【インタビュー】ACIDMAN、大木伸夫が語る武道館公演の収穫と新たな挑戦「いつかは死んでしまう人生の中で、たった一滴の時間が“最高になった”と思えたら」

2026.03.31 18:00

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■生きるということとか死ぬということとか
■まっすぐに伝えていかなきゃいけないな

──ところで、武道館の玄関に飾られたお祝いの花を見ながら、「BRAHMANから来てないな」って大木さん、ツアードキュメンタリー映像で言ってましたよね?

大木:すごくニッチなところを(笑)。

──あのシーンは、さっきおっしゃっていたアキさんが選んだんですか?

大木:そうです。ドキュメンタリーのパートは、全部アキさんが使いたいところを選んでます。いや、別に花が来てなくてもいいんですよ。いいんですけど、TOSHI-LOWに会ったら言いますけどね(笑)。ネタとしてね。

──でも、あそこを使うっておもしろいですよね。

大木:アキさん、そういうのが好きなんです。そういう少し笑えるところを拾って、使ってくれるんです。ちょっとしたボケにもなるし、あのシーンが入ることでBRAHMANと僕らの支え合う関係性も伝わると思うし。

──その特典映像として加えられている1時間20分におよぶツアードキュメンタリーも見応えがありました。だから、U-NEXTで武道館公演を観た人も今回のBlu-rayは買ったほうがいいと思うんですよ。

大木:ありがとうございます。当日会場に来ていただいた方にも、ぜひBlu-rayで観ていただきたいです。

──各地セットリストを変えた今回の<ACDIMAN LIVE TOUR “This is ACIDMAN 2025”>は、バンドにとってひとつのチャレンジだったと思います。ツアードキュメンタリーの中で、「セットリストを変えることに対して、それが正しいのかどうかわからない」と大木さんは言っていましたが、ツアーを終えてみて、その答えは出ましたか?

大木:はい。結果、大正解だったと思います。それは武道館公演が本当に満足できる結果で終われたからだと思うんですけど。各地、いろいろなトライをさせてもらったおかげで、武道館の曲順がどんどん明確になってきて、セトリが作りやすかったんです。もちろん、そのために各地のセトリを変えたわけではないですけど、変えてよかったと思いました。ただ、アルバム『光学』のレコーディングも同時に進めていて、めちゃくちゃ忙しかったら大変でした。

──その渦中に行った昨年のBARKSインタビューでも話していただきましたね。

大木:はい。大体、ツアーのセトリって数週間掛けて固めるんですけど、毎回変えるってことは、ツアー中もずっとリハーサルをしなきゃいけない。でも、ライブとライブの間が1週間しかなかったんで、メンバーには申し訳なかったですね。毎回、1週間前にセトリを渡されて、そこから準備しなきゃいけないんだから、かなりの負担だったと思います。それでもやり遂げてくれたわけだけど、僕は僕でツアーのリハーサルが終わってから、アルバムの曲作りもしなきゃいけなかったから、へたしたら体を壊すかもと思いながら、結果、ツアーも武道館公演もうまくいったので、やってよかったと思います。

撮影◎Victor Nomoto – Metacraft

──各地、ファンのリクエストで1位に選ばれた曲だけ、前もって発表したセットリストの中で“ファン投票楽曲”として伏せられていました。1位になった曲に対して、大木さんが感想を語るMCもツアードキュメンタリーに収録されていますが、リクエストで1位に選ばれた曲については、どんなふうに感じましたか?

大木:うれしかったり、意外だったり、いろいろな感情が入り混じってました。各地でセトリを変えながら、予想もしていなかったリクエストがくるわけですよ。自分で企画しておきながら、“なんでこんなことを考えたんだろう”って(笑)。曲によっては、憶えてないものもあるんです。だから、思い出すところから始めなきゃいけない曲もあったんですけど、おかげでそれが自分たちの曲を客観的に見直す機会にもなった。“このギターフレーズ、こんなにカッコよかったんだ”とか、“こんなにいい言葉を歌ってたんだ”とか、改めてそう思えたことが自信に繋がったことがよかったし、昔から、いい曲が多かったんだって思いました。

──ツアードキュメント映像の中でも、他のメンバーさんが「大木の才能はすごい。いい曲を作り続けてる」とおっしゃってましたね。リクエストの中で、“これが選ばれるのか?”ってちょっとびっくりした曲もあったんですか?

大木:「永遠の底」かな。

──仙台で選ばれた曲ですね。

大木:「永遠の底」はアルバム『有と無』(2014年発表)の2曲目なんです。こういう曲が選ばれることはないと思い込んでいたというか。アルバムの幕開けと位置付けながら、けっこう自己満足に近い曲だったから。そういう曲を選んでもらって、“またライブでやれるんだ”という歓びがまずあったし、曲の世界観もスピリチュアルというか、生も死も有も無もない不思議な空間で、新たに何かが蠢き生まれていくみたいなファンタジーな世界を選んでくれたのがとてもうれしかったし。改めて、いい曲だなって思いながら演奏しました。

──MCでも「おぉー、うれしいな」とおっしゃっていましたね。

大木:そうでしたっけ。

──MCのどこを使うかも含め、ツアードキュメンタリーの演出もアキさんなんですか?

大木:もちろんそうです。ドキュメンタリーを撮り続けて残していくというのは、僕の考えではあるんですけど、リクエスト曲を各地撮るっていうのは、アキさんのアイデアでしたね。だから、僕はそれが使われるのかどうかわからなかったけど、結果使われていて、ワンコーラスとはいえ、ファンの方が各地でやったリクエスト曲を見ることができてよかったと思います。やっぱり今回のツアーの醍醐味のひとつだから、とてもいい演出ですよね。

──ツアー各地で収録した、ACIDMANへの思いを語るお客さんのインタビューもすごくよかったです。中にはACIDMANがきっかけで“薬剤師になった”とか“結婚した”とか、“生まれてくる子供にACIDMANの曲からALMAとつけようと思っている”とかっていう人たちもいて、ファンの人生に影響を与えているんだなと思いました。

大木:うれしいですね。ファンのインタビューは、<SAI> (ACIDMAN presents<SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI” 2022>Live & Documentary FILM / 2023年発売)のときや、これまでの映像作品でも見させてもらってます。毎回、編集に立ち会いながら、涙が止まらない。「20年前から好きでした」って、もう奇跡でしかないじゃないですか。この人たちに支えられているんだと思うと、本当に泣けるんです。このファンへのインタビューは僕らの支えになっていますね。

──“ACIDMANってこんなに愛されているんだ”ってわかるから、あれはファンが見てもうれしいと思いますよ。中には「親が聴いていたから、自分も好きになった」という若いファンの方もけっこういらっしゃったり、武道館公演で、まだ小さな男の子が「ACIDMANの一生懸命なところが好き」と言っていて(笑)。

大木:最高のホメ言葉ですよ。本当にありがたいですね。

──今回、<This is ACIDMAN>を初めてツアーという形でやってみていかがでしたか?

大木:終われば、あっという間でしたけど、楽しく呑気にやっていたわけではないから、今振り返ってみれば、かなりしんどかったと思う。でも、その一方では“それが旅(ツアー)だよな、それが生きるってことだよな”とも思う。結果、大きな満足感は得られたんですけど、同時に、僕にはまだまだやりたいことと、やらなきゃいけないことが山積みだということにも気づかされました。ひとりでも多くの人に、音楽を使って、生きるということとか、死ぬということとか、平和とか愛とか、そういうものをまっすぐに伝えていかなきゃいけないな、という決意を新たにしたツアーになりましたね。