【速レポ】<SATANIC CARNIVAL>、ENTH「どこだろうが、俺らが一番ヤベえことを証明するだけ」

前説としてSATAN STAGEに上がったジョージ・ウィリアムズが「怪我のないように楽しんでくださいね。周りをぐるっと見渡してください。ここにいる人、みんな仲間です。仲間ですよ!」と叫んでスタートした<SATANIC CARNIVAL 2025>。いたってシンプルな開会宣言だが、サタニックを遊び尽くすことにおいては、この精神がすべてなのではないかと思う。誰かが定めたルールではなく「隣の人間を助ける」という至極当たり前のモラルの連鎖によって形成されて来たストリートの遊び場。構造に呑まれない個々の存在を表明する旗印として生まれてきたパンクロックやハードコアといった音楽だからこそ、その音楽は個人の営みによって成立しているストリートカルチャーと融和して「人間に線を引かない」という精神もまた持ち合わせているわけだが、だからこそ「ラウドミュージックの居場所」を掲げる<SATANIC CARNIVAL>の背骨は、自治の精神であり、自分の意志でここに来たあなたと君とお前への信頼なのである。
いきなりSATANICについて勝手に語ってしまって恐縮だが、それもこれも、SATAN STAGEの号砲を鳴らしたENTHの音楽に直結するものだからである。

メロディックパンクを骨子にするバンドとしてスタートし、次第にパンクやメロディックの定型から解き放たれ、街と友達と拳、日々を生きる上での葛藤と涙、だからこそ笑顔を求めて仲間と交わる瞬間、あとはちょっとの二日酔いを音楽に翻訳することで、より自由なミクスチャー感覚を発揮して覚醒してきたのがENTHである。彼らの音楽からは、ルールなき秩序、ピースのための暴動、ひとつになるのではなく一人で立つためのユナイトといった、一見矛盾しているが超本質的なワードが聴こえてくる。ということでSATANICの1番打者としてこの上ないバンドであり、そもそもアルバム『ENTH』以降の彼らは出会って4秒で暴発みたいなライヴを繰り広げていて、それゆえのSATAN STAGE初登場と相成ったのだと思う。
ENTHお馴染みの、酒便を片手に持っての登壇。バニーボーイを交えてのだいぽん(ダト・ダト・カイキ・カイキ)とナオキによる乾杯、延々♪ENTH、ボンバイエ♪がリフレインするSE。朝でもお構いなくパーティーをおっぱじめる3人だが、「おはようございまーす。(見渡して)すげぇなあ。……やりますか!」のひと言でドーンと音が鳴った瞬間から、享楽的なパーティーとはまったく違う、あらゆるバウンダリーを突破するための狂宴の開始である。


冒頭を飾った「SLEEPWALK」は、街を行く歩調に合うビートに、気怠いフリして目つきは鋭いリフが飛んでくる1曲。朝イチということでチョイスされたオープニングナンバーのような気もするが、その一打一音は「SLEEPWALK=夢遊病」どころか、「行け!」としか言っていない。立て続けに「ムーンレイカー」を放ち、<君の笑顔が忘れられなくて/死に様を決めた>という一節で生きるスタンスを宣言して見せる。「ムーンレイカー」は一見ラヴソングのようなリリックだが、それ以上に、誰と共に生きて、誰を想いながら死んでいくかという生き方を突き立てる歌である。好きなものを手放さず、誰に何と言われようと自分の人生は自分のものだ。言葉にすればたったそれだけだが、言うまでもなく、それは我々が生きる上でのすべてである。
「何がカッコいいかをわかってるヤツらが集まってくれてると思ってるから、一緒にこの景色を作れて嬉しいです。……今はケータイひとつでインスタントに正解を見れちゃうよね。失敗したくねえから、みんな正解を求めてると思う。でも俺は、失敗たくさんしていいと思ってて。カッコつかねえとか、いちいちそんなこと気にしてんじゃねえよって思うんだよ。スカすことなんて、誰でもできるからね。スカすよりも、もっと燃えろよ。燃えろよ! クソがよ、もっとがむしゃらに生きてみろよ。何が正しいかなんて、ケータイに訊くなよ。AIに訊くなよ。何が正しいかは自分で選んでいんだよ。多数決じゃなくてさ。……俺らがここに立ててるのが、その証明だろ!」。
これは、ライヴ後半にだいぽんが言い放った言葉である。好きなものを好きと言って、大切な人をぎゅっと抱き締めて、その本当の心だけを人生と呼ぶ。そんな彼らのスタンスが端的に表れた名MCだと思うし、何より、その言葉の端々に滲む切実さは音に宿ってとんでもない熱の渦を生み出している。「SCUM DOGS FART」ではギュイギュイと鳴るリフがリズムとして機能して、ヘヴィなビートが腹を殴って、腹にクる音に乗ってピットが揺れる揺れる。


初めて<SATANIC CARNIVAL>に誘われた時に、その喜びのテンションで完成させたという「HAHA」では、モッシュパート、スカ、ビートダウンを交錯させながら名前のないダンスを巻き起こす。さらに「SATAN STAGEに出られて嬉しいんだけど、SATANだろうがEVILだろうが、どこのライヴハウスだろうが、俺らが一番ヤベえことを証明するだけ」という言葉からぶっ放した「”EN”」ではステージ上のLEDに爆炎が上がり、完全なるグチャグチャが完成。ルールなき秩序をまさに体現するライヴである。そうそう、この「”EN”」で歌われる《散り際に光る》という言葉もまた、「ムーンレイカー」を締める《死に様を決めた》という宣言に通ずるものであり、ENTHというバンドのスタンスを端的に宣言するものだ。全力で生きて全力で死ぬ真っ向勝負の生き方を示した歌が「一番ヤベえ」という事実こそ、ENTHが体ではなく心に刺さる理由だと言っていいだろう。見渡す限りのライヴハウスフリークと共に、最高の遊びを繰り広げるだけ。だが、なぜ彼らが遊んで飲んで笑って大暴れするのかと言えば、誰もが《流した涙 いま光れ》(「TEARS」)という願いを抱いているからだ。
「新しい時代作ろうぜ」と堂々と言い放って鳴らしたのは「BLESS」。最後の最後に最も獰猛で爆速なナンバーを投下することもまた、ENTHからのメッセージだ──と感じてしまうくらいには凄いライヴだった。人生はあっという間。楽しい時間もつかの間。だからこそ、この2日間を全力で遊び、生きていることを実感しまくれ。そういうメッセージ。そういうGOサインである。時間が余ったとのことで追加された2曲でも、だいぽんは「行け!」と叫んでいた。
ということで、遠慮なく。サタニック、今年も行きましょう!

取材・文◎矢島大地
撮影◎半田安政
■セットリスト
1. SLEEPWALK2. ムーンレイカー
3. “TH”
4. SCUM DOGS FART
5. HAHA
6. “EN”
7. WHATEVER
8. Urge
9. Gentleman Kill
10. TEARS
11. BLESS
12. Will
13. Get Started Together
■<SATANIC CARNIVAL 2025>
6月14日(土) 千葉・幕張メッセ国際展示場9-11
6月15日(日) 千葉・幕張メッセ国際展示場9-11
◯物販 / FOOD AREA
・14日 open9:30 / 15日 open8:45
◯ライブ観覧エリア
・14日 開場10:30 / 開演11:30 / 終演21:10(予定)
・15日 開場09:45 / 開演10:45 / 終演20:30(予定)
▼6月14日(土)出演者
04 Limited Sazabys / 10-FEET / The BONEZ / coldrain / ザ・クロマニヨンズ / ENTH / ハルカミライ / HERO COMPLEX / 花冷え。 / HAWAIIAN6 / Ken Yokoyama / MAN WITH A MISSION / Maki / OVER ARM THROW / サバシスター / SHADOWS / SHANK / SPARK!!SOUND!!SHOW!! / STOMPIN’ BIRD / TOTALFAT / 四星球 / [O.A.]トップシークレットマン
▼6月15日(日)出演者
Age Factory / バックドロップシンデレラ / Crystal Lake / Dizzy Sunfist / FACT / Fear, and Loathing in Las Vegas / FOMARE / THE FOREVER YOUNG / G-FREAK FACTORY / キュウソネコカミ / HEY-SMITH / HIKAGE / マキシマム ザ ホルモン / NOISEMAKER / RIZE / ROTTENGRAFFTY / See You Smile / Suspended 4th / View From The Soyuz / w.o.d. / ヤバイTシャツ屋さん
▶チケット:SOLD OUT
関連サイト
◆BARKS内<SATANIC CARNIVAL 2025>特集
◆<SATANIC CARNIVAL> オフィシャルサイト
◆PIZZA OF DEATH オフィシャルサイト







