【俺の楽器・私の愛機】1837「誰も知らないフェンダーの箱物ギター」

2025.05.14 23:30

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【Fender Coronado Wildwood II (1968年製)】(北区十条台 中澤 54歳)

元々アコギから始めた事もあって、箱物ギターに愛着がありました。大学時代はグレコのレスポールを使っていましたが、社会人になって憧れのグレッチ・ホワイトファルコン(’90年代の再生産モデル)を入手。しかし音色や使い勝手に癖がありすぎて、当時のバンドで演奏する曲に合わない(特に16ビートもの)ものもあり、使うのを断念。

1997年に新大久保の中古楽器屋に、自分に適したギターを探しに行きました。その時の個人的条件が

1. セミアコ
2. シングルコイル
3. ビザール系でないもの(メジャーなメーカーのもの)
4. エピフォンカジノ以外

というものでした。

1,2はセミアコだとハムバッカーが多いですが、アコギ出身で基本リズムプレイが多いのでシングルコイルが望ましい。3は当時ビザール系が流行りだした時期で、個人的には好きですがメインギターにはしたくないな、と。そうするとエピフォンカジノが当てはまるのですが、使っている人が多いので避けたい、と。

そして出会ったのが、フェンダーコロナドでした。店頭で見るまで、存在すら知らなかったギターです。全ての条件に合致。これだ、と入手。今は’60年代フェンダーだからかビンテージ扱いでそれなりに値が上がっていますが、発売当時も購入当時も全くの不人気機種。10万円もしませんでした。

自分以外使っている人にあった事がありません。誰も知りません。大体の人が「中澤さんが使っているのを見て知った」と言います。

フェンダーが、1964年のビートルズ訪米以降のホロウボディギター人気に危機感を覚えて、外注でボディを生産してもらい1966年に発売した初の箱物ギターですが、出た時には既にジミヘン、クリームで再びソリッドギターの時代に。時代に取り残され、結局不人気のまま1972年には生産終了しています。このワイルドウッドは、木の生成途中で染色するという特殊な色です。汚い、という人も。

ピックアップはディアルモンドで音は軽く、サステインもない。リードギターにはおよそ向きません。人には勧められないギターです。が、エレキをアコギ的に弾く私には合ってました。買って以来25年、ずっとエレキはこれ1本です。

ブリッジはサビサビ。ピックアップセレクターは一度割れて、接着剤で修理。フロントとリアでピックアップと弦との距離が違うので音量が違い、調整が必要。ハウリングしやすい、など、欠点はたくさんあるのですが、コロナドに手が馴染みすぎて、他のギターを持つと違和感を覚え、弾きにくくなってしまいました。

   ◆   ◆   ◆

今でこそ「魅力的だ」という目で見られるようになったコロナドもスターキャスターも、CBS時代の迷走を代表するモデルとして知られておりましたが、このルックスのコロナドは知りませんでした。ワイルドウッドっていうんですね。いやー、攻めてるなぁ。やっと時代が追いついた。フェンダーらしさがどこにもないあたり、フェンダーを去った当時のレオ・フェンダーの目にはどう映ったのでしょうね。でも時代が回ると、再生産されるほどの再評価を得るんだから、つくづく楽器って面白い。グレッチとエピフォンとリッケンバッカーの色んな要素が入り込んでいながら、フェンダーやギブソンの匂いはしてこないという珍奇なコロナドちゃん。マッチングヘッドが当時のフェンダーの気合を見せつけています。ふと、3シングル&シンクロだったらバカ売れしたんじゃないか…という並行世界線が見えました。(BARKS 烏丸哲也)

★皆さんの楽器を紹介させてください

「俺の楽器・私の愛機」コーナーでは、皆さんご自慢の楽器を募集しています。BARKS楽器人編集部までガンガンお寄せください。編集部のコメントとともにご紹介させていただきますので、以下の要素をお待ちしております。

(1)投稿タイトル
 (例)必死にバイトしてやっと買った憧れのジャガー
 (例)絵を書いたら世界一かわいくなったカリンバ
(2)楽器名(ブランド・モデル名)
 (例)トラヴィス・ビーン TB-1000
 (例)自作タンバリン 手作り3号
(3)お名前 所在 年齢
 (例)練習嫌いさん 静岡県 21歳
 (例)山田太郎さん 北区赤羽市 X歳
(4)説明・自慢トーク
 ※文章量問いません。エピソード/こだわり/自慢ポイントなど、何でも構いません。パッションあふれる投稿をお待ちしております。
(5)写真
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