――ニューアルバム『アンテナ』は、前作『THE WORLD IS MINE』からどう変わったと自分たちでは思っていますか?
岸田繁(Vo&G/以下、岸田):まず演奏してるメンバーが変わったっていうのが大きいですね。他はなんやろ……普段なら音楽を作る時に、世の中の流行りの音に自然と影響うけたりするんですけど、今回は一切ない。なんかね、前に比べて「こういう演奏がしたい」ってビジョンが明確になってるんです。せやから、これが今っぽい/古いっていう感覚がなく、ただただ演奏してた感じですね。
――確かに本作には、流行に関係なくいつもロックが放つ“ビリビリくるかっこよさ”がギューギューに詰まってる感じがします。しかも生々しくビリビリくる。まるでその場で演奏してるみたいですね。
岸田:実際録る時も何がいちばん大事かっていうとカウントする瞬間からガーンと終わるまでの空気。その間、頭ん中まっ白やったし、音楽がひとつの生き物みたいやった。それも4人になって、バンドとしてまっとうに機能するようになったことが大きいと思います。
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▲(左から)大村達身、佐藤征史、クリストファー・マグワイア、岸田繁
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佐藤征史(B/以下、佐藤):初めてクリストファーを交えて4人で音を合わせた時、ものすごい衝撃やったんですよ。あり得ないくらい高揚して、すべてがクリアになって晴れた感じがして。
クリストファー・マグワイヤ(Dr/以下、クリストファー):その時のライヴなバイブレーションをアルバムにそのまま入れたいってのが、今回なんとなく考えていたこと。もちろん技量も大事だけど、とにかく演奏に没頭/集中することの方が大事だった気がします。
大村達身(G/以下、大村):せやから会話もない状態で、ただ向き合って夢中で演奏してた。とにかく自分の感覚を正直に、どこまで嘘なく出せるかみたいな感じで作ってた。コンセプトもね、明確に言葉にできないんですよ。後から聴いて“あ、すごいリアルなアルバム作ってたんやな”って気づきいたりしましたけど。
――感覚優先で作ったから、聴き手の感覚も震わせるんですね。コンセプトや流行を頭で考えてたら違う作品になってたのでは?
岸田:そうですね。たとえばね、東京みたいな街で働いて暮らしてたら、いろんな服を着ておしゃれすることはできると思うんです。でも、むっちゃくちゃ寒かったり暑かったりする場所で暮らしてたら、それでも体を効率よく動かさなあかんから服も機能の方が優先される。そういうね、機能が優先されててパッと見でどういう人か分かるようなんって、すごいかっこいいと思うんです。わざわざ着飾ってないけど、かっこいい。このアルバムもそういう感じ(笑)。
――(笑)狙わずして、いや狙わなかったからこそ、の名盤ですね。
クリストファー:何千回と聴いたけど今でも再生した瞬間からゾクゾクする。作った本人なのに(笑)。つもりがなくても聴くだけで心を突き動かされるのが本当にいい音楽。それが実現できたと思う。
大村:1曲目から10曲目まですごい流れがあって、小さい音で聴いててもハッとするポイントが何ヶ所かある。中味の広いアルバムやから、その分タイトルはすごい悩み倒したんですけど。
佐藤:でも余計なことせず誠意を持ってきちんと“発信してるな!”っていう印象を持ちまして。『アンテナ』とつけました。
――アルバムがこれだけ生々しいと、もうすぐ始まるツアーがどんだけ生々しいんだろう……とワクワクしますよ。
岸田:こういうこと珍しいんですけど、アルバム作り終えてんのに俺、まだ曲を山のように作ってて。昨日も実は3曲書いたんです。“もう演奏してて楽しい!”っていう風になってるんですよね。
佐藤:バンド自体“演奏”ってもんに夢中になってる、すごいイイ時期に来てる印象があって。だからライヴもすごい楽しみです。