【ライブレポート】BAND-MAID、ワールドツアー開幕。高まり続けていくバンド力

試行錯誤を続けていくことで自己ベストが更新されていく。それはスポーツなどに限ったことではない。4月11日、KT ZEPP YOKOHAMAで行なわれたBAND-MAIDのお給仕(=ライヴ)を観て、ふとそんなことを考えさせられた。
彼女たちの<BAND-MAID WORLD TOUR 2026>は3月20日に香港で幕を開けたばかり。さらに22日に広州で開催された<MEGAPORT FESTIVAL>にも出演しているが、いよいよこの日の横浜を皮切りに、文字通り世界規模で展開されていくこのツアーの国内ラウンドが始まることになった。そこでは当然ながら世界対応仕様の演奏プログラムが組まれているはずだし、去る2月11日にLINE CUBE SHIBUYAで行なわれたセッションパート山盛りの<番外編お給仕>の成果も反映されているに違いない。

そんな想像を膨らませながら開演を待っていると、それまで流れていたBGMは定刻の17時30分ちょうどに止み、客電が落ちる。拍手と声援がオープニングSEをかき消さんばかりに高まるなか、凛々しい立ち姿で配置に付いたメンバーたちがまず披露したのは「Unleash!!!!!」だった。《Dan! Dan! Di,di,dan! Dan!》という軽快な繰り返しが、会場内を埋め尽くしたご主人様お嬢様(=ファン)をすぐさまひとつに束ねていく。それはまさに、お給仕の終盤にクライマックスがどのような形で巡ってくるかを予感させるものでもあった。
通常、ツアー初日の記事を作るにあたっては、これから先に控えている各地でのお給仕を目撃することになる読者たちへの配慮として、具体的な演奏曲目や構成については必要時最小限しか触れないことにしている。ただ、この日に筆者へ伝えられたのは、全曲オープンにして構わないということだった。それはつまり、ツアー全体を通じてセットリストが次々と変わり続けていくということだ。とはいえ事前情報に極力触れずにお給仕に臨みたいという人たちも少なくないはずだから、ここから先は実際の流れを時系列に沿って追っていくのではなく、この日のステージを観ていて気付かされたこと、感じさせられたことなどを絞り込みながら綴っていきたい。

まず序盤のうちに「いつもと違う」と感じさせられたのは、バンドサウンドの聴こえ方だった。具体的に言うとMISA(B)のベースの響きがこれまで以上にソリッドでフレーズが明確に聴こえ、KANAMI(G)の奏でるギターの音と対を成しながら攻めてくるように感じられたのだ。それもあってか、ただでさえタイトなAKANE(Dr)のドラミングもいっそうタイトに響いてくる。もしかするとそれは会場の音響環境によるものなのかもしれないと思っていたが、のちに判明したのはMISAが最近、ベースの音作りを変えたということだった。具体的にどういうことなのかは後日また改めて確認してみようと思うが、時間経過と正比例の関係で整合性と説得力を高めてきたBAND-MAIDのバンドサウンドに、また新たな変革が起きているのだ。

「Unleash!!!!!」から始まった最初のブロックに並んだ5曲を演奏し終えると、通常通り小鳩ミク(G, Vo)が「おかえりなさいませ、ご主人様お嬢様」と挨拶をする。そこで従来と違っていたのが、そのまま小鳩とSAIKI(Vo)による新作ツアーグッズ紹介に移っていったことだった。これまではたいがい終盤に設けられていたその場面がこうしていくぶん早めに巡ってきたこと自体に、べつに特筆すべき点があるわけではない。しかしそれによって、時間の流れ方が変わっていく。一気に駆け抜けていくのではなく、前半のうちにこうした小休止を挟んだことで、次に登場する曲のインパクトが強調されることになる。実際、緩やかなトークを経て「DOMINATION」が炸裂した時、僕はそれを実感させられることになった。しかもそれに続いたのは、最近『白岳しろ』のCMソングに起用されたことでも話題の「SUPER SUNSHINE」。この曲に対する即時的な熱い反応からは、『SCOOOOOP』から生まれたこのアッパーチューンが従来以来以上の訴求力を持ち始めていることが伝わってきた。
序盤にも「Magie」や「Zen」といった会場内の一体感を確約する必殺曲たちが配されていたが、中盤も1曲の中にドラマが詰まった「Present Perfect」、セッションパートが盛り込まれた「HATE?」からの「Lock and Load」への突入といった見せ場が続いた。インスト曲である後者では、SAIKIがキーボードを演奏する。そうした場面ももはやサプライズではなく、お待ちかねのシーンになりつつある。お待ちかねといえば、そうした中盤の流れの中で「What is justice?」、最終ブロックのスタート地点で「Ready to Rock」が披露された際には、イントロが聞こえてきた瞬間に「やった!」と声をあげてしまいたくなるような“登場感”があった。これらの曲が完全に代表曲の仲間入りを果たし、野球でいうところのクリーンナップを請け負う役割を果たすようになっているのだ。

そんななか、終盤ブロックに突入する前のタイミングでさりげなく新曲が登場したのも印象的だった。SAIKIが発した「忘れてたことが……。新曲、やってなくない?」といったナチュラルな言葉に導かれて披露されたその曲は、「Days」と題されていて、当然ながらこの夜のステージが世界初公開の場となった。“立ち止まることを恐れない”といったニュアンスの歌詞の断片が聞こえてきたが、これはSAIKI自身の作詞による、メンバー全員の今現在の心境が綴られたものなのだという。
彼女は「皆さんと一緒に高めていく曲」「私にしてはめずらしく赤裸々」などと語っていたが、どうやらその内容は、今回の<BAND-MAID WORLD TOUR 2026>終了後にお給仕活動を小休止することを表明した際の不安な気持ちとも無関係ではないようだ。この件についても後日じっくりと話を聞いてみたいところだが、この夜の時点で僕自身がすでに確信していたのは、この曲がBAND-MAIDの2026年を象徴するもののひとつになるはずだということだった。「Present Perfect」とはまた違った意味でドラマ性のあるこの曲には、聴いているだけで頭の中に映像が浮かんでくるような力が備わっている。そして当然ながら、今回のツアーの過程を通じてこの曲はぐんぐんと成長を遂げていくことになるのだろう。

終盤におけるもうひとつの大きなポイントは、やはり「Dilly-Dally」だろう。人を踊らせずにおかないこの曲は、やはりお給仕の場で演奏され、一体感を生み出すことによって本当の意味で完成するものだったのだ。そしてこの曲の《Dilly-Dally Dilly-Dally…》という繰り返しは、まさにこの夜のオープニングに据えられていた「Unleash!!!!!」の《Dan! Dan! Di,di,dan! Dan! 》と対を成しているかのように思えたし、終わることのないパーティのようなループ感がそこにはあった。とはいえもちろんその時間が永遠に続くわけではなく、この夜のお給仕は「NO GOD」がもたらす前のめりな興奮をもって幕を閉じた。

そういえばひとつ、大事なことに触れるのを忘れていた。BAND-MAIDのお給仕には欠かせない「おまじないタイム」で、この夜、ちょっとした驚きがもたらされたのだ。小鳩ミクの独壇場になるはずのこの場面において、AKANEが、さらにはMISAが「萌え萌え、キュンキュン」の儀式に加わったのだ。この流れでいけば、ツアー先のどこかで今度はKANAMIが……などという想像も頭をもたげてくるところだが、おそらくステージの進行表にも記されていないはずのこうした自由度の高さ、臨機応変さは、それこそ彼女たちが繰り広げるセッションの楽しさにも重なるところがあるように思う。音楽とは直接関係のないこのようなシーンにさえもバンド力の高まりを感じずにはいられないし、逆に、こうした緩和の要素があるからこそ緊張感のある演奏もいっそう際立つことになるのだ。

終わってみれば、約105分間にわたって行なわれたこの夜のお給仕での演奏プログラムは、現時点でのBAND-MAIDのベストセレクションのようでもあり、これから続いていく世界各地を巡るツアーや11月に控えている日本武道館での二夜公演を見据えながらのプロトタイプのようでもあった。この先もきっと、さまざまな形でのちょっとした試行錯誤が重ねられていくことになるのだろう。しかもこちらがどんな想像をしていようと、それを軽く飛び越えてくるのがBAND-MAIDの常でもある。さりげなく披露された「Days」の記憶を反芻しながら、筆者は帰途に就いた。そして、すでに次なるお給仕への参加を待ち遠しく感じ始めているのだった。
取材・文◎増田勇一

◾️<BAND-MAID WORLD TOUR 2026>

2026年 3月20日(金) Hong Kong Kitty Woo Stadium, Tung Po
2026年 3月22日(日) Kaohsiung MEGAPORT FESTIVAL 2026
2026年 4月11日(土) 神奈川 KT Zepp Yokohama
2026年 5月2日(土) 宮城 仙台GIGS
2026年 5月10日(日) 東京 Zepp Haneda
2026年 6月3日(水) Berlin Columbia Theater
2026年 6月5日(金) Frankfurt Batschkapp
2026年 6月6日(土) Munich Technikum
2026年 6月9日(火) Paris Bataclan
2026年 6月11日(木) London Electric Brixton
2026年 6月27日(土) 広島 BLUE LIVE HIROSHIMA
2026年 6月28日(日) 兵庫 KOBE HARBOR STUDIO
2026年 7月12日(日) 北海道 札幌ファクトリーホール
2026年 7月17日(金) 熊本 B.9 V1
2026年 7月18日(土) 福岡 Zepp Fukuoka
2026年 9月20日(日) Taipei Legacy TERA
2026年 11月1日(日) 愛知 COMTEC PORTBASE
2026年 11月3日(火・祝) 大阪 なんばHatch
FINAL
2026年 11月13日(金) 東京 日本武道館
2026年 11月14日(土) 東京 日本武道館
※10月に北米、メキシコにて開催予定。日本公演も今後追加予定で、詳細は後日発表。
■チケット情報
一般発売中
【国内公演】
7月18日(土) 福岡 Zepp Fukuokaまでの国内公演一般発売中
https://bandmaid.tokyo/contents/1041130
【パリ公演】
https://www.livenation.fr/band-maid-tickets-adp998166
■<Download Festival>
開催日:2026年6月10日(水) – 14日(日)
※BAND-MAIDの出演日は6月12日(金)を予定しています
会場:Donington Park, Derby
詳細:https://downloadfestival.co.uk/