【ライブレポート】anew、地元山形で行った3周年ワンマン公演。“ここ(anew)”が帰ってくる場所でありたい──

anewが初ライブを行ったのが2022年12月10日(土)、場所は彼女たちのホームとなる山形sandinistaだった。
この日は、今も連綿と続いているanew主催イベント<CHIKAKARA>の初回公演。山形で主催イベント<CHIKAKARA>を毎月行うという形で始まった。あれから、主催の形やペースは変わったが、今も<CHIKAKARA>は、anewの主催イベントとして定期的に催されている。
そしてanewが初ワンマンを行ったのは、意外にも東京だった。あの頃は、アルバム『異日常』を手にした全国ツアーの流れを受けたツアーのセミファイナルであり、「1周年」を記念した初ワンマン公演として渋谷Star Loungeで公演が行われた。現在はanewメンバーのはる陽は、このときのライブにゲストシンガーとして登場していた。このときのワンマン公演は、リリースした作品を収録曲順になぞる形で実施。翌日に山形sandinistaで行ったワンマン公演は、前日とは逆の形で全曲を披露した。
その後、今は復帰した姫ここながanewを卒業し、月夜なぎという新たなメンバーを迎え入れ、「2周年」公演を山形と東京で開催。このときは、オリジナルメンバーの中あまねの卒業も兼ね、会場も山形ミュージック昭和と規模を拡大。東京公演を、anewが東京でホームにしている新高円寺Loft Xで行った。このときの東京公演にも、はる陽は参加していた。
その後、姫ここなの復帰やはる陽を新たなメンバーに迎え、anewは結成時から理想としていた5人体制になり、最強のチームを作りあげた。それからあまたの経験を重ねて迎えたのが、最新配信曲「母胎」を手に、12月13日(土)にanewのホーム山形sandinista行った「3周年」公演になる<CHIKAKARA anew3rd anniversary oneman~母胎~>だった。先に伝えておくと、東京でのワンマン公演は、anewが多く出演を重ねてきた高円寺HIGHで12月19日(金)に行われる。
ここでは、オープニングアクトに後輩グループbibibibiを迎え、12月13日(土)にanewのホーム山形sandinistaで行った「CHIKAKARA anew3rd anniversary oneman~母胎~」公演の模様をお伝えしたい。
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あのとき(3年前)から進化した姿を示そうと、ライブは、anewのデビューライブの1曲目で歌った「世界ヲ染めていく」から始まった。ステージの上でおどおどしていたあの頃と違うのは、彼女たちがanewという看板を自分の生きる糧であり、プライドとして掲げていることだ。一人一人の放つ言葉が切っ先鋭い刃となり、心に突き刺さる。言葉に説得力を覚えるのも、彼女たちが自信を胸に歌っているからだ。強い意志を持った言葉たちが、観客たちのハートを次々と射抜く。5人の気迫に刺激を受け、早くもフロアからは野太い声が張り上がっていた。
続く「ソコとココ」も、デビューライブの2曲目に歌った楽曲だった。ライブでも熱狂を描くエモメロなキラーチューンとして支持を得ているように、ここぞとはかりにフロア中の人たちが一斉に沸き上がる。メンバーたちも、肩肘抜いたラフだけど戦闘力の高い姿で観客たちをけしかける。3年前とは異なり、今のanewは、自分たちでライブのペースを作り、観客たちを先導する舵を握るまでに成長している。五線譜の上を自由奔放に駆け回る彼女たちの歌声に刺激を受け、フロアの人たちがぐちゃぐちゃになって暴れだす。何にも絞られない、その自由さこそがanewのライブだ。

「ここは、anewのホームだからな」の言葉を合図に、ノイジックでオルタナティブな音を撒き散らし爆走する「デキルカナ?」が飛びだした。それぞれが沸き立つ気持ちのままに《ウキウキちゃん》や《ワクワクじゃん》と歌い、観客たちを挑発する。フロアでもツーステを踏む人たちが続出。激しく身体を折り畳み、5人は高ぶる感情を《Oi!Oi!》と荒ぶる声にしてぶつけていた。今のanewには、破壊的でオルタナティブな楽曲がとても似合う。その成長を見越して、プロデューサーは、早くからこの手の楽曲も歌わせてきたということだろうか…。
さらに勢いを加速するように、彼女たちは「1234567」と「メリーさんの数字」に乗せて、言葉の数々を感情的にぶっ放した。この場が、さらに荒ぶる景色に塗り変わる。そのうえで、歪むピアノの旋律が激しく駆け回るのを合図に「位置情報なし」へ。3年という月日を重ねた中、anewは確実に、自分たちの仲間をいろんな地域にマーキングしてきた。無邪気な笑顔で歌いはしゃぐ姿が、とてもエモい。それぞれが自由奔放なのに、同じ想いと強い絆で結びあっている彼女たちを見ながら、5人同じように、自分の戻るべき位置もanewなんだと改めて感じていた。

やたら元気だけど、ラフで緩いMCもanewらしい。そこからも、それぞれのキャラクターが見えてきた。ここでは「3周年」を迎えての思いを、 緩いガールズトークをするように語っていた。「私たちはまだまだ走り続けていくからね」の言葉も嬉しい。
次のブロックは、この空間に心もどかしい夏の風を呼び戻すように「夏疵」から始まった。躍動する楽曲の上に、不器用だけど真っ直ぐなひと夏の青春を描くように歌う姿に触れ、場内中の人たちも、同じように苦いけど眩しい青春の景色へ一緒に飛び込み、拳を振り上げて騒いでいた。5人が思いに一つにした歌声が、刺激的で眩しい声の陽差しになって身体中に降り注ぐ。目の前には今、彼女たちと一緒にはしゃぐ海辺の景色が広がっていた。いや、そんな気分にanewが心を暑く熱く染め上げていた。
明るく開放的な楽曲から色を一気に塗りかえるように、変態オルタナティブな「何色少女」を繋げるセンスが、つねに予測不能のぶっとんだ展開を描きだすanewらしい。メンバーらも、いきなり曲の表情が変わろうとも、すぐに新たな曲のモードに心の色を染め上げる。anewは、最初からそうだった。音のプリズムのようにいろんなスタイルの楽曲を次々に突きつけ、彼女たちはそれを当たり前のように楽しんでいた。3年という経験の蓄積は、カメレオンのような変体ぶりにさらに磨きをかけていた。

その姿勢を示すように、5人はキュートでパンキッシュな「にゃんく」でも、一瞬にして愛らしい猫に変身。以前は、かわいらしさを全面に押し出していた。もちろん今も、手で猫耳のポーズを取るなど、愛らしくはしゃぐ様に変わりはない。でも、ときに挑発する歌声からは、「シャーッ」と攻撃的な牙を剥きだして威嚇する猫のような、秘めた攻撃性も見えていた。ステージの上で《ニャンニャン~》と無邪気に、乙女らしくはしゃぐ姿に触れ、一緒に猫になってはしゃぐ観客たち。そんな風に現実を消し去り、心を夢中にしていくことがanewのライブにおける日常だ。続く「異日常」でも5人は、自由きままな猫のように無邪気にはしゃぎながら、観客たちを自分たちの懐へしっかりと巻き込んでいった。5人が大きく手を振り上げて歌う姿を真似て騒ぐ観客たち。その楽しさこそが、anewのライブにとっての日常だ。
ポップでフリーキーな「ぼくたちに明日はない」でも5人は 、お馴染みのヒゲダンスを愛らしく見せながら、自分たちのフィールドに観客たちをぐいぐい巻き込んでいく。1曲ごと極端な表情に振りきる姿を次々と見せながら。でも、ずっとフロアを沸かせていた。彼女たちは「僕たちに明日はない」と歌っていたが、つねに現状に抗い変化し続けるanewを見ていると、その明日が、むしろ楽しみになる。
次のブロックでは、周年公演らしい嬉しいサプライズが登場。舞台上では、月夜なぎとはる陽が互いの印象を語り合っていた。その後に飛びだしたのが…。

ステージの上には、紬祇りこ、桃兎まいみ、姫ここな、そして1年前に卒業した中まねねの姿があった。4人は当時の衣装で「どうせ馬鹿にしてるだろ?」を歌っていた。3年前、anewとしての始まりの景色を描きだしたのが、この4人だった。あの頃を思いだすようにエモい気持ちでいたのは4人だけではなく、ここに集まった人たちも同じ。1年強続いた初期anewの姿に触れられたことが、素直に嬉しかった。
紬祇りこと桃兎まいみが着替えている間、月夜なぎとはる陽、中あまねの3人でトーク。中あまねは今、(カジノの)ディーラーとして食べていることを報告してくれた。中あまねとはる陽は以前から交流の深い関係。「(はる陽の加入は)即戦力になる」など、はる陽が加入したことについての印象などを3人で語り合っていた。
最後は、最新モードのanewの姿を次々と叩きつけるブロックへ。「anewはここまで3年間やってきました。メンバーにとって、みんなにとっても、anewが帰る居場所でありますように」の言葉を合図に披露したのが、最新配信シングル曲の「母胎」だ。それぞれの胸の奥で渦巻いている思いを吐きだすように、みんな感情を剥きだした声で歌っていた。そのうえで、5人が心を一つに《一緒に帰ろう》とエモーショナルに歌いあげる。中でも、《恥ずかしかった しょうもなかった 生きてたら 傷は増えた~》と、紬祇りこが絶叫するように吐きだした言葉が、激しく胸を貫いた。一人一人が荒ぶる気持ちを剥き出しに歌う言葉が、胸を強く揺さぶっていた。

《幕開けを目指して 始まりを探して》と、彼女たちが雄々しい声で歌い上げる。「まくあけのうた」だ。今の5人のanewとしての始まりを告げた曲を、 帰るべき場所はanewと暗示した「母胎」に続いて歌うところに、anew4年目へ向けての決意を感じずにいれなかった。この曲でも、一人一人が自分の心と向き合い、己自身へ言葉を突きつけるように《まくあけを》と歌い上げていた。さぁ、ここから一緒に新たな始まりを幕開けようか。そんな風に感情を剥きだした5人の声が心を揺さぶっていた。
そのうえで、anewの存在を外へと大きく向けたきっかけになったカバー曲の「童貞ソー・ヤング」が飛びだした。《ワンツースリーフォー》と絶叫した声から始まった楽曲は、フロア中から上がる観客たちの熱情した声もエネルギーにしながら爆裂していく。力強く握りしめた拳を高く突き上げ、喉を枯らす勢いで絶叫する様に魂が奮い立つ。カバーという形ながら、今や、anewの「童貞ソー・ヤング」という色にしっかり染め上げている。一人一人が、しょっぱい青春の色に気持ちを染め上げ、みずからの感情を奮い立てて歌い叫んでいた。不器用だけど、熱い気持ちを真っ直ぐにぶつける5人に刺激を受けた観客たちも、彼女らと一緒に《一発やるまで死ねるか》と声を張り上げる。メンバーらが歌い描くしょっぱい青春の味は、気持ちを狂わせるほどに濃かった。終わりに月夜なぎの叫んだ言葉の数々が、胸を揺さぶった。
anewは最後に、4年目へ向けた新たな表情として、新曲の「マリー」を届けてくれた。歪みを上げたグランジでオルタナティブな音が胸を揺さぶるエモくメロい楽曲だ。しかも、一人一人の揺れ動く感情が歌声からしっかりと見えてきた。「マリー」とは、応援してくれる人たちのこと。新曲を重ねるごと、ヘヴィネスな楽曲へと深化していくのも、今の5人が説得力を持った深い言葉で伝えていける歌い手に成長したことの証。ここから始まった4年目のanewが楽しみになる新曲だ。
アンコールは、フロア中の人たちと一緒に、酩酊する勢いではしゃごうと「完敗乾杯」を歌っていた。ステージの上で、乾杯のポーズを取りながら《乾杯しようよ》と歌う彼女たちと一緒になって熱狂の乾杯を交わそうと、フロア中の人たちが両隣の人たちと肩を組んで《Oi!Oi!》と叫び、跳ね続けていた。この、ぐちゃぐちゃ感が最高だ。重い気持ちを吐きだすのもanewなら、無邪気な乙女になって明るく歌い飛ばすのもanew。この日は3周年公演ということもあって、「anewに」「乾杯」という熱いやりとりも生まれていた。この曲の間中、メンバーはもちろん、フロア中の人たちがテキーラを煽ったときのような勢いで陽気に祭り上がっていた。
歌い終わり、はる陽がボソッと呟いた「anewって幸せだ」の言葉。それを、この場にいたみんなが感じていた。これからも、“ここ(anew)”が帰ってくる場所でありたい。
写真◎ナガト
文長◎澤智典

セットリスト
世界ヲ染めていく
ソコとココ
デキルカナ?
メリーさんの数字
位置情報なし
夏疵
何色少女
にゃんく
異日常
ぼくたちに明日はない
どうせ馬鹿にしてるだろ』(紬祇りこ・桃兎まいみ・姫ここな・中あまね)
母胎
まくあけのうた
童貞ソー・ヤング
マリー
-ENCORE-
完敗乾杯
<CHIKAKARA anew 3rd ANNIVERSARY ONEMAN~母胎~>
2025.12.19 fri.高円寺HIGH
OPEN 18:00 START 18:20
O.A bibibibi
TICKET
・SSチケット ¥10,000
非売品限定Tシャツ、限定GOODS、打ち上げ参加券
・Sチケット ¥7,000
打ち上げ参加券付き
・Aチケット ¥3,000
通常チケット
・Bチケット(女性限定)¥2,000
女性限定通常チケット
・Cはじめてくるよチケット ¥500
anewはじめての方限定
※学生は学生証提示で無料
公演チケット
Lコード:73777
https://l-tike.com/search/?lcd=73777
<anew 3rd Anniv. CHIKAKARA 『母胎』TOUR>
12/26 fri. 仙台SpaceZero
OPEN 18:00 START 18:30
前売り ¥3,000 当日 ¥4,000(+1D)
ゲスト:Finger Runs/CHICKEN BLOW THE IDOL/Able-Gleam/ i_andscape. /bibibibi
12/27 sat. 新潟CLUB RIVERST
OPEN 13:00 START 13:30
前売り ¥3,000 当日 ¥4,000(+1D)
ゲスト:Finger Runs /せのしすたぁ/ MEWCATUNE/bibibibi
12/28 sun. 山形SANDINISTA
OPEN 11:00 START 11:30
前売り ¥3,000 当日 ¥4,000(+1D)
ゲスト:Finger Runs/bibibibi/旧作/軋轢
1/10 sat. TEATORO西金沢
OPEN 16:30 START 17:30
前売り ¥2,000 当日 ¥2,500(+1D ¥500)
※女性・高校生以下・65歳以上の方は予約 0円 / 当日 500円 ※ドリンク代500円別
ゲスト:MEWCATUNE / オモテカホ / はる陽。 / 君色+シンクロニシティ / ZooZooZoo / やれでき!! / ふらいる / レンシューセイ
1/11 sun. 京都ROKA
coming soon…
1/12 mon. 長堀橋WAXX
OPEN 13:00 START 13:20
前売り ¥2,000 当日 ¥2,500
ゲスト:はる陽。/sustain/バブロス(BubRoS.W.A.T)/ELLIC
ツアーファイナル
●DAY TIME
2026.1/17 sat. 高円寺HIGH
OPEN 11:00 START 15:30
前売り ¥3,000 当日 ¥4,000(+1D)
学生無料
ゲスト:THE PINK MINDS/AQ/NUANCE
FOOD きしぱん
●NIGHT TIME
2026.1/17 sat. 新高円寺LOFT X
OPEN 17:00 START 17:30
前売り ¥3,000 当日 ¥4,000(+1D)
学生無料
ゲスト:CHICKEN BLOW THE IDOL/MIC RAW RUGA/MEWCATUNE/はる陽。
チケット プレイガイド
ツアーチケット
L:70240
https://l-tike.com/search/?keyword=73777


