FIRE BOMBER、燃え上がる約13年ぶりの単独公演 2/22豊洲PITライブ

2025.02.28 12:56

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日本列島を寒波が覆った三連休初日の2月22日、この会場だけはどこよりも熱く燃えていた。TVアニメ『マクロス7』の放映開始30周年を記念して行われた、劇中に登場するロックバンド・FIRE BOMBERによるスペシャルライブ。2DAYSの2日目となるこの日も多くのファンが東京・豊洲PITに詰めかけた。ステージ上でパフォーマンスを繰り広げたのは『マクロス7』の主人公・熱気バサラの歌担当、“歌バサラ”こと福山芳樹とミレーヌ・フレア・ジーナスの歌担当、“歌ミレーヌ”ことチエ・カジウラ、そして西脇辰弥(バンドマスター&キーボード)、根岸孝旨(ベース)、松本淳(ドラム)、外園一馬(ギター)といった超強力なサポートメンバーだ。特に福山とカジウラがそろってファンの前に姿を現すのは2019年6月に行われた<MACROSS CROSSOVER LIVE 2019 at 幕張メッセ>以来の約5年半ぶり、単独公演としては実に13年ぶりとのこと。いわば“完全体”となったFIRE BOMBERを久しぶりに見られる貴重な機会ということで、ファンの期待は高まるばかり。そんな思いを後押しするかのように開演直前の影ナレではバサラ(CV.神奈延年)とミレーヌ(CV.平野綾)が掛け合いを行い、「久しぶりの地球でのライブ、楽しんでいきましょう!」(ミレーヌ)、「みんなで地球を、銀河を動かしてやろうぜ!」(バサラ)と、スタートダッシュに弾みをつけた。

主にTVシリーズで劇中曲として使われた、FIRE BOMBERの代表的なナンバーを集めた今回のセットリスト。1曲目は中盤以降のエピソードで使用された「HOLY LONELY LIGHT」だ。30年の時を経てもまったく衰えない、それどころかパワーアップしている二人のボーカルの掛け合いは一気にフロアの温度を上昇させ、バックのモニターに映し出されるバサラとミレーヌ、各愛機のバトロイド形態の勇姿が、戦場を縦横無尽に駆け回りながら歌うFIRE BOMBERの姿を思い起こさせた。そう、「久しぶりの地球でのライブ」とミレーヌが言った通り、FIRE BOMBERが地球に帰還した記念すべきライブを今、我々は目撃しているのだ。そんな感動に打ち震えているうちに、2曲目の「…だけど ベイビー!!」がスタート。これはTVシリーズ後期のエンディングテーマでミレーヌのメイン曲。モニターにはエンディング映像で使われたキャラクター原案の美樹本晴彦によるイラストが映し出されており、カジウラの歌声と共に当時とまったく変わらないミレーヌの魅力を堪能することができた。なお、TVシリーズおよびOVA『マクロス ダイナマイト7』のテーマ楽曲についてはいずれも同様に当時の映像を素材として使用しており、これもまた長年『マクロス7』を見続けてきたファンにとってはうれしい演出だった。

3曲目は時代がグッと下って、2012年に劇場公開された『マクロスFB7 オレノウタヲキケ!』より、主題歌「ヴァージンストーリー」。FIRE BOMBERの楽曲の中では比較的新しい曲となるが、MCでの曲振りの段階で女性客から「大好きー!」との声が上がるなど、人気の高いナンバーでもある。その証拠にイントロからオーディエンスによる「Yeah! Yeah!」の声がぴったりと揃っていて、その音の圧はステージ上のメンバーにも大きなエネルギーを与えていたことだろう。続く「Burning Fire」はゲーム『マクロスアルティメットフロンティア』の主題歌で、こちらは2009年リリース。TVシリーズやOVAが終了した後も不死鳥のごとく何度もよみがえったFIRE BOMBERの歴史を辿るような時間だった。

オープニングのFIRE BOMBERパートが終了して、続いてはカジウラがソロでボーカルを務めるミレーヌパートに突入。最初に歌ったのは『マクロス ダイナマイト7』より「GO(自由な歌)」だった。ミレーヌのイメージカラーでもあるピンクの照明に彩られたステージはバサラとのツインボーカルの時とはまったく雰囲気が異なり、まさにカジウラによるミレーヌ独自の世界観がそこに構築されていた。MCでは久しぶりの登場とあって「ただいまー!」と挨拶。ファンも大きな声で「おかえりー!」と応えていた。トークでは「昨日いろいろしゃべっちゃったので、今日は何も考えてない。何か質問ある人!」と自由ぶりを発揮しつつも、「髪の毛がかわいい!」との声が飛んできたときには「みんな優しすぎるよ」と照れたようなリアクションを見せていた。「こんな熱量で30年たっても楽しんでくれるんだよ。すごいよね。ありがとう」とファンへの感謝の気持ちを述べつつ、「Burning Fire」と同じくアルバム『Re.FIRE!!』に収録された「PLASITCS」を披露。続けて「君に届け→」でも優しい歌声を聴かせてくれて、このパートのラストは2024年10月リリースの30周年記念シングルに収録されたミレーヌの最新ソロ曲「レゴリス」を披露。これらラスト2曲では手元にアナログエフェクターを並べ、『マクロス』らしい銀河の奥行きを表現すべく、自身で声にディレイやトレモロをかけて歌を披露するという幻想的なパフォーマンスで締めくくった。

余韻を残したまま幕間となり、『マクロス7』TVシリーズでお馴染みの世界観を説明するアバンが上映される。その締めとなる「そして、2045年」というナレーションに続けて流れ出したのは「SEVENTH MOON」のイントロ。ここからはバサラのソロパートに突入だ! とはいえ序盤から熱いナンバーでガンガン攻めるのではなく、「REMEMBER 16」「SUBMARINE STREET」などの青春の思い出を振り返るような楽曲が続いていく。客席の中には、きっと自身の青春時代を『マクロス7』やFIRE BOMBERと共に過ごしたという人も多くいたことだろう。そんな人たちの心に、福山の歌声はグッと染み渡ったのではないだろうか。この2曲は福山自身にとっても思い出深い曲だったようで、「31年前の夏、同じ日に録ったんです」と振り返っていた。当時はまだアニメの映像も完成しておらず、手探りでイメージを作り上げながらレコーディングする日々だったそうで、「今となってはFIRE BOMBERの原型だった気がします」といった貴重な話が聞けるのも30周年ライブならではだろう。さらに続けて「最初に『マクロス7』の歌を歌うことが決まったときに、帰り道で運転しながら思いついた曲」という「MY SOUL FOR YOU」を披露した。

「I am a ROCK」は「レゴリス」と同じく30周年記念シングルに収録されたバサラのソロ曲。「MY SOUL FOR YOU」が『マクロス7』に福山が関わってからのいちばん古い曲とするならば、こちらはもちろん最新曲だ。それでもファンの予習はバッチリ行き届いていて、歌声はぴったりと揃っていた。その声の大きさは福山を大いに喜ばせ、歌の途中でイヤモニを外してしまったとのこと。次もまた、ファンの歌声が必要な曲で「声がかれるまで歌ってください」と「DYNAMITE EXPLOSION」をファンと共に熱唱。「Dynamite! Dynamite!」と叫ぶファンとの掛け合いが、映像に映ったアニメーションのライブシーンと変わらない、いや、それ以上の盛り上がりを見せていた。バサラパートのラストもまた「ANGEL VOICE」をファンと声を揃えて歌って、気持ちを一つにして締めくくりとなった。

再びカジウラが合流してのFIRE BOMBERパート後半はTVシリーズ初期から使用されている不朽の名曲「PLANET DANCE」からスタート。「会場を見ると若い世代もたくさんいて、幅広い世代の人たちに愛されるアニメに、30年前に歌バサラ、歌ミレーヌとして出られたことはすごく奇跡で、最高で、ラッキーだったと思います」(福山)と言って次に歌ったのはシリーズ後半で印象的に使われた「LIGHT THE LIGHT」で、曲に入る前には「二人で歌っているとFIRE BOMBERだなという感じがします」という福山からの一言も。その言葉通りにツインボーカルの魅力をじっくりと味わえる1曲で、オーディエンスたちの歌声もそれに続いていく。もはやここでライブが終わっても悔いが残らないくらいの感動に包まれた後に披露されたのはTVシリーズの前期エンディングテーマとして使用されたミレーヌメインの「MY FRIENDS」。この曲に限らず、圧倒的な表現力で魅せたカジウラのパフォーマンスは、ミレーヌが歴代の『マクロス』シリーズの歌姫たちと同様、歴史に偉大な足跡を残したアーティストであることを改めて感じさせた。ここでラスト1曲となり、本来ならば客席から「えーっ!!」という声が上がるタイミングだが、福山が正直に「アンコール前、最後の曲となりました」と言ってしまって笑いが起きたのはご愛敬。そんな本編ラストに歌われたのはTVシリーズ最終回のクライマックスでも使われた「TRY AGAIN」で、これ以上にふさわしい曲はなかったといえるだろう。

「FIRE!!」「BOMBER!!」というアンコールを求める声に応えて再びステージ上に揃ったメンバーが演奏したのは、今回のライブタイトルにもなっている30周年シングルの表題曲「BURN! BURN! BURN!」で、満を持しての最新曲披露に客席のボルテージももう一段階上がっていった。そして正真正銘のラストソングは、まだこの曲が残っていたか!というFIRE BOMBERの初期からの代表曲「突撃ラブハート」。「FIRE BOMBERの曲って、シングルになっている曲はそんなにないんです。それなのにこんなに長く愛されて、みんなに歌ってもらって、普及しているのって、ほかにはないと思います」(福山)と、長年支えてくれたファンへの思いを述べるが、30年間もずっと曲が愛され続けているのは二人がずっと変わらない歌声を聴かせてくれるからでもあるだろう。『マクロス7』が放送開始された1994年当時に思いをはせつつ、あれから長い時を経てもこうしてFIRE BOMBERのパフォーマンスを目の前で楽しめていることに感謝しながら、熱狂のステージは終演を迎えた。すべてのプログラムを終えて、熱い握手と抱擁を交わし合う福山、カジウラとメンバーたち。彼らがステージを去った後には再び声バサラと声ミレーヌによる影ナレが流れ、「またどこかで会おうぜ! じゃあな!」(バサラ)、「外は寒いから気をつけて帰ってね!」(ミレーヌ)と心地よく観客を送り出してくれた。そんな興奮も冷めやらぬうちに画面に映し出されたのは、「BURN! BURN! BURN!」のジャケットでも使用されていたミレーヌのビジュアルと『Mylene night 30th anniversary “Chie × Aya = connect” September 2025』の文字。現時点ではそれ以上の詳しい情報は明かされていないが、ぜひ続報に期待してほしい。

Text:仲上佳克
photo by hajime kamiiisaka
©2024 BIGWEST/MACROSS 7 PROJECT

セットリスト

01.HOLY LONELY NIGHT
02.…だけど ベイビー!!
03.ヴァージンストーリー
04.Burning Fire
05.GO(自由な歌)
06.PLASTICS
07.君に届け→
08.レゴリス
09.SEVENTH MOOM
10.REMEMBER 16
11.SUBMARINE STREET
12.MY SOUL FOR YOU
13.I am a ROCK
14.DYNAMITE EXPLOSION
15.ANGEL VOICE
16.INTRODUCTION ~PLANET DANCE
17.LIGHT THE LIGHT
18.My Friends
19.TRY AGAIN
E01.BURN! BURN! BURN!
E02.突撃ラブハート