックオフ・イベントが、品川ステラボールにて開催されました。このキックオフは5月16日と17日の2日間開催! まずは新進気鋭のバンドや、今のシーンの軸を担っているグレイトなバンドが8バンドも参加した16日をレポートします!

15時よりゾクゾクと駆けつけたキッズでしたが、16時の開演への関心はただひとつ――「誰がオープニングをやるの?」。その期待に応えたのが、JAPAN-狂撃-SPECIAL。新型なのか旧型なのか。まったくわけのわからない、でもそんなの関係ないんじゃ、ボケ~!とばかりなルックスとロックンロールの大洪水に、最初は口をアングリ開けていた参加者も、段々ハマってしまい、いつしか右手の拳が高く高く突き上げられ、最高のオープニングパーティーが繰り広げられました。ロックンロールはいつだって最高のビタミンであり、ロックの気合はいつだって最高のファンキーであり、なめんなよコラ~!は最高の愛のメッセージだって、狂撃(これで、くるうって読むんです)は豪快に教えてくれた。

今回はステージがふたつに分かれていて、ライヴとライヴの間に隙間がないという、まさにロック「エンドレスライヴ」。間髪いれずに次に登場したのは、華麗にして憂いが雪崩を起こすという椿屋四重奏。ヴォーカルの中田君はこの日までずっとソロのアンプラグドツアーに出ていたため、バンドとしてライヴをやるのは久しぶりだという、そのバンド内のエモーショナルが、整然としたエロティシズムと共にじわーっと伝わってくるライヴでした。ねっとりした歌とグルーヴが腰にクるライヴは、これぞ日本のブルースだという自信と確信に満ちていて、今のバンドの好調さを醸し出す完璧なステージを見せてくれました。

さて、サブステージ2組目はヴォーカリストが座ってライヴをかますという4ピースバンド、アメリカン・ショート・ヘアー。静かにして凛とした強さを見せるその姿はアートスクール出身のバンドのような感じでしたが、出てくる曲はとてもキャッチーかつストレンジなもので、歌えそうで歌えない、触れそうで触れない、踊れそうで途中でつまずく、的なアンバランスな独特のポップを持っている不思議なバンド。ジャズから歌謡曲から何から何までをロックという鍋に入れて、鮮度が高いままステージから「どうぞお食べ」と差し出すような姿勢は、きっとこれからのシーンに特別な磁場を作るんじゃないかという期待を感じさせてくれました。

どんどん進む、フロアの興奮もどんどん高まる。楽屋エリアではどんどん笑い声が増えていく、そしてスタッフはどんどんテンパる…目まぐるしいイベント独特の慌しさの中で登場したのは、PE'Z。SUZUMOKUというヴォーカリストを加えたユニットPE'ZMOKUがSUZUMOKUの突然の失踪(でも無事に帰ってきて、現在リハビリ中)によってツアー不能となり、そのツアーに「ごめんなさい、でもPE'Zは絶好調です。よかったら楽しんでください」とばかりに最高の「代行ツアー」を成功させてきたPE'Zだったが、さすが修羅場を乗り越えたバンドは岩よりも硬く花火よりも熱い! ホーン隊を中心とした素晴らしいインストバンドがたくさんいる日本のシーンですが、その中でも独特の「ジャズでもロックでも盆踊りでもない」PE’Z節を極め続ける、極東の島国発のクロスオーバー・ミュージックここにあり!な威風堂々とした見事な「満開ライヴ」でした。

メインステージが終わったかと思うと、身体を右に入れ替えて、そのまま「ロックニューカマーバンド」のロック集中砲火を浴びる――というノリに参加者も慣れてきた中で登場したのが、東京ウェストコースト「福生」出身の3ピースバンド:シスタージェット。ヴォーカルとドラマーが愛する女性を求め、「愛の戦い」を繰り広げた話など、歯にまったく衣を着せないMCも絶好調。人間は孤独だからこそ仲間を求め、儚いからこそ本当の愛を求め、そのために最高のビートとパーティーが必要なんだとロックがロールする――そんな音楽の魔法を知っているフレッシュなライヴであり、みんなの表情がどんどん幸福になっていくのが印象的なライヴ。ロックとラヴは最高のパートナーだって、シスタージェットは鳴らしていました。

さあ、メインステージからは「誰も表現できない、どこ行っても感じられない“荒野のイナズマ”が吹いてきました! そう、Vo&Gのセイジさんも復活し、見事復活を遂げた我らがギターウルフ、ここに降臨! 存在自体が「スタイル」であり「ソウル」であり「ハート」であり「ダイナマイト」である、世界最高レベルのオリジナリティを放つ3人は、この日もフルテン(どんなヴォリュームも全部10まで上げるほどのエネルギーを出すってこと)ライヴを全開でカマし、生き様をとくと見せ付けてくれました。人間は自分の潜在エネルギーのわずか3割しか外に出せていないとか、とかく言われますが、誰が決めたんだ、そんなつまんねーこと! 人間はこんなにもダイナミックかつエネルギッシュに生きていける幸せな生き物なんだってことをウルフ達はいつも教えてくれます。何で僕らはロックバンドを観ているだけで勇気と力が湧いてくるのか? その理由のすべてをこの日も鳴らしまくってくれた勇者、ギターウルフ。おい、どうもありがとう!!!

「長かったイベントももうすぐお終いです。最後まで楽しんでってください!」と丁寧なMCも冴えたジェッジ・ジョンソン。打ち込みと人力、哲学と解放、自己証明とあなたを思う気持ち、そしてロックとロックとダンスとロック。文学的な内向性までをもバキバキのダンスビートと取っ組ませ、精神の解放を願う気持ちを彼らならではのプログラムに変換して響かせるダンスロックは、ここ何年間の中で世界中で湧き上がっている「打ち込み+ロックバンド」という単純な構図では表せないナイーヴな世界を描いていきます。ジェッジ・ジョンソンを浴びていると、「狂気というのは、とことん自分を見詰め、その存在価値を全部世界に投げ出す覚悟の中から生まれてくるんだなあ」ということがよくわかる。今後、さらにシーンから大きく求められることが必至なバンドによって、この日のサブステージのファイナルは飾られたのでした。

そして本当の最後の最後に大トリとして登場したのがムック。変幻自在なパフォーマンスとサウンド。世界中をツアーで回り続け、ヨーロッパ各地には想像もできないほどのファンを抱えているバンドの意地と気合と優しさと豪快さが、すべて凝縮された圧巻のライヴでした。今回の「異種格闘技のようなロックイベントを華々しく開催したい」という趣旨を強く理解してくれたバンドならではの、ロック幻覚症状が何度も眩暈のように訪れるライヴは、何故このバンドが世界を狂わせ、泣かせ、そして愛し合わせてくれるのか?への見事な回答となっていました。最後まで盛り上がり続けた参加者のテンションもピークに達し、それぞれが勝手に盛り上がってはしゃぎながら、そんなみんなのエネルギーが時々シンクロしては大きな一体感を見せるという理想的な空気を醸し出す――そのフロアの熱量を浴びながら、嬉しそうにさらに過激に煽る4人の「様」、それこそが何よりもロックだったと思います。

こんなバンドとこんなバンドが一緒にやるイベントなんてあったっけ?という未体験のバンド合戦を目指したこの日、参加者のテンションによって、その思いは果たされたなあと主催一同、感じてます。遊びに来てくれたあなた、どうもありがとう! 新しいバンド、新しいエクスタシーをみんなに感じてもらうべく、これからもLIVE MUSIC ismは刺激的なイベントを開催し続けようと思っています。

楽しみにしながら、また、遊びに来てください!待ってるよ。


鹿野 淳(音楽雑誌MUSICA編集長)
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