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──今回はこの作品の制作過程でいろいろ発見があったんじゃないですか?
なのるなもない:うーん、やっぱ自分はできないことが多いってことを、改めて気づかされますね(笑)。でも、その逆ももちろんあったし。う~ん、なんだろ。そうですね、ぼくはホントはカラフルさを求めていることに気づきました。ぼくは、自分自身は無色、単色な感じがしてるんですよ。だからこそ色彩を求めてしまうのかな。アルバム作りはそういうところがあって。いろいろなものを求めてしまうんですけど、結局作ってみて思ったのが“カラフルじゃない虹色”みたいな。実は自分が納得できるのがそれかなと思ったりして。すごいレインボー・カラーな曲って自分では作れもしないし、作りもしないのかなと思ったりして。赤・青・緑‥‥とかよりやっぱ迷彩の虹になってる(笑)。
──言葉の深さを感じるんですよね。1曲目の一言目、“月曜日の夢追い人~”ってだけで想像が膨らみます。
なのるなもない:月曜日って昔から大嫌いで。うわーって思ってしまうんですけど(笑)。今この流れている時間の中には、“月曜は働きに行く”っていう一種のサイクルというか、歯車があるじゃないですか。ぼくはいつもそれについていけなくて、いつの間にかすごい劣等生になっていたというか。特にラップとかやりはじめてから、すごくそう感じることが多くて(笑)。ふつうの社会生活を営めなくなっている、みたいな(笑)。こんな歯車からは外れてしまいたい、と感じることもあるんです。そういう時に、“投げやりでもない、ドロップアウトの仕方ってなんだろう?”って考えて、思ったことをこの曲に込めました。でも、どうしようもないからね、働かないと。そこで挫折してしまった自分を勇気付けてるのかも知れない。社会生活の中から脱輪してしまうと、一定の時間からは外れてしまうかもしれない。けど、大きな時間軸の中からは外れてないから、って。
──音楽や芸術に身を捧げた人の葛藤だと思います。表現、時間と実社会での経済的な問題、そういったことに突き当たる時期はかならずあると思いますが、その時期は越えましたか?
なのるなもない:越えてたら、たぶんもうちょっと違う風になっていくといます。でも、そこを越えようとしている自分はいる。今回は、なのるなもない人間がいて、そいつが言うべきことを全部じゃないけど、言っておきたかった。やっぱまとめて聴いてもらえるチャンスってなかなかないし。
──達成感は?
なのるなもない:造形美的なアピールもしてみたかったです。もっと、もっともっと……。でも綺麗過ぎるといけないっていうか……。そういうこともやりたいんだけど、耳があせっちゃう。そうするとこういうリリックになっちゃったりして(笑)
──綺麗すぎると落ち着かない?
なのるなもない:綺麗すぎるものは癒しにもならなかったり。そういう時もあったし。まぁ、癒しもクソもないですけど(笑)。自分は風とか水とかみたいに流れていきたいですね。止まっちゃうと絶対ダメになる気がして。
──ユニークですよね。ヒップホップとか、MCとかでこういうタイプの方にははじめて会いました。
なのるなもない:でも、ラッパーとかMCとかの肩書きを持ってなかったら、それこそなのるなもないひとりの人間ですよ。普通にしてて、その中で風を吹かせたいな、って思うくらい。
──人としてとても自然な感じがしました。
なのるなもない:いやいや、自然な感じがするかも知れませんけど、中には作為的な行為が入っています(笑)。もっともっと自然になりたいですね。あるがままで、裸になったままでカッコいい人になりたいですね。自分でリリックを書く時にまだどこかで“お化粧している”感覚があって。そういうのをもっと取り去った時に出る、無色透明な部分を(持っていないから)求めているのかも知れない。音楽的なことより、人間的にそういう風になりたい。
取材・文●羽切学
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