【インタビュー】ASIAN KUNG-FU GENARATION、『フジエダ EP』とシングル「スキンズ」発表、そして結成30周年の充実ぶりを語る「今年はツアーもやりながらアルバム制作したい」

2026.03.24 18:00

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■愛と正義が一番人を殺してる
■これを一回脱ぎ捨てないといけない

──そして3曲目がスピッツの「ナンプラー日和」のカバーです。

後藤:スピッツを何か1曲やろうということで、みんなでいろいろ話し合って。「夢追い虫」とか、「8823」もいいよなぁとか。

喜多:候補は何曲かあったね。

後藤:ド直球の大名曲はちょっと違う気もするな、とか思いながらね。でも、あらためて聴いたらいい曲だらけで、“スピッツやっぱりすげえな”と思って。その中でも「ナンプラー日和」をパンクっぽくやったらいいんじゃないの?みたいに思いついて。それで「俺、ターンスタイルとかみたいにやりたいんだよね」という話をみんなにしたんですよね。で、「沖縄音階でパンクっぽくやったらカッコいいんじゃない?」みたいな。

喜多:うん。したよね。

──そうか、ターンスタイルね。で、スピッツのオリジナルより全然速いし、激しくなってますね。

後藤:そう。速くしました。

──そもそもスピッツの「ナンプラー日和」は、ゴッチにとってはいわくつきの曲ですよね。昔、草野(マサムネ)くんと…

後藤:あ、失敗した話ですね。俺、この曲を「チャンプルー日和」って紹介しちゃったことがあったんですよ。自分たちのラジオ番組(TOKYO FM / 2005年)で。

──ですよね。そのことを、ゴッチ自身が編集していたメディアのTHE FUTURE TIMESでも草野くんと話してましたよね。それが2013年のことで。

後藤:そうなんですよ。だってこれ、スピッツのオリジナルはサウンドだけ聴いたら、絶対に「チャンプルー日和」ですよ。

──わかります。何しろ沖縄っぽいから(※チャンプルーは沖縄の家庭料理)。

伊地知:そうしたらナンプラー(※タイの調味料)だった、という(笑)。

後藤:「ナンプラーかぁ! 絶対チャンプルーだと思ったのに~!」みたいな(笑)。

喜多:わざとそんなふうに作られたんじゃないかな? これ。たぶん、そういうところは。

後藤:まあ、そういう意味でも、間違えちゃったのも何かの縁かなと思って。

──縁ですか。それが20年越しに回収された形になりますね(笑)。

後藤:それで僕、三線は持ってないけど三味線は持ってるから、弾いて足そうと思ったんです。それでスタジオに持って行って、三味線のケースを開けたら、皮に穴空いてて。“あー忘れてた、ブッ壊れてたんだ”って(笑)。“これ、もうどうにもなんないや”と思って……ウクレレにいろんなバネみたいなのを挟んだりして、わざと音が濁るようにして鳴らしました。三味線の構造は知ってるから。

喜多:あのウクレレ、生きてるよ。結果的に(笑)。

──激しめにアレンジしたという話でしたが、そこはどうでした?

山田:最初はもっと速くて、でもそうするとこのシャッフル感が薄まっちゃうんじゃないか、みたいなのがあったし。ギターフレーズもこれをずっと繰り返すのは限界がありそうだったし。

後藤:鬼ムズなんですよ、これ! このテンポじゃなくても。最難関かもしれない(笑)。

山田:で、テンポを気持ち落として。建ちゃんが「これなら大丈夫かな」というところまで。

喜多:そうそう。俺が「BPMをもう5落とそう」って、直前に言って。あまりに高速でね。泣きながら(笑)。

──喜多くんのボーカルも入ってますね。

喜多:あ、そうですね。それはプリプロの段階で、途中のミドルエイトというか、あそこの部分は「唄ったら?」って言われて。

後藤:ハッとするなと思ってね。出てきたら。

喜多:で、山ちゃんもコーラスしてるから、ちょっとツインボーカルみたいな感じになってますけど。

──あそこは山田くんも声を重ねてるんですね。そして最後の曲「ペダルボート」は味わい深い歌ですが、さっきのクラウドファンディングの話で納得したけど、つまりはじめから藤枝が舞台の曲なわけですね。歌詞の“藤の花の咲く頃 パンダの形のレジャーボートで漕ぎ出そう”は、おそらく藤枝市の光景ですよね。藤はこの市の花らしいし。

後藤:そうですね。蓮華寺池公園っていうところで、藤の花が咲くんですよ。そこにあるパンダ型のレジャーボートのことを唄っているんですが、その後に続く“道が曲がりくねっても 君のこと忘れないって 彼らが歌ってる”というのは、スピッツのことですね。

──彼らの「チェリー」の歌詞ですね。

後藤:そう。で、チェリーというホテルが藤枝の廃墟としてあって、そこがすごく曲がりくねった道を登っていくとあるらしいんです。だから藤枝の都市伝説として、「チェリー」はあのラブホテルのことを唄ってるんじゃないか?っていう。

──リズム隊はどうでしたか? 「ペダルボート」の録音は。

伊地知:元々は出来上がってた曲で、それはリズムが入ってない状態だったんです。ただ、ゴッチのデモ音源にはリズムがあったので、それを自分で作り変えてやろうと思っていたら、シモリョーがけっこう作ってくれて。それをまた自分なりにアレンジし直したんですね。おかげで、ちょっと面白い感じになりました。自分の引き出しにないようなパターンがいくつか入ってます。

山田:自分もシモリョーがアレンジしてくれたデモが最初にありましたからね。ただ、コードがめちゃめちゃ難しくて、そこは彼に助けてもらった感じでした。

──シモリョーくんは、サウンド面での交通整理をしてくれてるみたいですね。

後藤:やっぱり才能のあるやつなんで、積極的に起用するっていう。ここまで話聞いててわかる通り、シモリョーに伝えてもらうと、メンバーが言うこと聞いてくれるんですよね。僕と話したことを、シモリョーがみんなに伝わりやすくしてくれてる。僕がメンバーに直接言っても、LINEのヘンなスタンプマークみたいなのしか、つかないから。

──ふだんはそういうリアクションなんですね(笑)。それとこの曲の喜多くんのスライドギター、素晴らしいです。

喜多:ああ、良かった! ありがとうございます。ここまでのスライドギターは入れたことがなかったので。いなたい感じで弾きました。

──というわけで、ここまでがEPの話でしたが。これに続いて、4月にはシングル「スキンズ」がリリースされるんですね。

喜多:そうですね。すぐ出ます。

──カップリング曲も収録されるそうですが、もう出来ているんですか?

喜多:出来てます。この間レコーディングをやったところです。

後藤:まだミックスが終わってないけど、録りました。

──じゃあその2曲がシングルに入るわけですね。そのメインとなる「スキンズ」ですが、これはタイアップ(TVアニメ「Dr.STONE SCIENCE FUTURE」第3クールオープニングテーマ)ありきで書いたんですか?

後藤:タイアップだって言われましたね。で、書きました。

──そこでまた「疾走感を」とかは、言われなかったですか(笑)?

後藤:疾走感は、以前のオーダーにはだいたいデフォルトで入ってたんですけど……(笑)。

伊地知:今回はなかった。

山田:今回は、あえてそこは避けてあったんじゃないかな。

喜多:書いてあったとしても、レコード会社のスタッフによって…

後藤:修正ペンで、わかるように消してあったかもしれない(笑)。

山田:“みんなに絶対言われるな”と思って(笑)。

後藤:だってKANA-BOONの曲(同じアニメ作品の別クールの主題歌だった「SUPERNOVA」)も、別に疾走感はなかったもんね。

喜多:今回の話をいただいて、最初に3人だけ(後藤以外)でスタジオに入った時、今までの主題歌を聴いたんだよね。「ああ、こんな感じか」「そんなに疾走感にこだわらなくてもいいかもね」っていう話はしました。

後藤:フジファブリックとかもだったもんね。「そうか、疾走しなくていいのか」と。

喜多:ダイちゃん(金澤ダイスケ)の曲ね。「楽園」か(同作品シリーズ主題歌)。

後藤:確かにこれ、「疾走しなくていい」と言われたかもしれない。リファレンス、何だった?

喜多:ちょっとミドルテンポのやつだったかもしれない。

山田:「ワンダーフューチャ―」とかね。

後藤:ああ、「ワンダーフューチャ―」か……じゃあ100点満点の回答じゃん! 何も話を聞いてないで作ったのに(笑)。良かったです。

──そうでしたか(笑)。で、この歌のテーマが…

後藤:いや、ただもう反戦歌を作ろうと思って、作りました。

──そうですね。そういう内容になってますね。

後藤:反戦歌を唄っていいんじゃないかと思いました。『Dr.STONE』はみんなで文明をやり直すみたいなストーリーだから、そういう視点で絶対ハマると思って。ただ、社会や政治に関するメッセージをワッ!と直接的に唄うことが素敵なことでもないと思うので。アニメが好きな人も“いいな”と思えて、ある種、社会的な課題に向き合ってる人たちも“ああ、こんなことを唄うんだ”と思ってくれるようなね。それとはまったく別の人たちも新しい意味を見出してくれるほうが、詞にとっては素敵なことだと思うんです。それこそが詞の力だと思うので。で……とりあえず“愛と正義を一回脱がないと無理だな”と思ったんですよね。

── 一回脱ぐ?

後藤:うん、裸になるという意味で。結局、「新世紀のラブソング」でも唄ったことですけど、とりあえず愛と正義が一番人を殺してる。なので、やっぱりこれを一回脱ぎ捨てないといけない。

──うんうん。それぞれの立場から、自分たちの愛と正義を振りかざすことが。

後藤:で、裸になって、素肌を確かめる。“私たちは同じ人間なんだ”ってことを確かめないといけない、っていう。

──人間という生き物の視点で捉えないといけないということですね。人種とか国境とかではなくて。

後藤:うん、そうです。だからみんな、鏡を見たりして、“誰もが同じ星で生きてんだよ”みたいなことを感じてくれたらいいと思うんですね。

──その通りですね。そしてサウンドは繊細でありながら力強さもあって、それでいてポップで。すごくいいバランスで着地していると思います。

喜多:ありがとうございます!