【インタビュー】Little Black Dress、2025年第1弾新曲「PLAY GIRL」リリース「令和の新しい女性像が描けていればいい」

◾︎弱い自分がいるからこそ、もう一方の自分が輝く
──ここ最近、アップデートはどんどん進んでいますからね。苦しんでいた人たちが、きっと徐々に生きやすくなったりもしていて。
遼:歌詞に直接書いてはいないんですけど、まさに「PLAY GIRL」を作った時期って、生きやすさとか生きにくさについてモヤモヤしてたんですよ。Aさんと接するときは自分の好きな自分でいられるのに、Bさんと接するときは自分のことが嫌いになってしまう。私の友人がこういった感じの悩みを抱えていたんです。
──“どっちの自分が正解なんだろう?”“どっちの自分でいるべきなんだろう?”みたいな。
遼:そうそう。私はその友人を見ていて、そりゃあ良いところも悪いところもあるけど、両方ともにちゃんと魅力がある。だったら、どっちかの自分を選ぶんじゃなくて、どっちの自分でもあってほしい。人間はもっと多面的でいいんじゃないかと思ったんですよね。個性がいっぱいあると認め合えたら、より楽しく生きられるんじゃないかなと思いました。
──確かに。
遼:「PLAY GIRL」はそんな想いで書き始めた曲だったりします。令和の新しい女性像が描けていればいいですね。着飾りスイッチを入れればたちまち強い感じで街を歩けるけど、家でひとり枕を濡らすときもある。弱い面を責めるんじゃなく、その自分がいるからこそ、もう一方の自分が輝きもするし、孤独な自分も本当は魅力的なんだよと。
──両面を肯定してあげてほしいっていう。
遼:はい。あと、上京後に恵比寿近辺でアルバイトをしていて、都会の喧騒に圧倒されていた頃のことも書きました。特に18時くらいに駅中の化粧室に入ると、“いざ出陣!”体勢の大人たちがマスカラをONしたり、煌びやかな服装に着替えたりしてたんです。なりたい自分に向かって歩いていく姿を見て、10代だった私はすごく憧れたんですよね。でも、バシッと決めた女性も家では泣いているかもしれないし、今夜は泣かないと思いながらメイクしているのかもしれない。表現したかったのは、そういう美しさですね。

──「PLAY GIRL」の編曲は、初タッグとなる笹路正徳さんです。
遼:私は弾き語りのデモにすべてを詰め込んだので、特にリクエストをする感じでもなく、お任せさせてもらいました。そしたら、自分が作った骨格を活かしたまま、思った以上におしゃれなアレンジにしてくださり、ストリングスが配された、オリエンタルでめちゃくちゃ自分の好きなタイプの曲になったんです。アン・ルイスさんの「あゝ無情」のような肩で風を切る女性像を頭に描いていたんですけど、そのイメージが笹路さんに伝わって80年代の邦楽ロックを体現できた喜びもありますね。
──笹路さんと直接やりとりはされたんですか?
遼:レコーディングでお会いしました。「作ったアレンジは自由に変えていいよ」「もっと力強いほうがよかったら言ってね」と気遣ってくださって、「こういうのどうかな?」といった提案もしていただき、私から引き出せるものを全部引き出してくれるような優しさがある、探求心が旺盛な方でした。ギターの土方隆行さんをはじめとするベテランのミュージシャンのみなさんと仕上げたこと、ライブみたいに“せーの!”で録ったことも印象に残ってます。
──実際にレコーディングで変えた箇所というのは?
遼:歌い方ですね。女性の強さが感じられるエネルギッシュなバンドサウンドにしていただいたので、ボーカルでは切なさにポイントを置いてみました。「独特なメロディラインを書くよね」と笹路さんに言われて気づいたのが、サビの“愛された分だけ”にちょっと悲しい、ブルースっぽい響きを持ったナインスのテンションが入っているんです。私は無意識で作ってたんですが、それで寂しげに聴こえるようです。
──サイケデリックな感じの間奏も素敵です。
遼:これも歌入れのときに閃いて、“Bye”の声を異なる色合いで重ねてみました。螺旋階段が脳裏に浮かぶような、思考のぐるぐるに吸い込まれていく様子を、遊び心があるアレンジで表現できたかなと思っています。“バイバイしたいのか!?”“本当の自分はどこ?”みたいな倒錯状態から、土方さんのソロがギューンと滑り込んでくる感じ。カッコよすぎてたまりません!
──アン・ルイスさんの「あゝ無情」の話が出ましたが、この前ラジオ(Little Black Dressがレギュラーパーソナリティーを務めるInterFM『TOKYO MUSIC SHOW』/毎週水曜20時から放送)で沢田研二さんの影響もあるようなことをおっしゃってましたよね?
遼:沢田研二さんのように“男”“女”と言い切る歌い回しだったり。沢田さんの楽曲に作詞で携わっていた阿久悠さんの影響がたぶん強くて、これも特に狙ったわけではないけど、少し哲学的な内容になることが多いですね。結果、今の時代になかなかない感じの曲ができているんじゃないでしょうか。歌謡曲を聴いて育ってきた身としては、思わず読みたくなる、眺めたくなる、“どんな意味なんだろう?”とワードの裏側を想像させる歌詞を目指しています。
──“男性”“女性”よりも“男”“女”のほうが、なんだか聴いていてしっくりくるもので。歌の中は特別だなと思いますね。日常会話と違う感覚がある。
遼:“愛してみたりして 脱がされてくあたしを 知ってしまいたくないの”のところは、沢田さんの影響があるかもしれません。服を脱ぐ=自分の着ぐるみを脱ぐという比喩が、私の歌詞にも似たような形で出てきました。
──「PLAY GIRL」のジャケットデザインも、沢田さんの『S/T/R/I/P/P/E/R』(1981年6月発表のアルバム)を彷彿とさせるような雰囲気があるなと思いました。
遼:そうですね。“ピンクのファスナーの向こう側には何があるんだろう?”と思わせるようなデザインにしていただきました。

──では、そろそろお時間なので、最後の質問です。レーベルを移籍されて、新しい年を迎えましたが、2025年のビジョンはどう考えていますか?
遼:もう着手し始めているんですけど、去年に続いてまたアルバムをリリースしたいです。築いてきた土台を活かしつつ、やってみたいこともいっぱいありますね。ジャンルやメッセージの縛りがない作品を妄想していたりするから、あっと驚く感じの曲が届けられるんじゃないかな。
──ライブを含めて楽しみにしてます。
遼:昨年はファンのみなさんが集まってくださる公演が多かったので、今年はLittle Black Dressを観たことがない方が来やすいようなライブもやっていきたいですね。そのために「PLAY GIRL」や『マイ・ワンナイト・ルール』、こういったインタビューを通して、まずは自分の存在を知ってもらえたら嬉しいです。年明けにたっぷり充電できたので、ここからまたがんばっていけそうです!

──リフレッシュできたんですね。
遼:岡山に帰省して、リフレッシュできました!私の知らない新たな価値観を、中学生の妹が教えてくれるんですよ。今は男子からじゃなくて、女子から告白する時代だとかね(笑)。ドラマのストーリーのように、あちこちでいろんな自由が芽生えているんだなと感じてます。
取材・文◎田山雄士
撮影◎荒熊流星
「PLAY GIRL」
2025.02.05 RELEASE
作曲・作詞:遼 編曲:笹路正徳
▼DL/Streaming
https://king-records.lnk.to/PLAYGIRLSS







