カイザー・チーフスとポリシックスの好演レポ in ロンドン

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ポリシックスをサポートに迎えたカイザー・チーフスのロンドン公演が、4月21日(金)、8,000人収容のアレクサンドラ・パレスにて行なわれた。今回のアリーナ・ツアーはカイザーズにとって、これまでで最大規模のもの。そのサポートに抜擢するとは、彼らのポリシックスに対する期待、そして信頼感の大きさがうかがえる。

この数年、精力的にUKツアーを行なっているポリシックスは、着実にその知名度/人気を高めてきたが、今回はカイザーズ目当てのオーディエンスを前にしての演奏。早い時間ではあったが、会場にはすでに2,000人近くのお客さんが集まっている。果たしてこの中の何人がポリシックスを知っているのだろうか。カイザーズとは別のサウンド、そして彼らのユニークなパフォーマンスにどんな反応を示すのか、楽しみだ。

ライトが落ちるわけでも、アナウンスがあるわけでもなく、何の前触れもなしにステージに登場したポリシックス。赤いつなぎにサングラスという謎の日本人の出現にオーディエンスは引くかとも思いきや、拍手喝さいで彼らを歓迎した。会場の後方にいた人たちもステージ近くへ駆け寄る。バンドは控えめな登場とはうって変わり、「Coelakanth Is Android」で勢い良くショウをスタートした。

フロントマンのハヤシは、いつもと同じビッグ・アクションでギターをかき鳴らす。これまでのクラブ公演では、アクション、サウンドとも収まりきれない感があったが、アレクサンドラ・パレスの大きなステージにはピッタリ、さまになっている。UKでの場数を踏んできた4人のパフォーマンスは堂々としており、大会場にも見知らぬ観客にも動じることなく自分たちの世界を築いていく。すでに1曲目から、いままでのロンドン公演の中でもベストなものになるだろうと確信できた。

その熱演は、ポリシックス初体験のオーディエンスにも十分伝わったようだ。「Kaja Kaja Goo」「New Wave Jacket」と演奏が続くにつれ客席からの拍手はどんどん大きくなっていく。4曲目の「Peach Pie On The Beach」では、警備員に止められてしまったものの、ボーイフレンドに肩車をされて盛り上がる女の子も登場。続く「I My Me Mine」ではスタンピングをする人が続出。観客は手拍子で彼らのパフォーマンスを受け入れた。

これは、サポート・バンドに対しクールな反応を示しがちなロンドンのオーディエンスには珍しいこと。6曲目の「Mr. Psycho Psycho」は大喝采で迎えられ、その後、どのトラックにおいても客席から手拍子が消えることはなかった。最後にステージに倒れこんだハヤシ。オーディエンスは惜しみない拍手を送った。

続くグレアム・コクソンのパフォーマンスが終わった頃には、会場は満杯に。下は小学生から、上はそのおじいちゃん、おばあちゃんとも見える初老の人たちまで、さまざまな年齢層が集まった。キャッチーな曲調だけでなく、リッキー・ウィルソンのオトボケ・キャラが人気を博しているカイザー・チーフス。この客層を見ると、彼らがすっかり英国の“お茶の間”に浸透していることがわかる。

9時半にライトが落ちると、会場は大興奮。赤い幕が開き、ステージに姿を現したメンバーは、しばらく感慨深そうに大会場いっぱいのオーディエンスを見渡した後、「Everyday I Love You Less And Less」でパフォーマンスをスタート。観客は1曲目から大合唱となった。この客席からの歌声はショウの最後まで続き、「Na Na Na Na Naa」や「I Predict A Riot」といったヒット曲ではウィルソンのヴォーカルが聞こえないほどの熱唱ぶり。クイーンやオアシスも“一緒に歌える”コンサートに違いないが、カイザーズの場合、これに“一緒に踊れる”も加わる。ファンはステージのウィルソン同様、ジャンピングで盛り上がる。そのウィルソンは、大ステージの端から端までを駆け回り、始終エネルギッシュな動きをみせた。「Caroline, Yes」ではヴォーカルは聴こえるのにステージに姿が見えないと思ったら、突然、会場後方のPAスタンドから登場。1時間半の間、動きっぱなしだ。このツアーが始まってから、ウィルソンの体重は落ちたに違いない。

大きい会場ではあるが、ファンをステージに上げバック・ヴォーカルを歌わせたり、ウィルソンが客席とステージを区切るバリアの上に乗って歌うなど、オーディエンスとの一体感が感じられるコンサートだった。年齢制限のある会場では、また違ったパフォーマンスになるのだろうが、この夜は子供から大人まで楽しめる国民的エンターテイナーの姿を見せてくれた。
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