カール・バラー(Vo&G):「Music When The Lights Go Out」と「Narcissist」の2曲を除けば、他の曲は比較的新しい曲かな。人によっては、今回のアルバムの曲はバンドの内部を反映した内容だと見る人もいるよ。それは状況的には悲しい話だけどね。でもかなりの楽観主義にも溢れていると思うんだ。
──楽観的といえば「The Man Who Would Be King」などからはリラックスしたトランペットが聞こえますが、これは誰が?
カール:俺が吹いているんだ。クズだけどね。リラックスしたって感じてもらえてうれしい(照笑)。スタジオにあったんで、吹いてみた。
──この作品でより明らかになったように、あなたたちの曲はパンクやロックもある一方でフォークやキャバレー音楽、トラディショナル・ソングも取り込んでいます。こういった音にどうアクセスしていたんですか?
カール:音楽が好きで、そういった音楽に囲まれて育ったからだろうな。人生を愛し、メロディを愛し、物語を愛し……。実は俺、子供のころはヘヴィ・メタルが好きでね。メタル以外は大嫌いだった。美しいメロディを聴くと「女々しい(ゲイな)」って言ってた。ただ、ある日ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「サッド・ソング」を好きになったんだ。でも友達に打ち明けられなかった(笑)。叩かれただろうしね。そりゃゲイな曲なんだよ。今聴いても、すごくゲイだな(と、実際に歌う)。で、この曲を聴いたときに、「ヘヴィ・メタルを聴くのは人生の無駄使いかもしれない」って気がついたんだよ。でも、俺達いろんなスタイルの音楽が好きだよ。意図的に入れたりしてるわけじゃなく、曲が望んでいると感じたときにだけ入れるんだけどね。
──今年のフェスは3人で出ることに決めましたが、去年よりは心の準備や練習もできてた?
カール:多分ね。ただ、ギグに出るとか出ないとかの問題だけじゃないんだよ。俺だって友達を取り戻したい。ドラッグをやらない友達が欲しいんだ。命取りになるようなドラッグをやらない友達がね。ピーターがドラッグをやるようになってからというもの、一緒にいる時間がどんどん減っていった。奴は俺達に会う代わりに、忌まわしい吸血鬼みたいな連中に会ってる。でも俺は、あんな世界にまったく興味がない。退屈さ。陳腐。あんな世界と関わりになった成れの果て、行き着くところは2ヶ所しかないよ。その2ヶ所とも、惨めな終わり方さ。それが何か、説明する必要はないよね。クリーンに、素面になったら、そこからいろいろなことができる。バンドだけじゃなくって、これから先の人生と友情が待っててくれるんだ。俺はいつまでも待ってるよ。でも……悲しいね。
──そっか……。でもピーターはカールが“俺の手をとってくれたら”とか、“迎えに来てくれたら”とか、勝手なことを言ってるじゃないですか。それでもあなたが彼のことを見捨てず愛情をこめて接していられるのは、なぜ?
カール:ピーターは分かってるはずなんだ、俺がずっと待っていることを。いつまでも待ってることを。前にも証明したし、何度も証明してるんだ。くり返し、くり返し。それなのにピーターの最後の言葉は「俺なしでまたやったら殺すぞ!」だった。こんなんじゃ状況は変わらないよ。俺の気持ちは改善されないし、気持ちを変えるつもりはないよ……。
──なるほど……。最後に、リバティーンズといえばそれぞれの個人活動でも知られていますが、最近あなたは何をしてるの?
カール:俺はクラブ・イベントをやって、曲を書いて。商業的なことはあまりやってないけどね。あと、演技を練習してるんだ。脚本を読んで家で準備しているんだ。
──ハリウッドに進出するとか(笑)。
カール:それはいい考えだ。俺はハリウッドの準備ができてたんだけど、ジョニー・デップに全部俺の出るべき役を奪われてしまったよ。
──ふうん。
カール:冗談だけど(笑)。ジョニー・デップ、噂だけどリバティーンズに加わりたいみたいだよ。ジョニー・デップは俺達のバンド、好きなんだよ。でも、誰かが俺に言ったんだ。「映画に出るべきだ」って。それはいい考えだ!って思ったな。心の底で、こっそり興奮してたんだ。まさかの時のために。で、ある日友達から電話がかかってきたんだ。俺のために映画の役を確保した、って。
──すごい!
カール:それで「何の役?」って聞いたら……何だったと思う? なんと、裸のエキストラ!
──洋服なしのあなたがいかに美しいか、見抜いていたんでしょうね。
カール:その話は断ったよ。なんてことだい、サンキュー・ベリマッチ、ってね(笑)。
取材・文●妹沢奈美