【コラム】Genesis Girlが蘇らせた「MORE」、40年の時を超え令和に伝えるリアリティー

2019年に始動し、“オーケストラ×Loud Rockを基調にした本格派サイバーメタルアイドル”として大きな注目を集めているGenesis Girl。現在の彼女達は2月5日から始まった6週連続音源リリースの最中にあり、その第3弾としてジャパニーズ・ハードロック・バンドの重鎮EARTHSHAKERの「MORE」をカバーしたことが話題を呼んでいる。
EARTHSHAKERは1983年にメジャーデビューを果たし、1980年代の邦ロック・シーンを席巻したジャパニーズ・メタル・ブームを代表するバンドのひとつとして名を馳せ、メンバー・チェンジなどもなく現在に至っている。つまり、“レジェンド”という言葉が似つかわしい存在だ。そして、今回Genesis Girlが取り上げた「MORE」は彼らの1stシングルとして1984年6月5日にリリースされ、彼らの2ndアルバム『FUGITIVE』(1984年3月1日)にも収録された楽曲である。
「MORE」は流麗なメロディーや「もっと孤独よ踊れ」という言葉で内面の痛みや苦しみを現した歌詞、強く訴えかけるボーカル、ソリッドなバッキングと泣き叫ぶようなソロの対比が印象的なギター、弾力感のあるベース、重厚なドラムなどが折り重なって、心の琴線に触れる1曲に仕上がっている。憂いとハードネスを巧みに融合させた手腕は実に見事で、「MORE」はHR/HMという枠を超えて多くのリスナーにアピールし、EARTHSHAKERの人気を決定づける要因のひとつになった。そして、邦ロックの歴史に名を残す名曲として広く知られている。
そんな「MORE」を令和の感性でリビルドしたのがGenesis Girlのバージョンだ。まず一聴して気づくのは大胆なテンポアップだろう。オリジナルはどっしりとしたギャロップ・リズム(ハネたビートの上でギターやベースが“ダンダカ・ダンダカ”と刻むパターン)だが、Genesis Girlはそれを高速の2ビートにチェンジ。テンポを上げて疾走感を増すと共に、よりヘヴィなサウンドを用いて、「MORE」の緊迫した雰囲気やドラマチックさをブーストしている。
次いで注目といえるのは、中間のセクションにラップを入れ込んでいることだ。EARTH SHAKERのファンの方は「えっ?「MORE」にラップ?」と思うかもしれないが、これが非常にカッコいい。硬派な雰囲気のラップは魅力的だし、“世代を超えて切り裂くこのScream GSG EARTH 奏でる 彩りの80’s thrashで刻む礎のNative”といったワードが使われていることもポイント。EARTHSHAKERに対する敬愛が伝わってくると共に、「MORE」にラップを挿入して違和感なく仕上げるセンスの良さが光っている。
さらに、オリジナルでは“Knife(ナイフ)をにぎりしめた 18の日々が蘇る”と歌っているBメロの歌詞が“マイクをにぎりしめた”に変更されているのは興味深い。たった一言変えるだけでGenesis Girlのメンバーや今の若い世代にとってよりリアリティーのある世界観になっていて、「なるほど、やりますね」という印象だ。言葉のハマりの良さも含めて、この歌詞の変更も抵抗なく聴くことができる。
ここまでオリジナルからの変更点をあげたが、メロディーはもちろん、「MORE」の重要な要素のひとつになっているギター・リフはそのまま活かされているし、ギター・ソロもオリジナルのラインをなぞっているし、オリジナルにはない新たなセクションが追加されていることなどもない。Genesis Girlバージョンの同曲はEARTHSHAKERへのリスペクトが色濃く反映されていて、EARTHSHAKERのファンの方から「ふざけんなよ」「ナメてんの?」といった反感を買うようなリビルドではない。
Genesis Girlならではの華やかなボーカリゼーションも絶妙で非常にインパクトが強く、なおかつ幅広い層のリスナーの心を掴む魅力的な1曲に仕上がっている。
なので、EARTHSHAKERのファンの方には、ぜひGenesis Girlバージョンを聴いてみてほしいと思う。そして、EARTHSHAKERを知らないGenesis Girlのファンの方にはオリジナルと聴き比べることを強くお薦めしたい。非常に楽しいひと時を過ごせることを約束する。
文◎村上孝之
◆6週連続配信曲一覧(販売元:avex music creative)
(1)2025年2月5日(水)「Wake Up」
(2)2025年2月12日(水)「YOLO」
(3)2025年2月19日(水)「MORE」
(4)2025年2月26日(水)「GOLGOTHA」
(5)2025年3月5日(水)「Siren’s Song」
(6)2025年3月12日(水)タイトル未定(Stand Aloneと油布 賢一a.k.a KENNYの共作)
<Genesis Girl One Man Live ~Mephisto~>
2025年3月20日(木/祝)
@渋谷REX(東京都渋谷区道玄坂1-18-3プレミア道玄坂ビルB1)
時間:開場:17:00 /開演:17:30
チケット:https://t.livepocket.jp/e/2poil









