ポール:それはオープニングの行、“There’s a fine line between recklessness and courage”だった。たまに思い切ったことをする人がいる。「そうだ、そうこなくっちゃ」なんて思うんだが、それは愚かで無謀な行為であるときもある。でも、彼らは自分が勇気ある行動をしていると思っているんだ。そういった考えから始まった曲で、無謀になるのか、それとも、勇者でいるのか、そのどちらを選択するのか、というアイディアを基に歌詞を完成させていった。それでピアノの前に座って、あのノリノリのパートを作って、シンプルなものにして、 “Fine line, it’s a fine line”というフックを作った。それをロサンゼルスのスタジオに持ち込んで、続きに取りかかって、あの“Fine line”のリフ部分を考えていたんだ。そこの部分を演奏しているときに間違った音をベースで弾いたら、ナイジェルが「最高だ。それだよ」と言ったんで、僕が「いや、間違った音を演奏しちゃったんだ」と答えたんだ。それでも彼は「いや、確認してみてくれ。これを聴いてみて」と言い、僕が「なるほど、君の言っている意味がわかるよ」と言ったわけだ。自分の考えていたものとは違うものになった。本来はFシャープで考えていたんだが、Fでやって、かなり興味深いものとなったね。そんな風に歌詞と曲を完成させていった。
――アルバム・タイトルのゆえんは?
ポール:アルバムを作り終えると、いつでもタイトルをどうしようかと考えるんだけど、ビートルズのアルバム『アビイ・ロード』は、『エベレスト』というタイトルになるはずだったんだ。でも、突然それがいいアイディアには思えなくなって、『アビイ・ロード』に変えた。タイトルが決まると、気分がよくなる。それで僕は、アルバムを作り終わって、タイトルを探していた。「プロミス・トゥ・ユー・ガール」の中に、“Looking through the backyard of my life”という歌詞があって、“Backyard”はアルバムのタイトルにいいんじゃないかと思った。ナイジェルに電話して、「Backyardっていうのはどうだろう?」と言ったんだ。そしたら「いいけど、あまり面白くはないな。キャッチーだけど、面白くない。でも、どうしてそのタイトルなんだ? どういう意味があるんだ?」と言われて、「そうか」と思った。翌日、また彼に電話して『Looking In The Lyrics』はどうかと伝えた。「ファイン・ライン」の中に、“there’s a long way between chaos and creation”という行があって、それで「じゃあ、『Chaos And Creation』はどうかな?」と考えたんだが、少々重々しい感じがすると思った。『Chaos And Creation』なんて、伝道の書みたいだ。ちょっと気取った感じがした。それで「プロミス・トゥ・ユー・ガール」の“In The Backyard”というのが気になっていたから、この2つの文句を合わせてみた。そこに不真面目さを入れることで、気取った感じをなくしたんだ。そのことを僕と彼が話していて、彼が「最高だ。このアルバムに合っているよ。ChaosにCreation、それに手作り、自宅の裏庭で作ったって感じこそがこのアルバムだからね。タイトルにいいんじゃないかな」と言ってきた。それでこのタイトルになったんだ。