増田勇一のライヴ日記 2009年3月8日(日)ハノイ・ロックス@新木場STUDIO COAST

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こんな不思議な気持ちで来日公演の開幕を迎えることもめずらしい。ハノイ・ロックスのフェアウェル・ツアーのことだ。

このきわめて稀有なロックンロール・バンドは、今回のジャパン・ツアー終了後、母国フィンランドはヘルシンキでの数公演を経て、自己史上2度目の解散をすることになる。あまり過去の歴史についてほじくり返すことはこの場ではしたくないが、最初の解散が結果的にはメンバーの死に起因するものだった事実は広く知られていることだろう。もちろんそれは、バンド存続を試みたうえでの苦渋の選択だった。つまり1985年当時のハノイ・ロックスは解散を“余儀なくされた”のである。

しかし今回は、事情が違う。結論から先に言ってしまうと、この夜のライヴを観て僕が感じたのは、解散しなければならない理由などひとつもないということ。それくらい素晴らしいステージだった。マイケル・モンロー(vo)とアンディ・マッコイ(g)の二枚看板はもちろんのこと、コニー・ブルーム(g)とアンディ“A.C.”クリステル(b)の“エレクトリック・ボーイズ組”もすっかり必要不可欠なメンバーとして溶け込んでいたし、新加入のドラマーについては正直なところ何の期待もしていなかったが、前任者よりもこのバンドには似合っているのではないかと思えた。つまり復活後のハノイ・ロックスとしては最強の布陣にして最高に充実した状態が成立しているということだ。

このラインナップでのライヴを初めて観た僕がそう感じたくらいなのだから、当のマイケルやアンディは、現在のハノイ・ロックスがとてもいい状態にあることを痛いほどよくわかっているはず。それでもなお彼ら自身が別々の道を歩むことを決めた、という事実はやっぱり軽くはない。ところがあまりにもライヴ自体が素晴らしいものだから、終焉へのカウントダウンが進んでいることなどいつのまにか忘れさせられてしまう。結果、本当は感傷的な気分に浸ることになっていたとしてもおかしくないはずのこのライヴで、僕は極上の高揚感と、ある種の爽快感を味わうことができた。

▲写真は先頃リリースされた2枚組レア・トラック集『リップド・オフ~レア・トラックス・アンド・デモ』のレザー・ブレスレット付きヴァージョン(この価格でこのクオリティはすごいかも!)と、会場で販売されている今回の日本公演のブックレット。筆者は前者については楽曲解説を書かせていただき、後者については編集を担当させていただいた。しかしこのツアー・ブック、写真も豊富なうえに読み応え充分で、自分で言うのもおかしいけども、お買い得です!
すでにこの東京初演の後、3月10日には福岡公演が行なわれており、僕がこの原稿を書いている3月11日には、彼らは大阪公演を迎えることになる。そして3月12日以降の公演スケジュールは以下の通り。

3月12日(木)名古屋・DIAMOND HALL
3月13日(金)川崎・CLUB CITTA’
3月15日(日)仙台・ZEPP SENDAI
3月16日(月)東京・赤坂BLITZ
◆チケット詳細&購入ページ

実を言うと、ハノイ・ロックスの公演についてはもう2本ほど観させていただく予定なので、詳しい演奏内容自体については、ネタバレを避ける意味でも今回はあまり書かずにおくことにする。続編レポートは、また改めて。

ただ、いわゆる真面目くさった“予習”をしなくても充分すぎるほど楽しめるライヴであることは言っておきたいし、これまでこのバンドを追い続けてきたファンにとって必見であるばかりじゃなく、「いつか観たい」と思っていた人たちにはこれが最初で最後のチャンスということになる。限られた時間を、とにかく一緒に楽しもうではないか。

増田勇一

◆iTunes Store ハノイ・ロックス(※iTunesが開きます)
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