増田勇一の『今月のヘヴィロテ(11月篇)』
11月も、待ち遠しかったものから「ホントに出ちゃうの?」というものまで、美味しい新譜がたくさんリリースされた。そんななか、僕の耳に静寂をもたらすことがなかったのが、以下の10作品である。このなかに2枚ほど、尋常ではない頻度で聴きまくっていたものが含まれていることを、読者には察していただけることだろう。
●DIR EN GREY『UROBOROS』
●ガンズ・アンド・ローゼズ『チャイニーズ・デモクラシー』
●ザ・ブロンクス『ザ・ブロンクスIII』
●イーグルス・オブ・デス・メタル『ハート・オン』
●ザ・キラーズ『デイ&エイジ』
●ニッケルバック『ダーク・ホース』
●グラスヴェガス『グラスヴェガス』
●エイモス・リー『真実をさがして』
●スレイヴス・トゥ・グラヴィティ『スキャター・ザ・クロウ』
●シンダー・ロード『スーパーヒューマン』
まずDIR EN GREYの『UROBOROS』とガンズ・アンド・ローゼズの『チャイニーズ・デモクラシー』については、本年度の私的ベスト・アルバム5枚、いや、3枚のなかに確実に入ることになる作品。11月は、この両作品に関する原稿執筆量も多かったため、必然的に耳にする頻度が高くなったというのもあるのだが、仮にそういった事情がなかったとしても、僕はこの2作品をほぼ交互に聴きまくることになっていただろう。両者はまるで性質の異なる作品だが、「初めて聴いた瞬間に衝撃が走り、しかも繰り返して聴くほどに深みにはまっていく」という点ではよく似ている。また、DIR EN GREYの「INCONVENIENT IDEAL」とガンズ・アンド・ローゼズの「プロスティテュート」(どちらの楽曲もアルバムの最後を飾っている)がもたらしてくれる余韻には、感覚的に通ずる部分がある。好きなもの同士を強引に関連づけようとしているわけではない。もっと単純な次元で、好きなバンドが、素直に「好きだ」と言えるようなアルバムを出してくれたことが嬉しいのだ。理由をあれこれ説明するまでもなく「好きだ」と言えること。これはとても幸福なことだ。
僕のなかでは上記2作品の存在があまりにも大きかった11月だが、他にも愛すべき作品との出会いは多々あった。「またまたセルフ・タイトルかよ!」と言いたくなるザ・ブロンクスの第3作(ちなみに3作連続で原題は『THE BRONX』なんである)で強烈なパンチを喰らった後には、ローリング・クレイドル(プロレス技なんだけども、わかるだろうか?)でもかけられたみたいなイーグルス・オブ・デス・メタルの酩酊感が心地好い。相変わらず実験精神の高いザ・キラーズの新作には、“80年代ニュー・ウェイヴ復興”とか“新世代グラム・ロック”といった定義づけをすることがアホらしくなってしまうような説得力を感じたし、マット・ラングの“味出しまくり”のプロデュースに、それ以上に濃い自分たちの味をぶつけてみせたニッケルバックの横綱相撲も見事。UKの新人バンドはあまり信じないことが多い僕のような人間でもグラスヴェガスの音は心地好く染み込んできたし、エイモス・リーの歌声にはかなり癒された気がする。そして日本人ベーシストを擁する英国の新鋭、スレイヴス・トゥ・グラヴィティのデビュー作が現代のグランジだとすれば、シンダー・ロードが体現するのは21世紀なりのメインストリーム型メタル。ストーン・テンプル・パイロッツもデフ・レパードも、今の世代の新しいバンドたちにとっては同様に“ルーツ”なのである。
さまざまな世代のロックが共存する現代。僕自身は、こうしたさまざまな音楽を今もストレートに「好きだ」と言えることが、やっぱり嬉しい。同時に、たとえばガンズ・アンド・ローゼズの過去の作品を聴いたことのない世代が、予備知識がない代わりに先入観とも無縁な耳と感性で接したときに『チャイニーズ・デモクラシー』をどう感じるのかには、とても興味がある。もちろんそれは、他のアーティストたちの作品についても同じことだ。是非そうした感想などもお寄せいただければ、と思う。
さて、上記10作品以外によく聴いたのは、P!NK、アル・クーパー、サテリコン(さて離婚、という縁起でもない変換は勘弁して欲しい)、コンスタンティンズ、それから“聴いた”というよりは“見た”と言うべきチープ・トリックの『at武道館 レガシー・エディション』といったところ。次回、12月リリース分で確実に名前を連ねることになるのは、D-A-DとThe DUST’N’BONEZ、ダイドかな。年末も、音楽的に食欲旺盛なまま突き進みたいところだ。
増田勇一
●DIR EN GREY『UROBOROS』
●ガンズ・アンド・ローゼズ『チャイニーズ・デモクラシー』
●ザ・ブロンクス『ザ・ブロンクスIII』
●イーグルス・オブ・デス・メタル『ハート・オン』
●ザ・キラーズ『デイ&エイジ』
●ニッケルバック『ダーク・ホース』
●グラスヴェガス『グラスヴェガス』
●エイモス・リー『真実をさがして』
●スレイヴス・トゥ・グラヴィティ『スキャター・ザ・クロウ』
●シンダー・ロード『スーパーヒューマン』
まずDIR EN GREYの『UROBOROS』とガンズ・アンド・ローゼズの『チャイニーズ・デモクラシー』については、本年度の私的ベスト・アルバム5枚、いや、3枚のなかに確実に入ることになる作品。11月は、この両作品に関する原稿執筆量も多かったため、必然的に耳にする頻度が高くなったというのもあるのだが、仮にそういった事情がなかったとしても、僕はこの2作品をほぼ交互に聴きまくることになっていただろう。両者はまるで性質の異なる作品だが、「初めて聴いた瞬間に衝撃が走り、しかも繰り返して聴くほどに深みにはまっていく」という点ではよく似ている。また、DIR EN GREYの「INCONVENIENT IDEAL」とガンズ・アンド・ローゼズの「プロスティテュート」(どちらの楽曲もアルバムの最後を飾っている)がもたらしてくれる余韻には、感覚的に通ずる部分がある。好きなもの同士を強引に関連づけようとしているわけではない。もっと単純な次元で、好きなバンドが、素直に「好きだ」と言えるようなアルバムを出してくれたことが嬉しいのだ。理由をあれこれ説明するまでもなく「好きだ」と言えること。これはとても幸福なことだ。
僕のなかでは上記2作品の存在があまりにも大きかった11月だが、他にも愛すべき作品との出会いは多々あった。「またまたセルフ・タイトルかよ!」と言いたくなるザ・ブロンクスの第3作(ちなみに3作連続で原題は『THE BRONX』なんである)で強烈なパンチを喰らった後には、ローリング・クレイドル(プロレス技なんだけども、わかるだろうか?)でもかけられたみたいなイーグルス・オブ・デス・メタルの酩酊感が心地好い。相変わらず実験精神の高いザ・キラーズの新作には、“80年代ニュー・ウェイヴ復興”とか“新世代グラム・ロック”といった定義づけをすることがアホらしくなってしまうような説得力を感じたし、マット・ラングの“味出しまくり”のプロデュースに、それ以上に濃い自分たちの味をぶつけてみせたニッケルバックの横綱相撲も見事。UKの新人バンドはあまり信じないことが多い僕のような人間でもグラスヴェガスの音は心地好く染み込んできたし、エイモス・リーの歌声にはかなり癒された気がする。そして日本人ベーシストを擁する英国の新鋭、スレイヴス・トゥ・グラヴィティのデビュー作が現代のグランジだとすれば、シンダー・ロードが体現するのは21世紀なりのメインストリーム型メタル。ストーン・テンプル・パイロッツもデフ・レパードも、今の世代の新しいバンドたちにとっては同様に“ルーツ”なのである。
さまざまな世代のロックが共存する現代。僕自身は、こうしたさまざまな音楽を今もストレートに「好きだ」と言えることが、やっぱり嬉しい。同時に、たとえばガンズ・アンド・ローゼズの過去の作品を聴いたことのない世代が、予備知識がない代わりに先入観とも無縁な耳と感性で接したときに『チャイニーズ・デモクラシー』をどう感じるのかには、とても興味がある。もちろんそれは、他のアーティストたちの作品についても同じことだ。是非そうした感想などもお寄せいただければ、と思う。
さて、上記10作品以外によく聴いたのは、P!NK、アル・クーパー、サテリコン(さて離婚、という縁起でもない変換は勘弁して欲しい)、コンスタンティンズ、それから“聴いた”というよりは“見た”と言うべきチープ・トリックの『at武道館 レガシー・エディション』といったところ。次回、12月リリース分で確実に名前を連ねることになるのは、D-A-DとThe DUST’N’BONEZ、ダイドかな。年末も、音楽的に食欲旺盛なまま突き進みたいところだ。
増田勇一
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