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Victor Davis Japan Tour “FREEDOM TRIBE"@渋谷Club Asia 2001.3.19
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演奏曲目 1. Lady Luck 2. One thing 3. Superstar 4. Runaway Train 5. Last Time 6. Better Place 7. Brother
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日本ではBird &大沢伸一のようなソウルフルな歌声をもつ女性シンガーがラテン、ジャズ、ボサノヴァなどのトラックにのせて唄を歌い、クラブ・シーンから発信され、メインストリームで活躍している。そしてそれと並行するように、ボザ、ラテン、ジャズ系のクラブ・イヴェントは、毎週いろんな場所で行なわれ、たくさんの人で賑わっている。
そんなDJの中で先頭に立ちシーンをひっぱっているのは活動歴10年にもなるKyoto Jazz Massiveの沖野兄弟。そんな彼らのイヴェント“FREEDOM TRIBE"に、シーンの先駆けであるロンドンから、男性シンガーソングライターがやってきた。
その名はヴィクター・デイヴィス。
彼が今までリリースしたアナログ盤は、ラジオやクラブを通じて既に話題である。そんな彼が5月にリリースするアルバム『victor davies』を引っさげて初来日を果たし、彼のライヴを観ようとたくさんの人々が集った。
会場ではすでにアルコールもまわり、沖野好洋のラテン・ビートに陶酔しながら躍っている。そんな中、後にアコギ1本をもってヴィクターの登場。
「ちょっとナーバス気味だ」といいながらも、演奏を始めるとかなり落ち着いているように見うけられる。用意されたイスに座り歌いだすと、それまで分散されていたオーディエンスの視線とエネルギーがステージ上に集中。歌った曲は全7曲。タイトなライヴセットで次々と曲は演奏されていく。
最初の曲「Lady Luck」や「Better Place」はラテン・テイストのちょっと派手な感じでミックスされているアルバム中の曲とは全く違う印象。アコギとヴォーカルというシンプルな演奏の中にもオーディエンスをひきつける“強さ”が感じられる。
ジワジワと心の中に溶け込んで入り込むような歌声は、人の温度を感じとれる優しい声。高音のヴォイスにはうっとりさせられる。
最後のアンコールでは日本でもヒットした「Brother」を披露。
ヴィクターは「この曲はひとりじゃ、歌えない」といい、日本人キーボード・プレーヤー、吉沢を迎える。高音で美しい旋律のキーボードと絡み合う切ないメロディのギターとヴォーカル。2年前にこの曲をつくり、いろいろな想いが込められた哀愁漂うサウンドと彼のおおらかな存在で、ひとつの温かい空気を生み会場を覆った。
シンガーソングライターでもありソウルヴォーカリストでもあるヴィクターらしい感情の伝え方。彼が今回アルバムを出すまでの道のりはそれほど容易ではなかった。やはりたくさん悲しいこともあったのだろう、ほとんどの曲が恋愛や人種差別、そして人々のことを唄い続けている。
でも現在の彼から感じるのはそれを乗り越えて強く生きる意志のようなものと、彼自身変革を遂げた凛としたエネルギー。
そして独自のサウンドを形にした『victor davies』は、“人々の心に温かく響くサウンド”であることを、深夜の渋谷のクラブでも証明してみせた。
pic by Sho Kikuchi 撮影協力●Club Asia 文●イトウトモコ
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