【ライブレポート】angela、<Answer>ツアーファイナルで示した“完全復帰の証”

2025.12.26 18:51

Share

angelaが、12thアルバム『Answer』を携えたツアー<angela Live Tour 2025「Answer」>のツアーファイナル・神奈川公演を12月19日に横浜・1000CLUBにて開催した。オフィシャルからのライブレポートを以下にお届けする。

◆ライブ写真

   ◆   ◆   ◆

それは2025年12月19日の18時45分を回ったときのことだった。突然ピアノのイントロが流れ出すと、横浜・1000CLUBを満たす観客が「angela体操」を始めた。大観衆による前後屈、アキレス腱伸ばし、準備運動。このレポートを読んでいる方は一体何が起こったのか、理解が追いつかないかもしれない。しかし、会場にいたぢぇらっ子(ファン)たちは分かっていた。これがangelaの12thアルバム『Answer』からの“新曲披露”であったことを。キャリア20年以上を数えてなお、新たなライブエンターテイメント演出に挑戦するアーティスト。それがangelaだ。

ファンクラブイベントを除くと久々になるライブハウスツアーとなったこのサーキット。国内8公演に海外2公演と長期にわたるツアーで、このファイナルは様々な経験を経た『Answer』を示す公演だ。じんぼちゃん(Dr)、Buono(Ba)に続いてステージに登場したKATSU(G)は、開口一番「いろんな意味で、ただいま~! 走り抜けようぜ!」とシャウト。3人のインストでオーディエンスを煽り、赤いロングスカートを纏いドレッシーな姿で表れたatsuko(Vo)の「ファイナル横浜、行くぞ!」の掛け声で本編がスタートした。

最初の楽曲はアルバム『Answer』から新曲「不器用なI love you」。ミドルテンポの楽曲で、音源では主題歌作品(TVアニメ「不器用な先輩。」)に合わせ、シティポップなサウンドメイクが印象的だったが、ライヴではきれいなバンドサウンドに。この公演を通じてドラムの鳴りとベースの響きが良いバランス担っていたのが印象的だ。atsukoはステージ上からフロア前方の観客一人一人を指差し、アイコンタクトと手振りを早々に行うサービスぶりだ。ステージ上にはお立ち台があり、登って歌い上げたりポージングに使ったりと、距離の近さを感じさせる。サビでは全員が大きく左右に手振りをするなか、グッズのLEDラバーブレスレットが色とりどりに輝いた。

2曲目はアグレッシブな「DEAD OR ALIVE」。これまでライヴの中盤に歌われることが多かった楽曲だが、ここで早くも投入されると、ハイスピードなリズム隊が一気に盛り上げにかかる。間奏の「Follow me Follow you」でコール&レスポンスをする場面では、男子/女子にそれぞれ歌わせる展開があるが、今回の公演では女性限定エリアが広く取られており、そこに向けてマイクアピールすると大勢の黄色い声が挙がっていた。最初のMCでもそこに触れると、エリア以外の女子も懸命に存在をアピール。atsukoはお立ち台に座ってコミュニケーションを取るなど、ライブハウスならではのスタイルでステージを進めていく。

TWO-MIXのカバーながら、すっかりangelaのライヴに欠かせない「JUST COMMUNICATION」では、正確なリフの刻みがロックに響きわたり、つづいてツアーで初披露の『Answer』収録の楽曲「命ノヒカリ」ではインパクトあるイントロやテクニカルなメロからたちまちメロディアスなサビへとなだれ込み、ロックなサウンドで圧倒した。前作アルバム収録以降、すっかりセットリストに定着した「Welcome!」では、ピンクのライティングに照らされつつ、ハッピーなサウンドをエレクトロスウィングで展開。間奏では全員がステージ前方に揃ってラインダンスを踊るなど、魅せるライヴを行なった。このライヴはMCの多さもファンには嬉しいところで、それに対する期待の大きさは暗転中の歓声からもうかがえる。atsukoは客席に向けて「単独ライヴ初参戦」の人を問いかけると、結構な人数の手が挙がり、それを歓迎するぢぇらっ子たちからの温かな拍手が沸き起こった。この“Welcome!”な会場の空気づくりがリピーターの多さや一体感に繋がっているのだろう。atsuko自身がキャリアの長いアーティストのライヴに参加するハードルの高さを懸念し、「ファンになりづらいアーティスト」だと発言すると、応援の声が飛ぶ。そして「じゃあなんで22年もやってこられたかというと、ひとえに私の性格の良さ」と落とすと大きな拍手が湧く。それに対してKATSUは「なんでやってこられたか? これも一つ答えが出ました。諦めない!」と、早くも“Answer”に触れた。

ライヴ本編に戻る前の曲紹介では堀江由衣のラジオに出演した際に、ライヴで歌うことを勧められたというエピソードを話し、1stアルバム「ソラノコエ」収録の「幸せの温度」をアコースティックで歌う。atsukoは情感のある節回しで歌い、それが音源のピアノパートとの差を際立たせ、よりライヴ感溢れる印象を醸し出した。2番に入るとKATSUのアコギほかバンドサウンドが包み、情緒たっぷりに歌い上げた。「蒼穹のファフナー」シリーズへのアンサーソングとして作られた「蒼穹の彼方」では起伏の大きいメロディを伸びやかに歌い上げる。アグレッシブなリズム隊とギターワークの力強さがライブハウスらしいサウンドで響き渡った。

つづく「KINGS」では、歌に入る前に振り付け練習を行なった。リピーターにはお馴染みの振りだが、angelaは先ほど手を挙げたような新規のライヴ参加者に向けていつも欠かさず行なっている。ドラマティックなイントロからメロウなリフへとなだれ込み、サビでは手振りを込めてメロディと一体となってウェーブを繰り出す体感型の楽曲だ。シリアスで激しめなイントロが流れると会場のライトが「革命機ヴァルヴレイヴ」のテーマカラーのグリーンで染まる。「連撃Victory」でatsukoはキレのある動きで足を上げたり、お立ち台を利用し全身全力でのパフォーマンスを見せる。曲中の「撃て、撃て~」では指弾を繰り返すポージングを見せるが、これは後のMCによると「大阪の人のような倒れ仰け反るリアクションを期待した」ものだったという。MCでは来年のファンクラブ向けのさまざまな企画のほか、2026年4月開催の『シドニアの騎士』オーケストラコンサートへの出演を告知した。

次の曲は『Answer』に収録された「Dear T」。これは不慮の事故で急逝したスタッフの“T氏”に捧げた楽曲。atsukoが楽曲制作の経緯を話した後、T氏の人となりを直接は知らないぢぇらっ子たちに向けて、KATSUが彼の人となりや武道館公演ですべり台を設営したときのエピソードを話した。イントロの後に2人は向かい合い呼吸を合わせると、KATSUの演奏するアコギとともにatsukoが歌い始める。温かい音色とパーカッションにストリングスが重なり、クライマックスの部分では目を潤ませる姿が見えた。そして、次の曲のイントロSEが始まると空気は一変、キリリと総員敬礼の仕草に。angela屈指の劇的なソング「シドニア」の始まりだ。軍楽隊のようなサウンドからメロディアスな合唱のサビへとたちまち展開し、赤いライトが会場を埋め尽くす。途中にはドラムソロやベースソロ、KATSUのおなじみの演説まで、たっぷりと盛り込んで歌を締めくくった。

ポップな側面をさらに開拓した「乙女のルートはひとつじゃない!」の後は、ライヴではレアなトラック「未来とゆう名の答え」を披露した。これは2005年のアニメ『JINKI: EXTEND』のエンディング主題歌。MCでの解説によると、当時もがき苦しんでいたなかで表現した“未来”が、20年経って“今”になったという答え合わせになったという。耳に残る上下移動のメロディやキメタメのあるコーラスなど、ドラマティックな演出が多めの楽曲で、若々しい特徴が現れた楽曲を、現在の堂々とした歌いまわしで表現する。こうしたステージングもキャリアの答えの一つと言えそうだ。

MCでさらにatsukoは、angelaの目標の1つである「ぢぇらフェス」開催への構想を語った。デビュー20周年をきっかけに「桃太郎のまち岡⼭⼤使」と「はだか祭りのまち西大寺ふるさと大使」に就任したangelaは以降、地元・岡山との関係が深まり、この後に歌った「正面突破 We are!」など岡山にまつわる楽曲を制作している。交友関係が広いangelaは誰を呼べばぢぇらっ子が喜んでくれるかをアンケートするべく、客席に呼びかけたところ、判別がつかないほどの多彩な声が飛び交い、改めてぢぇらっ子の間でも期待の高さを感じさせた。その後、このツアーを振り返るトークの中でatsukoは岡山公演を、KATSUは北京・上海公演を思い出として挙げた。

その後、蒼井翔太とのデュエット曲「晴れのちハレルヤ!」では、蒼井のパートをぢぇらっ子が歌うことで再現するなど、パーティー感溢れる空間を作り出した。サッカーJ1リーグの「ファジアーノ岡山」に向けた応援ソング「正面突破 We are!」では、チームカラーに合わせた赤いライトのなか、客席にマイクを向けて歌わせ拳を突き上げたり、BuonoとKATSUがヘドバンをするアグレッシブな演出を繰り出し、最後にはサイン入りのミニサッカーボールを投げ入れるファンサービスも行った。メロディアスなイントロに客席が沸いた「Fly Alive」はそのボルテージの高さのまま突っ走り、シンセのハイスピードに生のドラムがぶつかり合い、勢いをつけサビではコール&レスポンスがこだまする。ギターソロも力強く、満足度の高い一曲となった。

本編最後はアルバムの表題曲「Answer」。温かくも力強い歌唱で、「傍に居てくれるあなたが居た」を「ぢぇらっ子」に替え、堂々たる歌唱を見せた。2番ではKATSUと向き合い、お立ち台に登って遠くを見据えたり、しゃがんで近くの観客と目線を合わせたりと、最後の曲らしいコミュニケーションの仕方をはかる姿が印象的だった。

アンコールではツアーの思い出話のあと「今回のツアーで、さらに私はぢぇらっ子との絆を感じてその深さを知りました」と添えて「KIZUNA」を歌う。ドラマチックなイントロに硬質なギターのリフワーク、大音量のドラムにオーディエンスは大きく声を上げる。サビでの慟哭の歌唱に対して客席からも大きなコーラスが聞こえ、楽曲を通した絆が確認された。本ツアーでは毎回、1曲撮影OKタイムが設けられてきたが、ファイナル公演で対象となったのは代表曲の「Shangri-La」だ。タオル振りの楽曲でもあるこの曲、観客は右手と左手でそれぞれ別の動きに苦労しつつも楽しげな様子。atsukoとKATSUは前方で撮影中のぢぇらっ子からスマホを預かり、ステージ側のアングルで自撮りしたり、ドラムのじんぼちゃんのところまで持って行って映したりとサービスいっぱいで貴重な思い出をその人のスマホに刻んだ。またこの曲は間奏でホイッスルを吹くタイミングもあり、ラスサビでは皆で合唱するなどステージの上も下も大忙し。先の初参戦組の方たちは、フェスなどでも歌われる代表曲がワンマンではここまで賑やかに歌われることに驚いたのではないだろうか。

最後のMCでatsukoは12枚目のアルバムを出せたこと、それを引っ提げたツアーを終えられそうなことに感謝を述べ「ぢぇらっ子のみんなは人生の伴侶」と話した。ツアー中に調子が芳しくないときもスタッフからの気遣いや優しさを感じ、「本当に私はいい人たちに出会えて歌っていられるんだなと改めて感じられた」と述べた。KATSUは「今回、アルバム制作の段階から通してきて”Answer”が出ました」とキッパリ。これまでもぢぇらっ子や作品のために作品を作ってきたが、思うように行かないときもあったという。それを可能にしたのは自身が得意な「諦めないこと」、「諦めが悪いこと」だったと話すと、大きな反応と拍手が沸き起こった。そして客席に向けて「諦め悪くていいんじゃね?」と語りかける。「嫌なことがあったら嫌でいいんじゃね? 逃げたいことがあったら、逃げればいいんじゃね? 諦めなければ。だから自分で”諦めが悪い”って言えば何でもこの先やっていける」と力強く述べ、「2025年たくさん迷惑をかけたかもしれない。2026年もきっとangelaはみんなに迷惑を掛けます!」と宣言し、更なる作り込みに対する期待の拍手を浴び「諦めが悪いんだよね、俺もangelaも。みんなもangelaのこと、諦めないで!」と話し、アコギを手に取ると、オーラスの「僕等の歌」を披露した。

手拍子が湧きミラーボールが輝き、atsukoは思い出を噛み締めるような表情で感動的に歌い、ラスサビでは全員が大きな声のコーラスをし、最後にロングトーンで歌い上げて締めくくった。直後に思わずこぼれたatsukoの「なんか……いいライヴだった」の一言と、KATSUの「(前回ツアー前の病気療養を踏まえ)帰ってこれました。このツアーの完走が、完全復帰の証」の言葉に添えた感慨深げな表情が、このツアーの総括を雄弁に物語っていた。

取材・文◎日詰明嘉
撮影◎木下マリ

前のページへ
1 / 2