【インタビュー】松本孝弘が語る、TMG、ソロ、B’z…とどまることのない創造力「僕はずっと動いているし、そういう日々が好きなんですよ」

■時代が変わっても自身は変わることがない
■稲葉君とそんな話もしていて
──魅力的という意味では、映像作品『TMG LIVE 2024 -Still Dodging The Bullet-』には、ツアーやレコーディングのドキュメントを収めたディスクが付属されていることも見逃せません。ドキュメントに関しては制作の裏側を観ることのできる貴重な仕上がりですが、松本さんからの映像へのリクエストもあったのでしょうか?
松本:いや、ドキュメントの構成に関して僕は口を出していなくて。そのままのTMGを映し出してくれたよね。
──メンバーの皆さんの素顔が伝わるようですごく楽しめます。
松本:ライブの当日リハにしても、レコーディングにしても、雰囲気が明るいでしょう?
──はい。松本さんとメンバーは普通に英語でやり取りされていて、同じギャグを繰り返すメンバーに「もう、いいよ!」って突っ込むシーンには笑いました(笑)。
松本:ははははは! メンバー同士すごく仲がいいし、今回、マット(・ソーラム / Dr / Guns N’ Roses)が参加してくれたのも良かったね。もちろんドラムプレイはすごいし、なによりもパーソナリティーがすごくいいんですよ。
──松本さんとマットさんとのつながりは?
松本:マットは’90年代、B’zのデモ創りを手伝ってもらったことがあるんだよね。だから25~26年ぶりくらいに会ったんだけど、昔と変わらずナイスガイで。今回、マットが参加してくれたのは、ジャックから「マット・ソーラムはどうだろう?」という提案があったんだよね。

──B’zのギター、MR.BIGのボーカル、Night Rangerのベース&ボーカル、Guns N’ Rosesのドラムが集結したバンドって、とんでもないです。ライブやドキュメントを見させていただいて、ドリームバンドらしい演奏力や風格はもちろん、メンバー間の穏やかなやり取りにロックバンドとしての余裕を感じました。
松本:本当に雰囲気が良かったんだよね。ジャックはロックスターだし(笑)。
──ジャックさんは若々しいですし、当然歌唱力も高い。ライブの時にベースを弾くのを結構やめてしまうというロックな姿勢もカッコいいです。
松本:でも、一緒に演奏している僕らも本当に気づいてないんだよ。Night Rangerのライブ映像を見ると、“弾いてないじゃん!?”みたいなところがあるじゃない?
──はい、ありますね(笑)。
松本:TMGでもそれをやっているんだけど、全然音に違和感がない。ベースを一発ドーン!と鳴らして歌っているんだけど、音がスカスカになった感じが全くしない。これはすごいワザだなと思ったね。
──ジャックさんは、その辺りもちゃんと計算して弾かれているんですね。
松本:そうだと思うよ。
──もうひとつ、ドキュメント映像の素晴らしいところは、お客さんの姿がたくさん捉えられていることで。
松本:ツアーに来てくれた方々がこの映像を見るたびに思い出してくれるといいですよね。ドキュメントも楽しんでもらえると嬉しいです。
──自分が映っている/映っていないに関係なく、気持ちの高鳴りが蘇ることは間違いないです。
松本:そうだといいですね。
──そして、松本さんが手掛けた阪神タイガース90周年記念公式テーマソング「Tiger’s Eye」が4月9日に配信リリースされました。楽曲提供のオファーがきた時は、どんなことを思われましたか?
松本:僕はもともと大阪出身だから、子供の頃は阪神タイガースのユニフォームを着て野球をやっていたんです。あのストライプは憧れだったし、今回いただいたお話はすごく嬉しくて、本当に光栄なことだなと思いました。
──では「Tiger’s Eye」のサウンド&プレイについてうかがいますが、この曲はどんなふうに作られたのでしょう?
松本:先にリフを創った…というか、できたんですよね。メインリフが頭の中で鳴って。
──楽曲のテーマは“虎視眈々と勝利を狙う虎の目をイメージした”とのことですが、ギターリフがすごくカッコいいです。
松本:自分で言うのもなんだけど、カッコいいですよね(笑)。いわゆるコーラスセクションは、リフとコーラスのユニゾンじゃないですか。
──Aメロのフックを効かせたメロディーも魅力的ですし、“Go! Tigers! Go! Go!”というコーラスバックのちょっとオリエンタルなリフも絶妙です。
松本:その部分はリフが先にあって、“ここにコーラスを入れよう”と思ったんですよね。
──「Tiger’s Eye」は導入の穏やかなセクションやギターソロもハイクオリティで、厳選されたものが詰め込まれているという印象です。ゆったりしたフレージングから入って、松本さんならではの滑らかな速弾きに移り、ハーモニーで締めるという流れの良さが光っています。
松本:うん。いつもどおり楽曲に呼ばれたソロを弾いた感じかな。
──レコーディングでは、アンプシミュレーターやプロファイリングではなく、ヘッドとキャビネットの実機を鳴らしているのでしょうか?
松本:そう、シミュレーターは使わない。僕は用意した本物のギターアンプにギターを差して鳴らす。その方法はずっと変わらないよ。
──デジタルアイテムは実機の本当の良さを知った上で使いこなさないと本末転倒な気もします。
松本:そうだね。僕は最近、エリック・クラプトンとAC/DCの公演を観たけど、彼らのシステムは超アナログですよね。昔ながらのやり方を変えずにいて、“こういう音楽も捨てたもんじゃない”と思いましたよね。スタジアムを満杯にするアーティストはたくさんいるけど、クラプトンにしてもAC/DCにしても、時代が変わっても彼ら自身は変わることがないうえ、20代くらいの女の子がアンガス(・ヤング / G)を観てキャアキャア言ってる。それには“へぇー!”と思ったんだよね(笑)。この前、稲葉君と食事に行った時にそんな話もしていて。
──長年第一線で活動し続けるアーティストは若い世代も魅了していますし、日本で言えばまさしくB’zがそうですよね。
松本:そうだったらいいですね。
──良い音楽は時代や世代を超えて響くということだと思います。
松本:自分たちもそうなれるように、もっとがんばらないと、と思いますね。