【インタビュー】由薫、新曲「Ray」が照らす繊細な恋の始まりと楽曲制作の新たなフェーズ「自分の境界線を超えていきたい」

■曲作りを新しいフェーズに持っていきたい
■「Ray」は試行錯誤しながら作った曲
──サウンド面はどうですか? シンプルな思いや言葉が際立つピアノの導入から音色がいろいろ寄り添っていく、優しい膨らみのあるサウンドとなっています。編曲の川口大輔さんとはどういったやりとりがありましたか?
由薫:川口さんにも曲が流れる映画のシーンをお送りしたので、「映像を意識しながら編曲した」とおっしゃっていました。 私も作りながら映像を見ていたので、デモの時点である程度ハマりは良かったんですけど、こういうシンプルな曲って展開を作るのが難しいんですよ。よりテンポ感を速くしてみたり、“静かなところから徐々に壮大になっていくけど、押しつけがましくないものにするにはどうしたらいいのか”とか、川口さんと話し合いながら編曲していただきました。「Ray」は、好きというピュアな気持ちがある上で、でもまだ一歩踏み出せるかわからない、みたいなグラデーションのある曲なので、できるだけ音を抜いてもらいつつ、シンプルななかでいかに情緒を紡いでいくかを一緒に相談しながら仕上げた感じでした。
──由薫さんのデモは歌と鍵盤による弾き語りだったんですか?
由薫:そうですね。私が使っているDTMソフトがすごく進化していて。コード進行や詳細を指定すると、そのイメージをもとにキーボードを弾いてくれる機能があるんです。
──コード進行やフレーズ作りのサポート的な生成機能を持った作曲ツールですね。
由薫:はい。もちろん、ソフトに弾いてもらった音をそのまま使うことはないんですけど、これを学んだことが自分にとってすごく大きくて。というのも、誰かとセッションしている気持ちで曲を作れるようになったからなんです。

──実際にはどういった作業を?
由薫:今回の「Ray」は、振り子のようなイメージで曲を作りたかったんですよね。だけど、その振り子のようなピアノの弾き方が自分の引き出しにはなかったので、いろいろとポチポチやりながら素材を作って。その素材と自分がセッションする感じで制作したことで、グルーヴというほどではないんですが、言葉の乗せ方だったり、メロディの乗せ方がうまくできたのかなと思います。そういう曲作り方法も今までになかったもので、今回初めて意識したところかもしれないです。
──そういったDTMソフトを導入したのも、年明けくらいからですか?
由薫:昨年末くらいから勉強を始めました。デモで自分の歌を録るときも、“ボーカルをどうやって録るか”とか勉強熱が高まっている状態ですね(笑)。ラフな声質で録るとあまり気持ちが乗らなかったりするので、自分の表現したい方向性の声を作ってから、メロディを書いたり、歌っている感じです。曲作りを新しいフェーズに持っていきたいという思いもあって、「Ray」は試行錯誤しながら作った曲でもあります。
──インタビューの最初のほうで、「Ray」は「手紙を書くように歌詞やメロディを書いていった」とおっしゃっていましたけど、歌の感じも、とてもクローズドな空間で静かにしゃべっているような感じがあります。実際のレコーディングではどんなことを意識しましたか?
由薫:レコーディング本番では、ブースの照明をちょっと暗くして歌いました。この曲を歌う上で意識したのは、その“手紙感”をどうやって声として表現するのかということでした。レコーディング前は、しっかり声を作り込んでから本番に入ることもあるんですけど、きっと上手すぎても違うのかなと思ったので、今回はあえて声のトレーニングやウォーミングアップをやりきらずに歌う作戦を立てました。 ナイーヴなAメロに説得力を出すためには、“歌い上げすぎるとよくないのかな”とか“でも不完全すぎるのも変だな”って。そのバランスを取りながら綱渡りするように歌いました。

──今回は制作にいろいろな挑戦があったんですね。 楽しさが増した感じですか?
由薫:はい、楽しかったです。さっき話したように、ひとりでセッションできるようになったのが大きいのかな。以前はアイデアが生まれても、それが落書きみたいになってしまうことが多かったんです。イメージ的には、その落書きをどうやってしっかり形にしてパソコンのフォルダに収めていくかが課題で。意外と、そうした技術面が曲作りに影響してくるんだなっていう学びがありました。今こうして、自分で作詞作曲することを大事にしているんですけど、なぜか逆に、他の方とのコラボレーションやセッションに誘ってもらえる機会が増えたりもしているんです(笑)。プライベートな範疇でも、たまにセッションしたり。
──フィーチャリングで参加した鷲尾伶菜さんの楽曲「Happy Ever After feat.由薫」が1月16日にリリースされましたし。
由薫:フィーチャリング参加させていただいたことも初めてだったんです。自分の殻に閉じこもることもありつつ、たまに誰かにその殻を割ってもらったり、誰かの制作を目の当たりにして、“なるほどこの人はこうやって作っているんだな”って意見交換することが、最近は交互にできていて。クリエイトっていう意味では素晴らしい環境にいさせてもらっているなと思っています。
──鷲尾伶菜さんとは、そもそも親交があってフィーチャリング参加した感じだったんですか?
由薫:いえ、今回が初めましてでした。お会いしたときに、私の声を気に入ってオファーしてくれたそうです。レーベルや事務所とか、そういう関わりが一切ない状態で声をかけてくれました。それってつまり、音楽だけで伶菜さんと繋がったということだから、すごいワクワクしましたね。めちゃめちゃ難しかったですけどね、曲は(笑)。
──自分の歌のリズム感やメロディの組み立て方とも違うでしょうから、刺激になりますよね。
由薫:それもまた新しい技術を手に入れるチャンスでしたから、 勉強になりましたね。
──「The rose」「echo」、そして今回の「Ray」と、由薫さんのいろんな顔が見えてくる3曲が完成しました。そして他のアーティストの曲にフィーチャリングで参加するなど、2026年に入ってからは、由薫さんのアーティストとしてのいろいろな側面を見せられていますね。そういったことも目標でしたか?
由薫:もともと今年の目標としていたのは、自分の色を強めていくことだったんです。だけど意外にも、いろいろな巡り合わせがあって、たくさんの新しい扉を開いていただく機会も多くて。自分ってそういう人なんだなって思いました。

──そういう人とは?
由薫:もともといろいろな音楽に興味があったり、 ジャンルも分け隔てなく聴いてきたので。そういう自分の姿勢が、いい意味で作用して、今後もいろいろな扉が開いていくといいなと思っているんです。ただ、“何でもやって、結果、何がやりたいのかわからない人”っていうことじゃなくて、自分の軸を持ちつつも、ジャンルや国の壁も全て越えていく人になりたい。フィーチャリングも嬉しいお話でしたし、タイアップで曲を作るというのも自分ひとりのなかからは生まれない有り難いことですし。恋愛のピュアな気持ちを書いてみるっていう試みも、今回のチャンスがあったからこそ挑戦できたことだと思うので、どんどん自分の境界線を超えていきたいと思っています。






