――精力的なライヴ活動を続けていたこともあって、ここにきてようやく1stアルバムがリリースされた、という印象ですが、ご自身たちとしても時間をかけてじっくりと制作した、という自覚があるのでしょうか。
大橋卓弥(以下、大橋):そうですねえ。時間をかけたというか。
常田真太郎(以下、常田):かかったというか(笑)。まあ、俺はアルバム用に「こういう感じの曲がほしいな」みたいなのはあってコツコツと曲を作っていたんですけど、でも、焦ってフル・アルバムを作らなくて良かったかな、と思っています。
大橋:曲は作り出したら早いんですけどね、とっかかりがなかなかね。でも、ゆっくり作って正解でしたね。
――曲のクレジットを見ると、作詞・作曲・編曲をすべてお二人が共作しているようになっていますが、実際はどういう作業で完成させていくのですか?
大橋:とりあえず2人とも曲も歌詞も書くんですけど、一番多いのは、どちらかが曲のベーシック部分を作って、それをどっちかに投げて、それがまた戻ってきて、という行ったり来たりの作業ですね。
常田:その場で歌って聴かせたりとかね。
大橋:ただ、僕はパソコンとかで曲が作れないから弾き語りで聴かせる感じですけど、真太くんのはある程度完成された状態でデモがあがっていることが多いですね。
――じゃあ、むしろ常田さんの方が楽曲のアレンジやこまかいトリートメントをすることが多いのですね。
常田:そうですね。それによって、曲がガラッと変わることもあるんですよ。僕はストックだけだと60~70曲くらいあって。スキマのためだけに作るんじゃなくて、なんとなくいつも気がついたら作っているんで。
――ええ、w-inds.へ曲提供(「キレイだ」)もしていますものね。
常田:そうです。でも、僕は曲を書こうとしないと絶対書けないタイプなんです。時間を決めて向きあわないと。卓弥は割と突発的に曲を書いたりしますけどね。
大橋:そう、アルバムのために曲を作ろうなんてことはないですね。だから、僕が作ったものを真太くんに投げたら、いきなりハネた曲調になったりして「えっ?」みたいな(笑)。真太くんはヴィジョンが見えていてそこに向かっていくタイプなんですけど、僕はまったく見えてないので、そういう意味では2人が一緒に作業することが互いに新鮮なんですよ。言ってみれば、アレンジャーは真太くん、シンガーは僕、みたいな役割がハッキリしているんです。
――歌詞はどちらが書いているのですか?
常田:モチーフが多いのは、僕です。
――ええっ? それは意外です。
常田:よく言われるんですけどね(照)。
大橋:いや、僕はこんな歌詞、絶対書けないですよ。壊れたトースターをいつまでも大事にしておく(アルバム収録の「ドーシタトースター」より)なんてできないタチだし。壊れたらサッサと捨てちゃえって(笑)。真太くんはそのへんロマンティストですよ。
――お二人の資質が正反対なのですね。
大橋:はい。もう、僕らはすべてが正反対(笑)。真太くんが作ってくるメロディとか、理解できないな~、なんじゃコレ?って思う時がありますからね(笑)。でも、歌うとこれがすごくいいんですよ。
――スキマスイッチは特定のアーティストからの影響がほとんど見えないですよね。それはお二人の資質が真逆だからでもあるのでしょうか。
大橋:そうですね。あと、きっと僕らがアーティストやジャンルで曲を聴いてないからかもしれない。たとえば僕は曲ありきというか、メロディで聴いているんですよ。そういう意味では真太くんのアレンジの才能にすごく助けられてるし、真太くんのアイディアひとつで自分の書くメロディがすごくよくなっているっていう自覚があるんです。僕が曲を作って、それをそのまま歌って聴かせるだけだったら、きっとすごくかったるいものになってるかもしれないし(笑)。
常田:2人でやっている理由っていうのもそこにあると思うんですよね。昔の曲をひっぱりだしてきても、アレンジひとつ、イントロひとつでガラリと印象が変わるんです。そうやって考えていくと、組み合わせの可能性は無数にあると思いますね。あとは、去年あたりからライヴがすごく多くなってきて、聴きにきてくれているお客さんがいる、ということがすごく励みになっているのもありますね。それによって自分たちの自信にもつながっているし、見えなかった可能性も出てきているんじゃないかな。