【インタビュー】OLDCODEXが今だからこそ笑って話せる“あの時”、そして未来…シングル集『Fixed Engine』
■過去、現在、未来の境界線の上でちゃんと前を向ける曲にしたい。（Ta_2）
■きっといつか、みんなでこの曲を一緒に歌えるだろうなって。（YORKE.）
──そして「Anthem」は高揚するナンバーで強力なメロディを持つ曲。葛藤、衝動、イラだち、いろんな感情がいっきに押し寄せるようなエネルギーがある曲ですね。
Ta_2：この曲はさっき話した過去、現在、未来の境界線をすごく意識していて、その上でちゃんと前を向ける曲にしたいなと思って書いた曲。自分たちは1曲、1曲、OLDCODEXというものを炸裂させてきているから力強い曲にしたかったし、それでいて過去をナシにするわけではないから、メロディラインにはそういう要素も入っている。サウンドに関しては「ライヴでこういう光景を見たいな」とか「こんなことをやれるセクションにしたいな」って考えつつ、ライブハウスだろうが武道館だろうがどこで演奏しても怖くない楽曲にしようって。バンドのグルーヴ感を意識した曲でもあり、アレンジャーのebaにシーケンスも体温を感じさせるものにしたいってむちゃぶりをしたり（笑）。でも、そこまでこだわらないと未来の俺たちに繋がらないと思ったから、1つ1つ丁寧に作っていった。
──YORKE.に伝えたことは？
Ta_2：「総括みたいな感じ」ってチョロッと言ったぐらいだったかな。
 ▲『Fixed Engine』BLUE LABEL |
YORKE.：Ta_2とは日々、「次、どういうの作ろうか」って話をするからね。俺もシングルコレクションとは言え、いちばん強い曲にしたいと思っていたし、リリックに関してはこれまでのメッセージや言葉を全部、ひっくるめた上で完成させて、一区切りにしたいなって。今までのシングルのリリックを水槽にぶちこんで金魚になって、それを食い尽すみたいなイメージ。だから、この曲の歌詞には“遥か遠く”とか“wake up”とか“above the sky”、“吹き荒れた風”とか、これまでの曲に出てきた言葉が散りばめられている。そうやって書いても最終的に前向きな方向に持っていけるなって。あとは今まで以上に日本語の歌詞にチャレンジしようと思って、強い言葉を探した。タイトルの「Anthem」はデカい言葉だと思ったけど、きっといつか、みんなでこの曲を一緒に歌えるだろうなって。そういう曲に変えていかなきゃいけないとも思ったし。
──でも「Anthem」って決して希望や前向きな想いだけを歌った曲ではないですよね。もがいている様や喪失感も感じられる。
YORKE.：それはまさに6年、Ta_2と俺はこういう気持ちでOLDCODEXをやってきたっていうことでもあるし、今もそう。メッセージ的にはすごくストレート。仮歌をレコーディングした時、「この歌詞、入ってくるなあ」と思ったけど、変な感傷はないですね。
──歌詞について1つ聞きたいんですが、「Milestone」にも、「Anthem」にも“鳥”という言葉が出てきますよね。YORKE.はライヴでキャンバスによく鳥の絵を描くけれど、自身にとって何を象徴している？
YORKE.：（タトゥーを見せて）左腕に飼ってるもの（笑）。鳥ほど俺にとって都合がよくて素敵な言葉はないなって。鳥という言葉に逃げている時もあるし、立ち向かっている時もあるんだけど、たぶん憧れに近いものだよね。『Fixed Engine』って付けておいて、鳥みたいにエンジンがなくても飛べる存在に憧れちゃうというか。きっとTa_2もそうだと思うし。
Ta_2：うん、それはあるね。
YORKE.：ただ曲の中でイメージしている鳥は毎回、違うんですよ。「Anthem」でイメージしているのは鳩というよりも渡り鳥的な真っ黒な羽根の鳥。「Dried Up Youthful Fame」に出てくる鳥にイメージは近いんだけど、見た目が怖くて真っ黒で実際に生存しているのかわからないような鳥を想像していた。「Anthem」の歌詞の中では“羽撃いた鳥は死んだ”って書いていて、鳥を殺しちゃったんだけど、理想や憧れを1度壊すことで見えることってあるよね。自ら撃ち落としたんだから、その後焼いて美味しく食べたよ。
──ははは。その「Anthem」のMVは、かつてないほどに衝撃的な映像になりましたね。
Ta_2：今回のミュージックビデオのテーマはシンプル。バンドで見せるところはしっかり見せて、俺たちにはYORKE.っていう絵描きがいるから、そこも強く見せたいなと。
──YORKE.がのたうちまわって絵を描くシーンは壮絶です。
YORKE.：でも、あれが俺のリアルな姿だと思う。のたうちまわって描いているのは演技じゃないしね。「カタルリズム」のミュージックビデオではキレイな赤と青の絵の具を使ったんだけど、今回はぐちゃぐちゃに混ざった色合い。だけど、そっちのほうが美しいと思う俺の本質が引き出されたかなって。バケツの水を頭からかぶるシーンも監督に言われたわけじゃなく、勝手にやったことだし。
──これぐらいの想い、熱量で描いてるんだっていう。
YORKE.：歌詞を書くのと似てるよね。心の内をえぐっているのを表現しただけだから、勝手に撮ってっていう姿勢で撮影に臨んで、「この曲の世界に入り込んで好きにやらせてもらうよ」って。
──フード被ってソファーでタバコ吸ってるTa_2くんが歩き出して鬼気迫るヴォーカルで圧倒する場面といい、ホントに刺激の強い映像ですよ。
YORKE.：今後もこういうアプローチで突き詰めていけばいいのかなと思ったけどね。もちろん曲にもよるだろうけど、基本はこういうスタイルなのかなって。監督は「大丈夫かな？」って思うような人だし。
──（笑）破壊的な人なんですか？
Ta_2：変態（笑）。
YORKE.：快楽主義のカタマリみたいな。だからこそ、こういうロックな映像が撮れるんだろうなって。
Ta_2：撮影の時も超テンション高かったもんね。打ち合わせの時とは全然違う人みたいになっちゃってて（笑）。
──アーティスト気質なんでしょうね。
Ta_2：やー、楽しかった。
