|
セックスは多くのミュージシャンにとって音楽をはじめる一番の要因になるのだが、Litのギタリストでメイン・ソングライターのJeremy Popoffにとって、それはただのきっかけでしかなかった。幼いときから音楽のレッスンをはじめたPopoffは、祖父のあとに続き7歳でハモンドオルガンを習い始めた。その後しばらくキーボードを続けるが、思春期になりその方向性を変えていく。
「あるおばさんのとこにオルガンとピアノを習いに行ってたんだけど、そこにイカす娘が2人いてさ、ギターを教えてたんだ」
Popoffは思い返す。
「それでそのおばさんに教わってると、ほかの奴らがギターケースを抱えてやってきてはそのイカす娘と上に消えていくんだ。俺もそうしたいって思ったもんだよ」
まもなく彼は切実に楽器を変えたいと思うようになるのだが、それはそういった衝動からではなく、もっと音楽的な理由からだった。
「オルガンもかっこいいんだけど、当時AC/DCとかIron Maidenみたいなバンドが好きだったんだ」
Popoffは言う。
「ハモンドオルガンなんて使わないだろ。だから友人からギターを譲り受けて独学で弾きはじめたんだ」
そして16歳のときに、本格的にロックに身を費やすため高校を中退、地元Anaheim(南カリフォルニア、Orange County郊外)でいくつかのバンドに参加した後、弟のA Jay、ベースのKevin Baldes、ドラムのAllen Shellenbergerと共にLitを結成。Orange County周辺のクラブで数年間ギグを続け、’97年、1stアルバム『Tripping The Light Fantastic』を自主制作したところ注目が集まり、多くのファンを獲得した。ヘヴィメタルと、トップ40のDJをしているPopoff兄弟の父親の影響で、Elvis CostelloからFrank Sinatraまでのポップミュージックに精通する彼らの曲は、ハードロックとキャッチーなポップが混ざり合ったものだった。
こういったものがその後のLitの音楽を形づくっていくのだが、最新のアルバム『Atomic』では、ライヴ感覚でよりクラシックなロックの音を出すことができたとPopoffは言う。プロデューサーに(’99年制作の『A Place In the Sun』に引き続き)再びDon Gilmoreを迎え、ふてぶてしいユーモアと派手なロックのポーズにより、非常に堂々とした作品になっている。 『A Place In the Sun』でのヒットシングル「Miserable」「My Own Worst Enemy」で、多くの人々の心を引き付けたときも同じであった。『Atomic』では、「Lipstick And Bruises」で過激なロックに敬意を表し、「Last Time Again」や「She Comes」で恋愛騒動について歌う。
もしPopoffが、いまだに過去の恋愛や、ギターの経験から曲づくりをしている時代と変わっていないとすれば、それは彼自身が、ロックの原点はそこにあると思っているからであり、Litはそこにこだわりをみせる。
「Staindのようなバンドはディープな暗い詩をつくって、それが見事に感情に訴える。確かにみんな、そういったこんがらがった人間関係とか問題を抱えてる。俺たちだってそういうことを歌ってるけど、俺たちは南カリフォルニアで育ったんだ。太陽は一年中あるし、女の子たちはきれいで、まわりはごく普通の人々。だからたいていのLitの曲は明るいんだ。俺たちはごく普通の生活について歌う。だってそれが俺たちの知っていることだからね」
By Sandy Masuo/LAUNCH.com
|