【インタビュー】ギタリストのSAKI、初ソロツアー開催前に語る15年の歩みと決意「ギターヒロイン像を突き詰めたい」

2025.07.04 18:00

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ギタリストのSAKIが本格的にソロ活動を始動し、今秋、東名阪にて自身初のソロツアー<SAKI 1st Tour「Autumn Rain」>を開催する。

2010年、mixxでメジャーデビューを果たしたSAKIが、今年2025年10月に15周年を迎える。10代からプロギタリストとして活動を始めたSAKIは、アグレッシヴな速弾きに象徴される煽情的なギタープレイを武器に、Mary’s Blood、NEMOPHILA、AMAHIRUなど屈指のバンドでギタリストとしてのアイデンティティを確立してきた。2023年からはL’Arc-en-Cielのリーダーtetsuya率いるLike-an-Angelに加入したことで、より幅広い音楽リスナーにその存在を知らしめている。

そしてアニバーサリーイヤーとなる2025年、ソロアーティストとして踏み出した新たな一歩。BARKSでは、音楽との出会いからバンド遍歴、ソロ作品『GERMINANS EP』、そして初のソロツアー<SAKI 1st Tour「Autumn Rain」>への意気込みまで、深くじっくりと話を訊いた。15,000字を超えるロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■ルークさん、エースさん、ジェイルさん
■ギタリスト全員のモデルを持っています

──2025年10月にデビュー15周年を迎えるということで。少し早いですが、おめでとうございます。

SAKI:ありがとうございます。

──様々なプロジェクトで経て、15周年目前から本格的にソロ活動を開始されたわけですが、今はどんな心境ですか?

SAKI:気がついたら15年経っていたという感じですね。2024年にバンドから離れることになって。当初は離れる予定ではなかったんですけど、そういう話になりまして。2024年はそういうこともあって、少しお休みを取りつつ、いただいた仕事を受けつつ、自分を整えようかなみたいな時期で。自分の音楽を作るということに対しては、そこまで前向きにはなれなかったんですね。だけと、今年に入ってソロ活動を活発化させようと、気持ちが上向きになっています。

──ソロギタリストとして邁進していこうと。

SAKI:これまで掛け持ちをしつつ、何かしらのバンドにずっと属していたので、完全なソロ活動は初めてのことなんです。NEMOPHILAをやめてからは、アイドルさんとかがいる中で、ギタリストとしての枠をもらって演奏することもあったり。そういう、これまで自分がいたところとは違うフィールドのお仕事をいただいたことで、“やっぱり自分はハードロック/ヘヴィメタルに根差している人間なんだな”という自分のルーツを見つめ直す機会にもなったんですね。私はあまり人前で歌を歌うことに自信がないので(笑)、ソロ活動を本格始動するにあたって、ギターだけで聴いてもらうのはどういうふうにしたらいいのかな?とか、すごく考えるきっかけになりましたね。

──今回のインタビューでは、そういう心境に至ったSAKIさんの道のりについてもお伺いしたいと思います。まず、ギターに触れたのはクラシックギターが最初だったそうですが。

SAKI:楽器でいえば、小さい頃からピアノを弾いていて、小中学校では吹奏楽部に入っていました。

──ギターを始める前から音楽的な下地があったんですね。

SAKI:はい。中学校にはクラシックギター部があったんですが、女子部員が私の友だち一人しかいなかったんですね。それで、「合宿に行くのに女子ひとりだと気が引けちゃうから、一緒に来てほしい」と言われて。合宿の人数合わせでクラシックギター部に入ったのが、ギターの始まりです(笑)。

──ガットギターでスリーフィンガーですか?

SAKI:入部して初めてガットギターに触ったので、たしか最初は、スピッツの「空も飛べるはず」のメロディーを弾いたのかな。高学年になって難しいことができるようになってくると「禁じられた遊び」とか、譜面を見ながらスリーフィンガーでポロポロ弾くような練習曲になるんですけど、顧問の先生がサザンオールスターズとビートルズが好きで、最初のうちはそういう有名な曲を演奏したり。

──ポップスを入口としてギターに慣れていくような?

SAKI:ポップスの主旋律とハモりとベース音みたいな感じにパートを分けて、みんなで分担しつつ合奏するみたいな感じでしたね。今思えば、クリックもないのに、よくみんなで合わせられていたなって思います(笑)。

──クラシックギター部をきっかけに、ギターを弾く楽しみを覚えていったんですか?

SAKI:楽しくなって続けてて。そうしたらあるとき、テレビ番組で聖飢魔IIのミサ映像が流れていたんです。それを見てたら“弾いてみたい”と思って、それからエレキギターを始めた感じです。

──中高生当時のSAKIさんが、聖飢魔IIのどこに魅力を感じたのでしょう?

SAKI:たしか2005年に聖飢魔IIが期間限定再集結したときに放送していたNHKの特集だったんですけど、それまでデーモン閣下はクイズ番組とかでよく見るタレントの方だと思っていたんです。でもその番組を拝見したら、すごく歌がお上手だし、面白いし、…っていうかみんな顔が白いと思って(笑)。

──クラスメートのほとんどは2005年当時のヒットチャートを聴いていたと思うんですが、聖飢魔IIの魅力を共有する友達はました?

SAKI:いや、いなかったですね。一人でYouTubeとかでどんどん調べていきながら、“この曲を弾けるようになりたい”と思うようになっていったんです。ちょうどその頃、聖飢魔IIのツアーに合わせて昔のDVDが再発されていたので、いっぱい買っていっぱい観てました。

──エレキギター初心者が聖飢魔IIのコピーって、いきなりハードルが高いですよね。どんなふうに練習してギターの技術を身につけたんですか?

SAKI:ジェイル大橋(代官)さん、エース清水(長官)さん、ルーク篁(参謀)さん、それぞれの教則DVDが出ていたので、全部買って。中高生の夏休み期間中に教則DVDを見ながら一生懸命練習してた感じですね。

──構成員(メンバー)の全ギタリストをフルコピーしようとはすごい。その当時、最初に所有したエレキギターを覚えてますか?

SAKI:弟の同級生のお父さんにギターマニアの方がいて、「エレキを始めたい」と言ったら、一式譲ってくれたんです。Charさんモデルのムスタングもどきみたいなギターと、エフェクターがいっぱい入ってるミニアンプを一緒にいただいて、最初はそれで練習してました。それからたぶん数ヵ月とか1年ぐらい経ってから、自分でKillerのギターを買いました。

──いきなりKiller Guitarsですか!?

SAKI:そうなんです(笑)。聖飢魔IIのツアー後にESPのショップでフェアをやっていて、ルーク篁さんサイン入りのKiller製ギターを販売していたんです。じゃあそれを買おうと。

──中高生にしては大きな買い物ですね。

SAKI:そうですね。最初に買ったのはルーク篁さんモデルのギターなんですけど、ギタリストとして皆さんが大好きなので、結局その後、Caparisonのエース清水さんモデルAngelus-Ace、ARIA PRO IIのジェイル大橋さんモデルRS-Jailも買ったので、ギタリスト全員のモデルを持っているんです(笑)。

──筋金入りの信者ですね。

SAKI:そうですね、たしかに信者ですね(笑)。

──先ほど弟さんのお話がありましたが、弟さんとプロレスを観に行ったこともロックに触れるきっかけになったとか。

SAKI:弟がWWE(世界最大のプロレス団体)が好きで。その頃、夜中にフジテレビで放送していた番組を観たり、スカパーでペーパービュー(PPV/特番)を毎月買って観たり。日本公演があったときには弟と一緒にサインボードを作って会場に観に行ったぐらい、私もWWEにハマっていたんです。この前、BABYMETALさんもやっていましたけど、WWEのPPVってメタルバンドが毎回テーマ曲を担当するんですね。当時、そういう入場テーマ曲とかが入ったCDも出ていて、それを聴いてカッコいいなと思ってました。

──お気に入りは?

SAKI:特にHHHのチーム“エボリューション”が好きで。HHHのテーマ曲だったモーターヘッドが好きになって、そこからマリリン・マンソンやメタリカ、クリス・ジェリコがやっていたフォジーっていうバンドを聴いたりしていたので、洋楽はWWEが入り口ですね。ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタインとかトリヴィアムも出てきたぐらいの時期で。そういうバンドが載ってる雑誌『ヤングギター』も読むようになったんです。

──SAKIさんの音楽背景には、聖飢魔IIとWWE経由の洋楽メタル、という2軸があったんですね。

SAKI:もうひとつ、同時期ぐらいにクイーンも好きになって。ポール・ロジャースがボーカルだったクイーン+ポール・ロジャースの時期だったので、そこから遡って、フリーとかバッド・カンパニーを聴いたりもしました。基本的には、洋楽ロック/メタルを聴いていて、邦楽は聖飢魔IIをいっぱい聴く…みたいな感じでしたね。それと、構成員の方の好きな音楽や影響を受けた音楽も聴いてたので、ディープ・パープルやロバート・ジョンソンとかブルース系も聴いたり。

──ギタリストとしては、教則DVDを観ながら聖飢魔IIの曲をコピーしていたとのことですが、他にはどんな練習を重ねたのでしょうか。

SAKI:最初にガットギターの指弾きから入ったので、エレキギターのピック弾きの方法があまりわからなかったというか。実は最初の頃、ピッキングに苦手意識を持っていたんですね。

──フルピッキングで弾き切るプレイスタイルがSAKIさんの特徴だと思いますが。

SAKI:今はそうですね。エレキは人に習わなかったので、我流っぽい感じでフルピッキングを多用する奏法になったのかな。Killerを使ってるギタリストにはフルピッキングみたいなスタイルの方が多いイメージがあって。高崎晃さんもルーク篁さんもそうですし。なので、意識していたわけではないですけど、好きなことをやっていたら、そういうスタイルになっていった感じです。

──では、中学や高校時代にバンド経験は?

SAKI:学校で楽器をやってる女子ってあんまりいなかったんですけど、「一緒にやりたい」って言ってくれた子が高校にいて。その子と「じゃあ文化祭でやりましょう」みたいな話になったんです。そうしたら文化祭の少し前に、エース清水さんのユニットface to aceがゲスト審査員の楽器店主催イベントがあって、そのイベントの最後にface to aceがライヴをやることを知ったんです。「それなら高校生でも参加できるから、私たちも出ようよ」って、半ば無理やり出演したのが最初に人前でやったライヴです。

──いわゆるオーディションイベントですよね。そのとき演奏した曲は?

SAKI:そもそも高校の文化祭でやるつもりだった曲なので、ボーカルの子が好きなアヴリル・ラヴィーン、東京事変、GO!GO!7188のコピーを演奏しました。家では聖飢魔IIやクイーンの曲を練習していたんですけどね(笑)。で、イベントにはせっかくエースさんがいらっしゃるので、“笑ってくれたらいいな”と思って、聖飢魔IIがいつもミサの最初にやるインスト曲「創世紀」を演奏してから、アヴリルの「スケーター・ボーイ(Sk8er Boi)」につなげたんですね。

──高校生ながら見事なツカミです(笑)。

SAKI:実際、エース清水さんに笑っていただいたんですよ(笑)。

──人前でやる楽しさも感じましたか?

SAKI:“間違えないように弾かなきゃ”みたいな気持ちが最初は強かったので、楽しい!っていうのはあんまりなかったかもしれません。でもやっぱり、“ライヴはやったほうが楽しいものなんだろうな”って、だんだん慣れていったみたいな感じですかね。

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