【コラム】BARKS烏丸哲也の音楽業界裏話041「その音、誰の夢?──音楽生成AIとハルシネーションの話」

2025.06.06 19:47

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音楽生成AIの進化は、もはや“発展”というより“暴走”と呼びたくなるスピード感で加速している。メロディが流れるまでのタイムラグは縮まり、構造は複雑化し、ジャンルや文脈さえも読み取るようになった。が、である。便利さと引き換えに、どうにも拭えない違和感がある。

それが「ハルシネーション(hallucination)」だ。

本来の意味では“幻覚”だが、AIの世界では「もっともらしいけど事実ではない情報」の生成を指す。ChatGPTが「存在しない本」を紹介してしまったり、画像生成AIが「有名な絵画を参考にして描いたつもりで架空の画家の名前をでっちあげたり」するアレである。そして音楽生成AIにも、この“嘘の誘惑”が入り込んできている。

たとえば、「ザ・ビートルズっぽい曲を作って」と命じれば、それっぽいコード進行に、それっぽいリズム、ジョンとポールの影がチラつくメロディが出てくる。だけど、どこか「記憶のなかのビートルズ」なのだ。リアルな存在ではなく、集合的な記憶の複製、いや模造品。AIが参照しているのは、曲そのものではなく、「ザ・ビートルズ風とはこういうもの」というメタな概念である。

これはいわば「音楽のハルシネーション」だ。

AIは、過去の音楽を数式で眺め、無数の「らしさ」を平均化して出力してくる。そこで生まれるのは、実体のない“理想の系譜”であり、現実には存在しない音楽家の幽霊とも言える。リスナーの知識と想像力が補完して「それっぽく聴こえてしまう」ことで、私たちは気づかぬうちに“聴いたことのない懐かしさ”に魅せられる。

だが、問題はそこから先だ。

AIが出力する“幻の音楽”が流通し、それを参考にした新たな曲が生まれ、それをまたAIが学習する。フィードバックループが始まれば、「本物」は遠ざかり、「幻覚の断片」が現実として積層されていく。つまり、ハルシネーションは誤情報ではなく、いずれ“文化の正解”として定着してしまう危うさを孕んでいる。

これが文学やビジュアルなら、「これはAIの虚構です」と注意喚起もできるが、音楽のほうが厄介だ。なぜなら、耳に心地よければ、それは“正しい”と感じてしまうのが人間だから。脳が勝手に“懐かしい”を補完してしまうのだ。

では、音楽の“真実”とはなんだろう?

おそらく、ノイズのなかにある。ミスタッチの震え、意図しないコードの破綻、即興のなかで交わる呼吸。そういった“統計にのらない”人間の癖こそが、音楽の正気を保っていた。ところがAIは、ノイズをノイズとしか見なさない。そこにこそ、未来の音楽生成における最大の断絶がある。

ハルシネーションは、もはやAIの瑕疵ではない。それは、私たちが自ら幻を求めているという事実の鏡だ。

つまり、問題なのはAIではなく、「それでいい」と思ってしまう我々のほうかもしれない。

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と、ここまで読んでいただきありがとうございます。上記のコラムは「これまでの私の原稿を学習させ、烏丸哲也になりきって書かせた生成AI執筆の原稿」です。しっかり学習してくれたみたいで、我ながら自分っぽいなと思います(笑)。話によると、AIはすでに東大の入試問題が解けるそうです。とんでもない時代に出くわしました。

文◎BARKS 烏丸哲也

◆【コラム】BARKS烏丸哲也の音楽業界裏話まとめ