【レビュー】SUPERBLOOD、新体制で放つミニアルバム『ENTER A NEW PHASE』

2025.12.24 20:00

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SUPERBLOODに坂本英三(ex.ANIMETAL、UNCHAINED、EIZO japan、練馬マッチョマン)が加入したことが、大きな話題を呼んでいる。

SUPERBLOODはスーパーギタリストと称されるOKA☆HIRO(TYO)とベテランドラマーの大内 “MAD” 貴雅(TYO,ex ANTHEM)が中心になって結成され、ベースに阿川 “Ryo” 亮一(現在はAXLと名乗っている)、シンガーにRYUを迎えた4名で2014年に始動した。“国境・民族・血統を超えて世界に発信する”というコンセプトのもとにSUPERBLOODというバンド名をチョイスしたとおり、彼らは国内はもとより海外に向けても積極的に発信を行ない、上質なHR/HMバンドとして各国で高い評価と熱い支持を得ている。

そして、RYUの脱退を経て、今回坂本英三が新たに加入したというわけだ。元々強者揃いだったメンバーに彼が加わったことでSUPERBLOODがさらなるパワーアップを果たすのは確実で、リスナーの期待がより高まっていることは想像に難くない。

そんな新生SUPERBLOODが、早くも最新作『ENTER A NEW PHASE』(2025年12月24日)を完成させた。坂本英三加入以降のスピーディーな動きからは彼らの強い意欲や新体制に対する自信などが伝わってくるし、『ENTER A NEW PHASE』は非常に上質な一作に仕上がっている。同作に収録された全7曲を順番に紹介していこう。

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『ENTER A NEW PHASE』の幕開けを飾る「Enter A New Phase」は、パワフルに疾走するメタリックなナンバー。坂本英三ならではの力感とエモさを兼ね備えたボーカルやソリッドなギターリフ、スリリングかつテイスティーなギターソロ、ファットにドライブするベース、生々しさとタイトさを併せ持ったドラムなど、聴きどころは多い。《俺は人生の新たなフェイズに入った/俺は絶対に逃げ隠れしない》という歌詞やリスナーの気持ちを引き上げるサビなども相まって、リスナーの心を引き上げる1曲になっている。

2曲目は洗練感を湛えたハードネスをフィーチュアした、メロディアスな「Rescue Me」。《心が折れた俺を誰か救ってくれ》という切なる思いを歌った楽曲でいながら陰鬱な世界観ではなく、爽やかなサビを配した手腕はさすがといえる。表現力に富んだボーカルや楽曲のエモさを増幅するギターに加えて、楽曲を支えながら個性をアピールする職人肌のリズムセクションも注目。HR/HMバンドが多用するメンバー同士の火花の散らし合いを活かすパターン(それを否定しているわけでは、ありません)とは異なり、全員が融合して上質な音楽を創出するスタンスはSUPERBLOODの大きな魅力と言える。

続く「Running Wild」も「Rescue Me」と同じくソフィスティケイテッドされたロックチューン。メタリックなテイストを活かしつつキャッチーに仕上げる手腕は実に見事で、この辺りの楽曲を聴くとSUPERBLOODが良質なポピュラリティーを備えていることがよく分かる。そして、リスナーの背中を押すポジティブな歌詞や抑揚を効かせたボーカル、絶妙な“ハネ”が心地いいドラム、歌中のカウンターリフと適度に動きのあるサビというアプローチが光るベースなど、「Running Wild」も聴きどころは多い。中でも、ロングトーンのハーモニーとテクニカルなフレージングというテイストの異なるギターを重ねた“変則ツイン”のギターソロは注目といえる。

『ENTER A NEW PHASE』の真ん中に配置されているのはダンサブルかつスタイリッシュな「SUPER SOUL FEVER」。“SUPERBLOODは、こういう曲も得意としているんだ”と驚くと同時に、完成度の高さに胸が高まった。アレンジ面ではリズムセクションは4つ打ちのドラムとオクターブフレーズを奏でるベースという王道的なパターンでいながらギターはカッティングなどではなく、付点8分のディレイを使ってリズムを出していることがポイント。こういったアプローチからはOKA☆HIROのセンスの良さがうかがえる。そして、《さあ、踊ろうぜ! 人生を楽しもうぜ》ということを1番はエモーショナルに、2番は情熱的に歌い上げるボーカルも実にいい。

続く「Unknown World」は“メロハー”という言葉が似つかわしいミディアムチューン。クールな歌中から華やかなサビに場面が変わる構成は秀逸だし、“お前に別れを告げて光に溢れた未知なる世界へ行くぜ”という歌詞を、幅広い声域を活かして鮮やかに表現するボーカルも実に見事。さらに、歌心に溢れたギターソロや、どっしりとバンドのボトムを支えるリズムセクションなども聴き逃がせない。ちなみに、SUPERBLOODはワールドワイドに発信するバンドということで歌詞は全曲英語だが、どの曲も分かりやすくて取っつきにくさはない。そこもSUPERBLOODの大きな魅力といえる。

6曲目は、そこはかとなくファンクが香るギターリフやスラップを用いたベースなどが印象的な「Together Forever」。グルービィな歌中も、タイトルにふさわしい温かい光をイメージさせるサビも共に上質で、SUPERBLOODの懐の深さを感じさせる。彼らのサウンド構築に関しては1ギターバンドということに捉われず、楽曲が呼んでいるギターを積極的にダビングするOKA☆HIROのスタンスもポイントといえる。広がりや立体感のあるSUPERBLOODのサウンドは心地よさに溢れているし、OKA☆HIROのニュアンスを大事にしつつ適度にテクニカルというギターソロの落としどころもさすがの一言。SUPERBLOOD のOKA☆HIROのギターの在り方は絶妙で、そこに刺戟を受けるギタリストは多いに違いない。

『ENTER A NEW PHASE』を締め括る「You Mean So Much To Me」は煌びやかなエモさを放つミディアムチューン。キャッチーなメロディーや《陰に隠れてゴチャゴチャ言うなよ/言いたいことがあるなら顔を見せな》という強い歌詞を情感豊かに歌うボーカル(ラスサビの熱いボーカルも注目)、華やかなハーモニーを活かしたギターソロ、フックを効かせたドラム、重厚に突き進むベースなど、この曲も密度の濃さが光る。「You Mean So Much To Me」は前向きな気持ちにさせてくれると同時に、終わった瞬間にまた『ENTER A NEW PHASE』を1曲目から聴き返したくなる力を持ったナンバーに仕上がっている。

本作を聴くとSUPERBLOODというバンドと坂本英三というシンガーの相性の良さを実感できる。『ENTER A NEW PHASE』は力強さと柔らかみのバランスが絶妙で、シンプルに“こういうロック、いいな”と思わせる作品になっていることが印象的だ。新体制になってより魅力を増すと共にHR/HMという枠組みを超えて幅広い層のリスナーにアピールする『ENTER A NEW PHASE』を作っただけに、同作を機にSUPERBLOODがさらなるスケールアップを果たすことを強く予感させられずにいられない。

文◎村上孝之

◼︎<SUPERBLOOD 2025 NOV.⇨2026 SEP.TOUR>

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