【インタビュー】GLIM SPANKY、2年4ヵ月ぶりアルバム『Éclore』に今だからこそ大切なこと「何が本当か、自分は何を信じるのか」

2026.03.27 20:00

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「お前は今の人生に満足しているか?」
14歳の私が今の私に問いかけている

──「麗らかな国」は、コクトー・ツインズやビーチ・ハウスのような雰囲気があります。

亀本:この曲は、たしか2020年頃に作りました。当時はLana Del Reyとか、Florence + The Machineみたいな、ちょっとインディー感があってウェットな感じのものに憧れていて、そういう方向をやろうとしていたんです。

松尾:歌詞を書いていた時期、私は毎日が本当にしんどくて。コロナ禍だったこともあって、“ここから抜け出せない” “自分には未来が見えない”みたいな感覚がすごくありました。対人関係でもいろいろ悩んでいて、常に“ここから抜け出したい”と思っていました。それもあって、仕事に疲れたOLが終電間際の電車に乗って、“このままどこかに行きたい”と思っている歌詞にしたんです。最初はそこで終わりだったんですけど、レコーディングの最後の最後に“彼のいない麗らかな国”という言葉を付け足したことで、主人公の輪郭がクリアになったんですよ。“彼のいない”とひとこと入れたことで、抜け出せない関係性に自ら気づき、そこから抜けようと“決心する”曲になった。リアルな心情を歌いつつも、ただ“辛い”だけの曲にはしたくなかったので、少しだけファンタジーを入れようと“ネバーランド”みたいな言葉も出てきます。いずれにせよ、幻想に逃げたくなるくらいギリギリの状態にいる人を描いています。

──「衝動」は、ベストを作っていた時に“GLIM SPANKYらしい曲を作ろう”と思ったところから始まった曲だそうですね。

亀本:まず、めちゃくちゃダウンテンポなロックをやりたかったんですよ。ただ、そのままJ-POPのシーンに投下しても絶対ダメだと思ったので、リフも実は何パターンも作っているし、最終的に“ギターだけでは弱いから声も重ねよう”と。じゃあ、歌が乗ってもちゃんと成立するギターリフってどんなだろう?……みたいに考えながら作っていきました。リズムの迫力を出すために、キックにはサンプルをたくさんレイヤーするなど、工夫もかなり凝らしています。特に気に入っているのがサビ終わりですね。歌はフレーズを追っているんですけど、コード進行がない。みんなオクターヴでフレーズを弾いているだけなんです。ポップスって基本的にはコード進行の音楽じゃないですか。だからこそ、あそこはチャレンジングだったし、すごく気に入っています。ライブでやるたびに、毎回“ここ、マジでカッコいいよな”って思いますね。

松尾:カッコいい。私も気に入っています。

──「わたしはあなた」は個人的に今回一番好きです。

松尾:ありがとうございます!

亀本:この曲は最初に僕がコードを付けて、ピアノも先に入っていました。それに対して歌ってもらう形で作ったんです。

松尾:亀から送られてきたピアノが、強く方向づける感じではなくて自由度が高かったので、メロディーもけっこうスッと出てきたんです。Aメロのあたりは特に、歌とメロディーのイメージがかなり自然に出てきた感じでしたね。

──ラブソングのようにも聴こえるけど、死別や別れがあった相手に対して、“まだどこかで幸せに生きていてくれたらいいな”と思い出させてくれる曲でもありますよね。

松尾:さっきも話したように、この曲を作っていた頃に私は祖母を亡くしたんですけど、“(祖母とは)ただ会っていないだけで、どこかで生きているかもしれない”と思うことが、自分の救いになったりしたんです。
あるいは、すごく仲が良かった人と離れ離れになった時に、“この人はもう死んだんだ”と思うことで、逆に整理がつく瞬間もある。そういうタイミングが自分の中にすごくあって。ある意味、自分を守るための歌でもあると思っています。この曲で好きなのが、最初は“わたしはあなた あなたはわたし“って歌っていて、“おんなじ皮膚の匂いがした”とも言っているんですけど、2番では“でも、私は私、あなたはあなた“になっていくところなんです。あんなに同じ匂いがするけど、やっぱり違う生き物なんだ。だからこそ綺麗なんだ、という。そこの感覚はすごく気に入っています。夢の中の感覚みたいでもあって。

亀本:松尾さんが今まで作ってきた曲の中でも、僕はこれが一番かもしれないです。

松尾:本当に?

亀本:歌い始めのメロディーとか、本当に美しいと思う。

──「FLY HIGH」は、情報がたくさんある今、どう生きていくかを歌っている曲です。

松尾:夜の環七を歩きながら聴きたくなる曲がいいなと思って作りました。最初にオケがあって、そこに歌詞を載せていったんですけど、説明っぽい歌詞にするというよりは、もう少し軽やかなものにしたかった。信念はあるんだけど、重すぎないメッセージというか。全部が全部、思い切り重い言葉だと、やっぱり聴いていてしんどくなっちゃうじゃないですか。だからこの曲は、あえて少し軽さを出したかったんですよね。その意味で、英語を入れたのも大きかったです。

──LOVE PSYCHEDELICOっぽさもありますよね。

松尾:確かに。デリコ(LOVE PSYCHEDELICO)と一緒に歌詞を作っていた時に、意味がちゃんと通っていれば、わりと自由に言葉を当てはめていく感覚があって。今まで自分が歌う時は、英語を入れるとしても、できればカタカナで書いていたんです。たとえば「I Stand Alone」も全部カタカナで書いていた。でも今回は、そういう自分の中のNGをOKにしたところがありますね。デリコと作った時の感覚を通して、“ああ、このくらいの軽やかさって、繰り返し聴いても疲れないんだな”と思ったんです。

亀本:これはかなりライブを意識しました。フジロックみたいな場で、ちょっとミディアムテンポ寄りで気持ちよく乗れる曲があるといいかもなと思って。そこも想定しながらテンポ感を考えていきましたね。ちょうどOasisのライブを観に行ったことも大きかったです。テンポ感そのものは違うんですけど、Oasisの持っている、こういうコード進行とか、ベタだけどちゃんとカッコいいメロディーとか、そういう感じがすごく頭にあって。“ロックって、もうこれでいいよな”みたいな感覚で作りました。

──「カメラ アイロニー」は、TBSドラマ『スクープのたまご』主題歌として書き下ろされた曲です。

松尾:ドラマの世界観に寄せつつも、自分はもっと広いことを歌いたかったんですよね。たとえば音楽をやるとか、ロックが好きだとか、何でもいいんですけど、それを受け付けない人ってやっぱりいるじゃないですか。実際、この前テレビに出た時にも、「その声は無理」とか「もっとちゃんとした声で歌えばいいのに」とか言われたりして(笑)。でも、そういうふうに言う人は絶対にいるし、どうしてもダメな人はダメなんですよね。だからこそ、別に嫌われたっていいと思うんです。自分はずっと「なんでそれをやるの?」と言われる側だった気がしていて。去年、久しぶりに同級会に行ったら、私以外みんな結婚していて子どももいて、私だけ違った。でも、それはそれでいいと思っているんです。自分は今、音楽をやっていて、これが今の自分にできる精一杯だから。別に自分以外の何かを拒否しているわけじゃなくて、今はこれを生きているだけなんですよね。

──とてもよくわかります。

松尾:人生って、何を選んでもそういうものだと思うんです。どの選択をしても、誰かにとっては受け入れられないことがある。でも、自分の中にちゃんと良心があって、自分で選んでいるなら、それでいいんじゃないか。悪者に見える人でも、その人の側に立てばその人なりの正しさがあるし、そういう目線を今は歌いたかったんです。

──最後の「エクロール」も名曲ですね。ビートルズやサイケデリックの匂いがしながら、同時にすごくJ-POP的でもあって。その融合の具合がすごく自然だなと。

松尾:ありがとうございます。ずっとジョニ・ミッチェルを練習していたんですよ。彼女みたいなギターを弾きたいなと思って、アコギにすごくハマっていて。ハンマリングとかプリングオフを使って、AとかDみたいな単純なコードの中に少しニュアンスのある音を入れているんですけど、そこはジョニっぽさを自分なりに落とし込んだものなんです。

──歌詞も、このアルバムを象徴する内容ですね。

松尾:ちょうど歌詞を考えていた時、私の出身地である長野県豊丘村から手紙が届いたんですよね。中学2年生の時に『20年後の自分に手紙を書こう』という企画があって、その時に書いた手紙が、ちょうど自分のところに届いた。本当にすごいタイミングでした。しかも14歳の私から、今の私に向かって「お前は今の人生に満足しているか」と問いかけているんですよ(笑)。確かに、自分は今の人生や、自分がしてきた選択に満足しているんだろうか……とすごく考えた。さらにその手紙には、「たぶんお前は、みんなが思い描くような、村の会社に就職して結婚して……みたいな人生は歩んでいないだろうな?」とも書いてあって。

──すごいですね、14歳の松尾さん(笑)。

松尾:そこで自分の人生を振り返ってみた時、日常の中では“ああすればよかった” “こうすればよかった”みたいな小さな後悔や失敗はいくらでもあるけど、自分はひとつひとつの選択を本気で悩んで決断してきたので、それほど大きな後悔はないんですよね。手紙を書いている頃の自分に対して、ちゃんと「頑張って生きてるよ」と言えるし、これからもそう生きたいなと思ったんです。しかも、20年前の親友からの手紙も同封されていたんですよね。「今はレミの一番そばにいて、この中学時代の今この瞬間では一番近い存在だけど、近いから親友なんじゃなくて、もしこの先大人になって遠くに行ったとしても、ずっと親友だよ」みたいなことが書いてあった。それが本当に嬉しくて。私は私の場所で、その友達は友達の場所で、進化を繰り返しながら大人になっていって、今もそれぞれの人生を続けている。たまに会った時に、その進化の過程を一緒に楽しめる存在であればいいな、と。そういうことを考えた時に、この歌詞がすごく自然に出てきました。

亀本:この曲の個人的なこだわりポイントは、途中のDメロですね。あれを入れたタイミングが、ちょうどOasisのライブを観た後だったんです。これも完全にOasis。隙あらばOasisを入れていこう、みたいな。

──今回のアルバムは、松尾さんのパーソナルな部分が前に出ていて、誤解を恐れずに言えば、GLIM SPANKYでありながらシンガーソングライターとしての松尾レミさんの要素がより濃く出ているように感じました。それでいて普遍性もある。

松尾:確かにそうかもしれないです。今回、私が寝込んでいたぶん、楽曲のメロディーだったり録音の部分だったりを、亀がかなり作ってくれたところがあって。その部分をすごく担ってくれたんですよね。仕事量としては本当に亀がめちゃくちゃやってくれているんですけど、だからこそ私は歌詞と歌の表現にすごく集中できた。ぱっと聴いた時に、歌い手のパーソナルな感情がより読み取れるようになったのは、そこに力を込められたからかなと思っていますね。

──おっしゃるように、亀本さんの職人的な仕事もかなり詰まっているアルバムです。

亀本:作っている時は、ずっと不安でした。大丈夫かな、ちゃんといい曲になるかなって。仮歌もないままバンド録りをしている時もあったし、演奏のテンション感も探り探りでやっていたので、“これ大丈夫かな”と思いながら作っていたんです。でも、完成して時間が経って、少し客観的に聴けるようになると、すごく素敵なアルバムになったなと。奇を衒っているわけでもないし、変なことを無理にやっているわけでもない。もちろん、“これがヒット間違いなしだ”と言い切れるかというと、それはわからないです。出してみないとわからない。でも、こういうレベルのものを作っている人たちは絶対に消えないし、自分たちももしかしたらそういうところに近づいているのかもしれないなと。そう感じられたことが、自分の中ではちょっと自信になりましたし、手応えのあるアルバムに仕上がったと思いますね。

取材・文◎黒田隆憲

 

『Éclore』初回限定盤
『Éclore』通常盤

■アルバム『Éclore』(読み:エクロール)
2026年3月25日(水)発売
CD販売リンク:https://glimspanky.lnk.to/eclorePR

【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
TYCT-69382 7,500円(税抜)
・CD収録内容:全10曲
・Blu-ray収録内容:2025年6月27日<All the Greatest Dudes Tour 2025>味園ユニバース閉店前ラストワンマンライブ映像全曲収録
・デジパック仕様
・ブックレット32P
【通常盤(CD)】
TYCT-60261 3,300円(税抜)
・CD収録内容:全10曲
・ブックレット24P

▼CD収録内容 ※全形態共通
01.第六感
02.大天使
03.春色ベイビーブルー
 ※FODオリジナルドラマ『こないだおばさんって言われたよ』主題歌
04.あたらしい物語
05.麗らかな国
06.衝動
 ※『BYD SEALION 7』CMタイアップ曲
07.わたしはあなた
08.FLY HIGH
09.カメラ アイロニー
 ※TBS系ドラマストリーム『スクープのたまご』主題歌
10.エクロール

▼Blu-ray収録内容 ※初回限定盤
<All the Greatest Dudes Tour 2025>6年27日 大阪・味園ユニバース
・衝動
・TV Show
・不幸アレ
・BIZARRE CARNIVAL
・The Flowers
・THE WALL
・愛が満ちるまで
・吹き抜く風のように
・怒りをくれよ
・ラストシーン
・HEY MY GIRL FRIEND!!
・話をしよう
・闇に目を凝らせば
・ストーリーの先に
・Hallucination
・The Goldmine
・Fighter
・赤い轍
・Circle Of Time
encore
・大人になったら
・リアル鬼ごっこ

【購入者特典】
●全形態共通CD封入特典
『Éclore』初回限定盤と通常盤(初回プレス分のみ)にスペシャル企画の応募抽選用シリアルナンバーを封入
●スペシャル企画
・『Éclore』応募スペシャル企画
・<Éclore Tour 2026>チケットCD先行予約
詳細:https://www.universal-music.co.jp/glim-spanky/
※本企画は参加ご希望の会場のライブチケットが必要です。チケットをお持ちでないお客様の参加はできませんのでご注意ください。
●<Éclore Tour 2026>チケットCD先行予約(抽選)
CD封入先行受付サイトはCDに封入のチラシでご確認ください。
抽選受付期間:3/25(水)12:00〜4/15(水)23:59
当落確認期間:4/18(土)15:00〜4/21(火)23:00

●店舗別CD購入特典
・UNIVERSAL MUSIC STORE:缶バッジ
・TOWER RECORDS:キーホルダー
・Amazon.co.jp:アクリルコースター
・楽天ブックス:スマホサイズステッカー
・その他一般店:ポストカード
▼注意事項
※一部お取扱いのない店舗・インターネット販売サイトもございます。詳しくはご購入ご希望の店舗へお問い合わせ下さい。
※一部インターネット販売サイトでは特典付き商品のカートがございます。特典をご要望のお客様は詳細をご確認の上、特典付き商品をお買い求め下さい。
※購入特典は先着の特典です。なくなり次第終了となりますので、特典をご希望の方はぜひお早めにご予約ください。
※CDいずれか1枚購入につき1つ特典を差し上げます。
※オリジナル特典対象店舗ではその他一般店特典は対象外となります。

 

■全国ツアー<Éclore Tour 2026>
6月14日(日) 横浜ベイホール
6月19日(金) 神戸チキンジョージ
6月21日(日) 岡山YEBISU YA PRO
7月03日(金) 札幌PENNY LANE24
7月05日(日) 仙台GIGS
7月10日(金) 福岡DRUM LOGOS
7月11日(土) 熊本B.9 V1
7月18日(土) 郡山HIP SHOT JAPAN
7月20日(月/祝) 長野市芸術館 メインホール
7月31日(金) 新潟LOTS
8月02日(日) 金沢EIGHT HALL
8月09日(日) 広島CLUB QUATTRO
8月11日(火/祝) 高松DIME
8月14日(金) 名古屋市公会堂 大ホール
8月20日(木) NHK大阪ホール
8月27日(木) LINE CUBE SHIBUYA
詳細:https://www.glimspanky.com/

 

■GLIM SPANKY<music from NANO universe>
5月29日(金) ビルボードライブ東京
※1日2回公演
・1stステージ open17:00 / start18:00
・2ndステージ open20:00 / start21:00
▼GLIM SPANKY
松尾レミ(G,Vo)
亀本寛貴(G)
▼Support Member
栗原大(B)
かどしゅんたろう(Dr)
中込陽大(Key)
▼チケット ※飲食代金別
・DXシートDuo ¥20,400-(ペア販売)
・Duoシート ¥19,300-(ペア販売)
・DXシートカウンター ¥10,200-
・S指定席 ¥9,100-
・R指定席 ¥8,000-
・カジュアルシート ¥7,500-(1ドリンク付)
【FC先行(イープラス・抽選)】
受付期間:3/19(木)18:00~3/29(日)23:59
【Club BBL会員・法人会員先行(ビルボードライブ)】
受付開始:4/4(土)正午12:00
【ゲストメンバー・一般発売(ビルボードライブ/e+)】
受付開始:4/11(土)正午12:00
(問)ビルボードライブ東京 03-3405-1133

 

 

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