【インタビュー】PassCode、 南菜生が語るシングル「Liberator」の無垢な強さと自由への決意「大事なのは“この4人である”ということ」

2026.03.05 18:00

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■真面目な感じに見られたかった(笑)
■イロモノじゃなく見られたかった

──この4人であること自体がPassCodeの強さだと言い切れるようになったのも、南さんが南さん自身を赦せたからなんでしょうね。それによって、それぞれの大事なもの持ち込める場所になっていったというか。

南:そうですね。メンバーやチームのことが大事なのは昔からなんですけど、それぞれがより自由で楽しく続けられる場所にしたいと思うようになりました。これはあんまり話してないことですけど……今も、元メンバーの今田(今田夢菜/2021年に体調不良により勇退)と連絡をとったりご飯に行ったりすることがあるんですけど、やりたくてもやり切れなかったメンバーがいる中で、私達は新しいメンバーを迎えて続けることを選んでいるわけじゃないですか。そう考えると……こう在りたいとか、売れたいとか、いろんな気持ちがあるけど、何より、自分が楽しいと思えるPassCodeを作り続けることが一番大事やと思うんですよね。そういう意味でも、芯は変えずにいろんな挑戦をしていけたらいいし、続けたかったなって思ってもらえるグループでいたいじゃないですか。あんなグループ辞めてよかったとは思われたくない。それがこの先に対して考えていることですね。

──前作『INSIGNIA』の豊かなバラエティも、そういう感覚から生まれてきたものかもしれないですよね。ハイでバキバキでラウドな楽曲に留まらず、いわゆるJ-ROCK的な楽曲も、シンセよりギターがモノを言っている楽曲も増加している。先ほどの「鎧を着ていた」という話にも通じますが、実はいろんなジャンルの成功法を避けることでユニークさを演出してきたのが、今ではこの国におけるストレートな音楽性を真っ向からやれるようになってきた。今回の「Liberator」はまさにそうですけど、ストレートをやることがむしろ新しい世界に繋がるという逆説的な新鮮さが今のPassCodeにはありますよね。

南:本当に『INSIGNIA』(4thアルバム / 2025年6月発表)ではいろんなことができたと思っていて。振り返ると、インディーズの頃のほうがもっといろんな楽曲をやっていたと思うんですよ。可愛らしい楽曲もあり、ハードな楽曲もあり、おもちゃ箱みたいな感じだった。でもそれは、ただやりたいことだけを詰め込む遊びの延長線上だった気がしていて。そういう部分がアップデートされたのが今のような気がしますし、自由で身軽になったからこそ、シンプルなことも真っ向からやれるようになったんやと思います。

──そもそもアイドルとラウドミュージックの合体自体が節操のないことですし、音楽の起源や思想に関係なく、勝手に音楽を混ぜてしまえることが日本の独自性になってきたと思うんです。その中でPassCodeの音楽は特に、アイドルという器の中でレイヴミュージックとラウドミュージックとJ-POPをごちゃ混ぜにする音楽闇鍋ですよね。そういう日本的な音楽の節操のなさは長らく“ガラパゴス”と揶揄されてきたわけですけど、ストリーミングサービスが台頭して世界中の人が音楽を横並びで聴けるようになって以降は、その“ガラパゴス”が“世界唯一の独自性”に反転してきた。音楽の土壌自体が変化したというか。そうやって音楽の土壌を俯瞰してみても、この節操のない音楽スタイルで動きやすくなったところはあったんじゃないかなと思うんです。こう言われてみて、ご自身はどう思います?

南:この数年の土壌の変化でいうと、コロナ禍でのライヴが大きかったですね。人と人の間のスペースを空けて、ひとりでライヴに没頭せざるを得なかったじゃないですか。なのでアグレッシヴな音楽よりもひとりで没入できる音楽のほうが体験しやすい状況だったわけですけど、アグレッシヴな音楽を軸としてやってきたPassCodeはどうしたらいいのかな?と思って。その時に考えたのが、そもそもいろんなスタイルを混ぜてきたグループなんやから、このままのPassCodeでもいろんなお客さんにアプローチできるはずやっていうことだったんですね。それでライヴを続けて、実際に新しいお客さんも観に来てくれるようになったんですけど、コロナ禍前の感じでクラウドサーフをするお客さんと、それに慣れていないお客さんが共存するようになったことで、ライヴが上手く機能しない時期もあったんです。だけど私は対話することを大事にして。時にはお客さんと喧嘩することもありましたけど(笑)、誰よりも自由に音楽と人を混ぜる場所にしていこうと決意できたのはその時期でしたね。

──そういう対話であり、そういう喧嘩ですね(笑)。

南:はい(笑)。女の子だからとか、ヘヴィな音楽だからとか、そういうラベリングを取っ払って、とにかく自由な場所にしていきたいと思った。それが楽曲のバリエーションとか、さらに自由なスタイルに繋がっている気がしていて。逆に言うと、ずっと孤独な場所で活動しているグループだとは思うんですけどね(笑)。この先輩についていくとか、この界隈と仲よくするとか、そういうことがなく、本当に節操なく自由にいろんなものを取り入れて活動してきたから。もちろんそれが人の真似にならないようにすべきですし、その上で大事なのが、やっぱり“この4人である”っていうことなんですよね。用意されたものではなく、自分達自身が感じることを素直に発していくこと。やっぱりそれが一番のオリジナリティになるんやと思います。音楽的にも見せ方的にも“PassCodeはこうじゃないといけない”っていうのがなくなって、どんどん人間に根ざすようになってきたというか。なので、もし盆踊りみたいな曲がきても今は驚かないんじゃないですかね。

──盆踊り、いいじゃないですか。

南:はははははは。本当に、盆踊りをやったとしても驚かないくらい、節操なく自由なグループになってきたんですよね。実際、平地さんは、土着的な感じをやりたがってるんですけどね。沖縄の音楽とかが好きなので、平地さんは。昔はそういうトリッキーな曲が来たら“見られたいPassCode像と違うなあ”とか思ってたんでしょうけど。

──どう見られたかったんですか。

南:真面目な感じに見られたかったです(笑)。洗練された印象というか、イロモノじゃなく見られたかった。なぜかと言うと、散々イロモノ扱いされてきたので。女性アイドル、メタル、シャウト……今でこそ「節操なく自由にやりたいです」と言えますけど、いろんなものがゴチャっと混ざっている音楽はやっぱりイロモノとして受け取られることが多かったんですよね。だからこそMCや発信がストロングスタイルなものになっていたんでしょうし、正統派に見られたい気持ちが先にあって鎧を着てた気がするんです。でもそうじゃなかったんですよね。そもそもいろんなことができるグループだったわけだから。見られたい自分でいることよりも、どこにでも行ける自由な自分であることが大事なんですよね。どんどん新しいことをやって、いろんな仲間を増やしに行きたい。