――今回のアルバムを作り始める段階で何か話し合ったことはありますか?
山田マン: ガリヤがインディからやり始めて最初、クラブとかを廻ったりしてたわけだけど、メジャーに移ってからは大きい会場でライヴをすることが多くなっちゃって。でもやっぱりクラブ・ミュージックが良いなってことで、初期衝動に返るような感じにしたかったんだよね。前のアルバムまでは、せっかく全国で自分たちのCDを売ることができわけだし、言いたいこともいっぱいあって聴いてくれ!っていうのが一番にあったから。
Q: まずは踊れるアルバムにしたかったんですよ、“バック・トゥ・ザ・ベイシック”ってことで。ノリって理屈じゃないからね。
DJ TOSHI: 今までのアルバムも基本的には同じなんだけど、最初の頃のいつも楽しくやっているって部分を強く出してみたかったんですよ。クラブでもノレるような感じの。
Q:「前の方が良かったよね」って言われるのは絶対イヤだったんで、最初から持っていた核の部分は変えずに、その時々のヴァイブを大切にして今までになかったような新しいことをやっていかないと、前作を超えるものは作れないと思ってるし。でも、だからこそ“バック・トゥ・ザ・ベイシック”って感じで、理屈抜きでカッコ良いもの、トバされるモノってのを作りたかったし、そうなったと思う。もともと昔からどうやれば日本語のラップがカッコ良く聴こえるかなって思ってたわけだし、そういう意味でも昔に返ったかな・…と思うね。
――最初に2人のフロウのヴァラエティがさらに富んできたな、と思ったんですけど。
山田マン: 自分が好きな人、ラッパーでもそうだし、格闘家もそうなんだけど、進化していく人が好きなんですよ。プライドもK-1もそうだけど常に進化していく人がね。K-1だとミルコ(・クロコップ)とかも最初は何かイヤなヤツっぽかったんだけど、知れば知るほどなんてストイックなヤツなんだ、って惹かれていって。
DJ TOSHI: 最近だと(アレクセイ・)イグナチョフにはビビリましたね~。細くて膝蹴りがスゴイし。最近は締まってパンチのコンビネーションも上手くなってきて。
山田マン: 格闘家じゃないけど、やっぱDr. Dreなんてそれこそスゴイじゃないですか。N.W.A.からソロになって今はEMINEMみたいなこともやってるし。SNOOPなんかも凄かったしね。進化してそれでちゃんと結果を出してるってのが凄いよね。俺なんかはそこまで結果出してるとは思ってないし、だからまだまだやり続けていきたいって思うんだろうから。ラップ以外の他のこととか出来ないからねー。ビデオ・クリップの中ではスカイ・ダイビングとかいろいろとやってるけどさ(笑)。フロウはそれこそ無限のコンビネーションがあるわけだし、まだまだ進化の途中ですよ。かといってフロウを変えれば良いってモンでもないし、パンチと同じで弱いパンチのコンビネーションじゃ効かないからさ。
Q: やっぱベースがしっかりしてないとね、スタンダードなことをやろうと思えば余裕で出来るんだしさ。ワン・アンド・オンリーとか好きなんでね(ニヤリ)。
――今回は走馬党クルー以外のゲストが多く参加してますよね。
山田マン: 前のアルバムまでは自分たち、そしてクルーだけでどれだけカッコ良く出来るか、ってスタンスでやっていたんですよ。でも今回はやり始めた頃に戻ってやるってことで、もう素直に、「一緒にやんない?」みたいな感じだったんだよね。
Q: クルー以外って言っても、ハジ(DJ HAZIME)もそうだしUZIくんもそうだけど、昔から友達でやっと一緒にやれたね、って人も多いし。今までやりたかったけど、やれなかったことを今回はできたってのは大きかったよね。皆さんの力をお借りしつつ完成した、って感じで。
――特にボス・ザ・MCの参加なんて意外でしたけど。
山田マン: ボスくんなんて、いつ頃だろう、前々作(『スーパーハード』?)を出したくらいにクラブでよく会ってて、「一緒にやりたいよねー」なんて話してたのが、やっと実現したんだよね。
――でもガリヤとはあまり繋がらないと思っちゃいますよね。
山田マン: いや~、タメなんですよ(笑)。「あれ? タメだねー」なんて話してたんで(笑)。
Q: でも、その意外なのが良いんだよね。傍から見て面白いでしょ?ってことで、やっぱ「ヤバスギルスキル」ってのはヤバスギないとまずいんで(笑)。だから次もヤバイことをやりますよ(笑)。
――イントロのKID CAPRIもヤバイっすねー。
Q: これはヒロシマがCAPRIさんと友達だってことでやってもらったんだよね。ヒロシマと作業してたら「イントロって決まってるの?」って言われたから「まだ、決まってないよ」みたいに話してたらこういう案を出してきたんで。そりゃヤバイっしょ、ってことで頼んでもらったら、すんなり決まっちゃって。
――ハジメくんの曲は彼らしい今のシーンを感じさせる音ですね。
山田マン: 何曲か持ってきてくれたんだけど全部あんな感じの今時なビートって感じだったよね。
Q: ハジはやっぱDJとしてずっとやってきてるから、ハコで良く鳴るだろうなって音を作ってきてるよね。ホントようやく絡めたって感じだよ。
――ソウル・スクリームなんかもそうですよね。
Q: そう、ソウ・スクなんかは俺らがやり始めた頃にはパワー・ライス・クルーとしてガッチリやってて、俺なんかは観てたり、デモ・テープを渡したりとかしてたんでね。今回はようやくリンクできたから。
――いろんなトラック・メイカーが今回は参加していますが、逆にTOSHIさんなんかは、「俺にもっとやらせろ!」って思わないんですか?
DJ TOSHI: う~ん、そういう気持ちはいつも持ってますけど、今回はこんな感じでいろんな人とやってみようって話なわけだから。ガリヤとしてはまだこの次もさらに次も続いてやっていくわけだしね。
Q: “誰が作ったビートだから”とかじゃないんだよね。“このビートだからやろう”って感覚なんだよね。”ヤバイからやる”って感じだから。
山田マン: 基本的にはトシちゃんのトラックで俺らがやっていくってのが美しいのは分かってることなんだよね。そんなのは分かってることだし、でもそんなことを言ってたら俺だって作りたいし、Qだって作りたいし、ってなるわけだし。例えば俺のビートを使うって決まってても、トシちゃんが出したビートが良ければそっちを使うしさ。
――じゃあ例えばDr. Dreが持ってきたビートでもショボければ…?
Q: やらないっす。
山田マン: 「そんなのラップを乗っけてられっかよ」~って。